第17話《追跡者の影》
1.記憶の綻び
午前2時。
セナは寮のベッドの上でうなされていた。
炎。銃声。倒れる兵士。血の色。
──「撃て」
その声に従ったのは、自分ではない“誰か”だった。
だがその銃を握っていたのは、間違いなく自分だった。
(私は、誰……?)
目覚めたセナは、恐怖に震えながらもどこか懐かしさを感じていた。
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2.理事長の意図
同時刻、アカデミー地下の理事長室では、神堂蓮司が一本の通信を受けていた。
「観測者側が接触してきた。『器』候補への直接干渉を示唆している」
「──それで?」
「“模擬接触任務”を用意しよう。監視のもと、戦わせる。レンがどこまで応じるか、試す必要がある」
神堂は頷き、通信を切った。
「観測者に耐える器──それが完成すれば、この国の未来は変わる」
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3.“接触任務”発令
翌朝、レンは呼び出された訓練指令室で任務通達を受ける。
「市街戦想定区域にて、“不明武装勢力”の排除任務。実弾使用可。詳細不明」
「……試験か?」
「“模擬任務”という形だが、相手は本物だ。手加減の必要はない」
指令官の目には、一切の感情がなかった。
レンは黙って命令書を受け取った。
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4.観測者の影
任務当日。
レンは訓練用市街エリアに投入された。
廃ビルと瓦礫の続く区域、その中でただひとり立つ敵──黒い装束、仮面の人物。
「君が、“器”か」
低く、女とも男ともつかぬ声。
その動きは、あまりにも洗練されていた。
銃撃。跳躍。接近戦。
どの応答も一瞬の迷いもなく、レンは数手で追い詰められていく。
(これは……俺の知ってる戦いじゃない)
仮面の敵は、囁くように言った。
「殺しなさい。さもなくば、私が君を壊す」
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5.“もう一人”のセナ
同時刻、医務棟ではセナが再び気を失っていた。
だがその瞳を開けたのは、彼女“ではない何か”だった。
「……コード認識。対象存在──確認」
脈拍、呼吸、すべてが異常な静けさを見せる。
セナの意識の奥で、“何者か”が目を覚まそうとしていた。
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6.限界突破
市街区。
レンは仮面の観測者と対峙し、追い詰められていた。
だが、ある一撃を受けた瞬間、彼の中で何かが“弾けた”。
(やらなきゃ、殺される──)
次の瞬間、レンの動きが変わる。
研ぎ澄まされた本能が覚醒し、銃の軌道も、足の動きも、呼吸のタイミングすら変化した。
──三秒。
それだけで、仮面の敵の武器を奪い、銃口を向けていた。
「……殺す気になったか」
仮面の人物は、静かに笑ったように見えた。
「これで、“器”として合格だ」
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7.接触後
仮面の人物は撤退。
レンは息を切らせながらも、意識を保っていた。
遠く、無線越しに神堂の声が聞こえた。
「次の段階へ進め」
レンは、自分の中に“何か”が芽生えたことを感じていた。
それは、他人を壊すことへの“慣れ”だった。
「──俺は、どこまで壊れるんだ」
問いかけは、誰にも届かなかった。




