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エピローグ そして魔喰の少年へ、

 

 とんっ、とその空間の中で誰かが跳躍した。

 その体はまるで質量を感じさせないほど軽やかである。


 静かに着地したその少年は、面白いものを見たかのようにポツリと呟く。


 

「そうか、今代の天智見広はそういう選択を取ったんだね」


 

 愉快そうに、口の端を釣り上げながら放たれたその言葉にはどこか嬉々とした感情がこもっている。


 その目が幼い少年のように爛々としているというのも一つの特徴なのではないだろうか。

 空間の色は黒だった。


 果てしなく、どこまでもどこまでも続いていく、永遠の黒。


 そこには無数の光が浮かんでいた。


 同様に、少年の髪の色も黒色だった。

 名を天智見広という。


 まぁ、実際のことを言うのだとしたら今まで数多なる世界線で犠牲になった天智見広の魂の集合体、と言うのが正しい。

 幾万ものそれが一つに集結し、元々も形を作り上げていた。


 魂に形はない。

 だからそうでもしないと、天智見広というものを忘れてしまいそうになるのだ。



「俺たちじゃ、ここまで辿り着くことはできなかった。あの厄災で全ての天智見広が命を失っていた」



それなのに、今代の彼はその歴史を塗り替えた。



(やっぱり、転移させる前に言野原進に遭遇していたのが大きかったか? それにしても彼は……)



 疑問点としてはそれ以外にも海の底から山の上にまで届くくらいにはあるのだが、今回は素直に喜んでしまって良いのではないだろうか。

 せっかく、天智見広という存在が運命の輪から抜け出せたのだから。



「いや、喜ぶのはまだ早い……のか?」



 この先に、新たな運命というものが生まれるのはもちろんだったが、歴代の天智見広は今回の天智見広について色々と思うところがあった。


 その最たるものとして、



(そもそも、俺たちの《魔を喰う者(マナイーター)》の基本性能はあそこまで良くはなかった)



 これもまた、歴代の彼らとは異なっていることだ。

 その異能のスペックというものは代によって多少は異なっていたが、ここまで大幅に変化が現れたことは今までに一度もなかった。


 天智見広はその事実に、ブルリと身震いをする。


 何か、天智見広(今代)は今まで犠牲になってきた自分たちにもわからないような何かを持ち合わせている気がして。



(ありえない、わけでもないか)



 今代の彼はそもそもが異常だったのだ。

 いくら世界線が違うとはいえ、転移前の物語から変わっているとは思わなかった。


 これについては一概に彼の仕業であるとは言い切れないが、少なくとも彼が精神を正常に保った状態で世界間を転移したという事実が、先代たちをどれだけ驚かしたことか。



「ふふっ、本当に面白いな今代の俺は」



 見ていて飽きない、とどこか他人事のように彼らはつぶやいた。

 まぁそうだろう。


 いくら姿形が同じだからといってここまで自分たちとは異なる人生を歩まれたら、それはもう夢の中の都合のいい妄想なのではないかと疑ってしまうだろう。


 答えは否であることを彼らは知っていたが。



「ところで、だ。あんたはどうしてそこでコソコソとしているんだい?」



 後ろを振り向いて、その場所にいた覇気のない男に見広は言った。

 男がこの空間にいたということには特段驚いた様子もないようだった。



「佐藤 けい、だったか。今代によく絡んでいるようだったが、そんな人間如きがなぜここに入ってきた?」



 ほぅ、と唸ったのはその男____けいの方だった。



「なぜ、と言われてもね。彼について調べていたらこの場所に辿り着いていただけさ。たまたまだよ、たまたま」



 白々しく返された言葉に見広は嘲笑を返す。

 それに関しても我関せずといった顔で、けいは聞き流していた。


 しかし、質問に軽口で答えたことには抵抗があるらしく、頭の後ろのあたりを掻きながら言葉を発した。



「僕は世界に干渉するタイプの《能力(ウエポン)》を研究していてね。その成果物で、精神世界に少しだけ干渉できるようになったんだ」


「……随分と簡単に言ってくれるが」

「ここは人間の干渉できる域にはない、とでもいうのかい? それだったら見当違いだ」


「?」



「そもそもの大前提からして間違っているよ。僕はもう人間なんかじゃない」



 怪訝そうに見広が、正しくは先代の見広たち全員が眉を顰めた。

 何を言っているんだこいつは、とそういう感情が大いに含まれていた。


 それを受け流しながら、けいは言う。



「世界に干渉する、と言うことは純粋な人間では行えないことを僕は知ったから、亜神になることにしたんだ」



「そんなバカな」


「と思うだろう? しかし意外と簡単にその域に達することはできてね。その関係で、世界から放り出されたんだけど」



 へぇ、と今度は興味深そうに見広が息を漏らすのを聞いて、けいがおや、と顔を動かした。

 人間には簡単にできないことだ、という基本的なことさえ除いてしまえばそれは魅力的な話だったのだ。



「ところで、だ」



 雰囲気が変わった。

 そう言うことか、と理解する。


 この人間がなぜ普段からそれだけの覇気を持って行動しないのか。

 それはその覇気だけで周りが萎縮してしまうからだった。



「今代、と言う言い方で合ってるのかな? まぁ、その彼から僕と同じか、いやそれ以上の何かを感じるのだけど、君たちは何か知らないかな?」



「亜神以上の何かが眠っていると? ……それは今答え合わせすることじゃないさ」

「……そうか。それなら仕方がないね」



「やけにあっさり引き下がるんだな」


「君が意志の強い人間だ、と言うのはここまで付き合ってきて体感したからね、君から何も聞き出せないようなら僕はここから消えるけど。……何か今代に伝えたいことはないかい?」



 伝言するよ、とけいは言った。

 見広はその言葉にそうだな、と考えるように顎にとを持っていって。



「お前に全部くれてやる、と」



 けいが瞬きを繰り返すのは当然のことだった。

 何を、主語がない。


 同じ天智見広だったら分かるのだろうか、とそんなことを考えていたら目の前の少年がかすかに笑った。

 どうやら突然現れた意趣返しにそんなことをされたらしいとけいは理解した。



「まぁ、主語がないだけで伝えたいことは変わらないんだけど」

 


 運命というレールはどこかで壊された。

 決められた定めというものは途中で切り捨てられた。


 その先に残ったのは未開域の何かだった。

 その先はまだ定められていない。


 そこから先はまだ誰も知らない。

 白紙の世界だった。





「だから今代(お前)に全部くれてやるよ。題名未定の異世界を(・・・・・・・・・)




『第一章 完』

to be continued……?


 第一章をお読みいただきありがとうございました。

 第二章も一応頭の中にはあるのですが、いかせん別の作業も並行で行っているため……。


 この作品が有名になる……というか、僕の作品の中での最高記録及び、読者様から「続けてくれ」という要望があれば、こちらの執筆も優先的に行っていきたいと思います。


 続きをくれっていう人は、コメント残していってくれ!

 そしたらモチベが上がるから!


 それではまた、この作品の続きか僕の他作品で。



少しでもいいと思ったら評価と感想、ブックマークよろしくお願いします。

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