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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
15/30

第15話《壊す覚悟》

1.夢の中の記憶


レンは夜、妙な夢を見た。


熱い砂の匂い、焼けた金属の臭い。

瓦礫の上で、幼い自分が銃を抱えて泣いていた。


「置いていくな……! ここにいたのに……っ」


夢の中の自分が、誰かに手を伸ばしている。

だがその背中は、黒いフードを纏っていた。


(……観測者?)


目覚めたレンは、額に冷や汗を浮かべていた。

時計は午前4時。


「──忘れていた記憶、か」


2.セナの決意


朝の廊下で、セナはレンを待っていた。


「話、できる?」


屋上での会話。

セナは、観測者と対峙したときのことを改めて語った。


「……怖くはなかった。けど、不思議と“知ってる”って思った」


「記憶があるのか?」


「ううん。でも、目を見たときに……遠くを見てる感じがしたの」


レンは黙って頷く。


「これ以上、関わらせたくはない。だが──」


セナの目は、まっすぐだった。


「私は逃げない。あなたが戦っているなら、私もここにいる」


3.内部監査官の介入


午後、学園に“外部の人間”がやってきた。


内務監査庁──政府直属の機関で、アカデミーの“適正”を査定する存在。


黒いスーツの中年男性。名を、風見仁。


「理事長。観測者との接触記録、提出いただきたい」


「国家レベルの問題ではない」


「“器”を育てるならば、制御不能な因子は排除すべきです」


風見の言葉に、神堂はただ沈黙で返す。


(……やはり、レンは国家レベルの“何か”に関わる存在だ)


4.選択の場


その夜、斎木から呼び出されたレン。


場所は訓練棟・地下の射撃室。


「これは模擬戦ではない。実弾を使う。ターゲットは“元人間”だ」


「元人間?」


「感情制御薬の副作用で人格崩壊した元訓練兵だ。

隔離されていたが、最近脱走した。今は無人区域に潜伏している」


「……なぜ、俺に?」


「君なら“壊せる”。……“情”を切り離せるかどうか、試すために」


5.壊す覚悟


無人区域に踏み込んだレン。

廃ビルの奥で、呻き声が聞こえる。


「……誰……か……たす……け……」


その声は、どこかレンに似ていた。


目を凝らすと、そこにいたのは

かつて同じキャンプで生き延びていた“少年兵の仲間”だった者だった。


「──クレイン……」


うわ言のように助けを求めるクレイン。

体は衰弱し、目だけが血走っていた。


(撃てるのか? 俺は……)


だが、彼の手が動いた。

銃を──こちらに。


「……ごめん」


パン、と乾いた銃声が響いた。


クレインは崩れ落ちた。


レンはしばらく立ち尽くしていた。

そして、呟いた。


「俺は──もう、戻れない」


夜の風が、廃ビルの隙間から吹き抜けた。

それは、少年が“何か”を失った音だった。



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