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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
12/30

第12話《囁く者》

1.無音の尋問


深夜、警備課専用の地下取調室。


倒れた侵入者はすでに拘束され、昏睡状態から意識を取り戻していた。


その前に座るのは、特別教官・斎木。


無言で、ペンを指の間で回し続ける。


「“誰に命令されたか”もう一度聞く。応えなければ、次は脳を止める」


斎木の声は静かだった。

静かすぎて、殺意の温度が逆に伝わってくる。


男はふと笑った。


「……アンタじゃ、止められねぇよ。“あの声”は、すでに別の標的に向かってる」


「“あの声”? どういう意味だ」


「知らねぇなら……アカデミーごと喰われるぞ」


斎木の眉が微かに動いた。


(外部の動き……《プロジェクトK》の管理網外の存在か?)


「コードネームを答えろ」


「“ウィスパラー”。囁く者だ」


その名前に、斎木の背筋が僅かに凍る。


2.封印された名


翌朝、斎木は理事長・神堂蓮司の執務室へと向かっていた。


「“ウィスパラー”の名が出ました」


神堂は書類から目を上げた。


「……忘れていた名だ。奴が生きているのか」


「可能性はあります。“覚醒因子”を嗅ぎつけ、学内に手を伸ばしている」


「九条レンを狙ったのは……」


「ではなく、セナのほうです」


沈黙。


神堂の目が細まる。


「彼女の出生に問題があると?」


「まだ断定できませんが、“連鎖誘発型の因子”が接触によって活性化した可能性がある」


「ならば調査対象だ。必要なら──廃棄も辞さない」


斎木は黙って頷いた。


3.“教室”の午後


午後の授業。

生徒たちの前に立つのは、心理戦担当の女性教官・若宮。


「今日は“模擬尋問”です。前に出て、相手の嘘を見抜いてもらいます」


生徒がざわつく中、レンの前に一枚の紙が差し出される。


──お前は、彼女を護れるか。


──それとも、戦う道具に戻るか。


(……誰だ)


周囲を見るも、渡した者の気配はなかった。

だが、その文字だけが異様なまでに“生”を帯びていた。


レンは紙を握り潰した。


(囁かれている。俺は……試されている)


4.夜の仄明かり


その夜、セナは屋上にいた。


空を見上げ、遠い目をしている。


「……なんで私なのかな」


その隣に、レンが立つ。


「お前は、誰かに選ばれた。それが正しいかは、誰にもわからない」


「でも……怖いよ。私、何もできない。ただの推薦入学で──銃もうまく使えないのに」


「“選ばれた者”が戦えるとは限らない。戦場は、意志で残るものを決める」


セナは驚いたように彼を見た。


「……九条くんって、優しいよね」


「……俺は、もう誰も殺したくないだけだ」


その声は、風よりも静かだった。


だが、遠くでまた──“誰か”が笑った気がした。


その笑いは、風のように耳元で囁いていた。


“お前の願いが、誰かの地獄になる”


“それでも、お前は──”



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