第15話《壊す覚悟》
1.夢の中の記憶
レンは夜、妙な夢を見た。
熱い砂の匂い、焼けた金属の臭い。
瓦礫の上で、幼い自分が銃を抱えて泣いていた。
「置いていくな……! ここにいたのに……っ」
夢の中の自分が、誰かに手を伸ばしている。
だがその背中は、黒いフードを纏っていた。
(……観測者?)
目覚めたレンは、額に冷や汗を浮かべていた。
時計は午前4時。
「──忘れていた記憶、か」
2.セナの決意
朝の廊下で、セナはレンを待っていた。
「話、できる?」
屋上での会話。
セナは、観測者と対峙したときのことを改めて語った。
「……怖くはなかった。けど、不思議と“知ってる”って思った」
「記憶があるのか?」
「ううん。でも、目を見たときに……遠くを見てる感じがしたの」
レンは黙って頷く。
「これ以上、関わらせたくはない。だが──」
セナの目は、まっすぐだった。
「私は逃げない。あなたが戦っているなら、私もここにいる」
3.内部監査官の介入
午後、学園に“外部の人間”がやってきた。
内務監査庁──政府直属の機関で、アカデミーの“適正”を査定する存在。
黒いスーツの中年男性。名を、風見仁。
「理事長。観測者との接触記録、提出いただきたい」
「国家レベルの問題ではない」
「“器”を育てるならば、制御不能な因子は排除すべきです」
風見の言葉に、神堂はただ沈黙で返す。
(……やはり、レンは国家レベルの“何か”に関わる存在だ)
4.選択の場
その夜、斎木から呼び出されたレン。
場所は訓練棟・地下の射撃室。
「これは模擬戦ではない。実弾を使う。ターゲットは“元人間”だ」
「元人間?」
「感情制御薬の副作用で人格崩壊した元訓練兵だ。
隔離されていたが、最近脱走した。今は無人区域に潜伏している」
「……なぜ、俺に?」
「君なら“壊せる”。……“情”を切り離せるかどうか、試すために」
5.壊す覚悟
無人区域に踏み込んだレン。
廃ビルの奥で、呻き声が聞こえる。
「……誰……か……たす……け……」
その声は、どこかレンに似ていた。
目を凝らすと、そこにいたのは
かつて同じキャンプで生き延びていた“少年兵の仲間”だった者だった。
「──クレイン……」
うわ言のように助けを求めるクレイン。
体は衰弱し、目だけが血走っていた。
(撃てるのか? 俺は……)
だが、彼の手が動いた。
銃を──こちらに。
「……ごめん」
パン、と乾いた銃声が響いた。
クレインは崩れ落ちた。
レンはしばらく立ち尽くしていた。
そして、呟いた。
「俺は──もう、戻れない」
夜の風が、廃ビルの隙間から吹き抜けた。
それは、少年が“何か”を失った音だった。




