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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
16/30

第16話《白と黒の記録》

1.監査官の影


内務監査官・風見仁は、アカデミーのデータベースルームにいた。

静かに、しかし冷徹な手つきで端末を操作している。


「九条レン──君の過去、掘れば掘るほど、何も出てこないな」


事故記録、戸籍、医療データ。

すべて“適切に処理”されていた。


「痕跡を消すというのは、国家の常套手段……だが」


ふと、ある映像ファイルが再生された。

荒れ果てた都市の衛星映像、その中で、子供と思われる影が武装勢力と交戦していた。


──背格好、動き、武装。


「これは……彼か」


2.セナの揺らぎ


一方その頃、セナは学園内の医務室で“定期検査”を受けていた。


「また貧血気味ですね。睡眠は?」

「……あまり、ちゃんと寝てなくて」


夢を見るのだ。

どこか知らない場所で、火の中に立ち尽くす夢。

燃える影、泣き叫ぶ声、自分の手が血に染まっている。


(私は……誰かを……)


「セナさん?」

「──ごめんなさい、大丈夫です」


自分の中に何か“欠けた記憶”があると、彼女は感じていた。


3.レンの自習


図書棟の地下、射撃シミュレータ室。

誰もいないそこに、レンの銃声が響いていた。


彼は黙々と、データ付きの標的を撃ち抜いていく。

速度、精度、冷静さ。


(クレイン……あれで良かったのか)


過去を殺した夜から、心に“空白”ができていた。

だがそれを埋める方法は、今も見つからない。


そんな彼の背後に、ふと誰かの気配が落ちる。


「君、何者なんだろうね」


振り返ると、そこにいたのは風見仁だった。


4.白と黒の記録


「これは、君の写真だ」


風見が見せたのは、砂漠地帯で銃を構える少年の画像だった。

顔はぼやけているが、目と姿勢がレンと酷似していた。


「これは8年前、某国の内戦映像に偶然映った一コマだ。正体は不明。だが──君にそっくりだ」


「……で、それが何だ」


「君の存在は、すでに『記録』として国家に把握されているということだ」


「殺すつもりか?」


風見は笑わなかった。


「──“利用”するつもりだよ」


5.セナの予感


その夜。

セナはふと寮の廊下で立ち止まった。

胸がざわつく。


(レン……)


彼の存在が、何か大きなものに巻き込まれようとしている気がした。

何が正しいか、誰が敵か。

そんなものは曖昧で。


ただ一つ確かなのは。


彼が、また“壊れてしまう”かもしれないという直感。


「──私が、いる」


呟いた言葉が、夜の闇に静かに吸い込まれていった。



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