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傭兵アカデミー  作者: 一ノ宮ことね
11/30

第11話《標的》

1.静寂の午後


その日、学園は異様な静けさに包まれていた。


模擬戦も特別講義もない午後。

生徒たちは思い思いに過ごしていたが、どこか空気が重い。


教室の窓際で、九条レンは一冊の書類を読んでいた。


だが、背後から小さな足音。


「──九条くん」


振り向くと、そこには鷹野セナ。


「時間、ある? 少しだけ……話したいことがあって」


レンは黙って頷いた。


セナはほっとした表情を見せ、窓際の隣に腰を下ろす。


「……この間の選別授業。すごかった。見てた。怖いくらいだった」


「怖がる必要はない。俺はお前に向けてやってない」


「それでも……」


セナは迷うように唇を噛み、やがて意を決したように口を開く。


「私、狙われてる気がするの」


レンの目が細まる。


2.違和感


「昨日から、変な気配がする。部屋のドアに傷がついてて、誰かが寮の廊下で様子を見てた……気がする」


「報告は?」


「した。でも、“気のせい”って言われて終わりだった」


レンは静かに立ち上がる。


「案内しろ。寮まで」


セナは驚いたように彼を見る。


「えっ、今? 教官に報告してからのほうが……」


「遅い」


その声に、有無を言わせぬ鋭さがあった。


3.セナの部屋


女子寮。

セナの部屋の前。


レンは壁際の死角、窓の外の足跡、扉の隙間などを丹念に観察する。


「……間違いない。誰かが、鍵を使わずに中に入った痕跡がある」


セナが息を呑む。


「どうして……?」


「“試してる”んだ。誰に価値があるか。誰が“引き金”になるか」


「引き金……?」


「俺にとっての、な」


セナの瞳が揺れる。


4.現れた影


その瞬間。


窓の外から何かが投げ込まれる──小型の閃光弾。


「伏せろ!!」


レンがセナを抱き込むように床に引き倒す。


爆音と閃光。


視界が焼ける中、レンはすでに身を翻し、机を盾にしながら侵入口へと飛び出していた。


侵入者は一人。

顔を覆い、実戦装備に身を包んだ男。


「排除対象、確認」


銃口がセナに向く。


だが──その前に、レンの拳が喉元を撃ち抜いていた。


「が……ッ!」


敵は呻き、レンが関節を極めて沈める。


「誰に命令された」


「……お前が……覚醒するか、どうか……見るためだ……」


その言葉を最後に、侵入者は意識を失った。


5.揺らぎ


部屋には、まだ閃光の名残が残っていた。


セナは床で震えていた。


「なんで……なんで私が……」


レンは黙って、彼女の肩に手を置いた。


「お前は“誰かの実験道具”にされた。だが──俺はもう、見逃さない」


「……九条くん……」


セナの声がかすかに震える。


レンの中にもまた、小さな波紋が生まれていた。


それは、“護る”という意識。

戦場では決して抱かなかった、誰かを救いたいという感情。


だが、それこそが──彼にとって最も危険な“引き金”であることを、彼はまだ知らない。



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