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4 『タブレット』検証

 そう。現れたのは因縁のタブレットだった。


「ひぃっ!!!」


 思わず放り投げるが、さすがに放置も出来ないと慌てて滑り込みキャッチする。ただ持つのが怖くて下に置くと後ずさりして距離を取る。見ているだけで過去の記憶のせいか胸が痛い。ただそれよりも誰にも見られていないだろうか。音がするほど首を動かして周囲を確認するが、いつも通りの森でしかなかった。


 1分ほどして呼吸が整うと安心しても良いと判断した。


「これは、心臓が痛い…」


 いきなり出現したタブレットは見た目は前世と変わっていない。ディスプレイはまだ点灯していないが、裏面は銀色だ。特にマークが入っていることも無い。薄い横面には色々とボタンが付いているので、音量調節やショートカットキーか何かだろう。一応カメラ機能もあるようだ。ライトも付けられそうだが、どれがカメラのレンズなのか分からない。使ってみてから判断しよう。


「ただ、俺のスキルって出入だろ?なんで前のスキルが使えるんだろう?」


 もしくはこれは完全にアイテムなんだろうか。タブレットが便利なのは言うまでもない。イヤな記憶はガマンしてまずは使ってみよう。使わずに済むならそれでいい。とにかく人前で使わないようにだけ気を付けることにしよう。

 横についているボタンをとにかく長押しして電源を付けた。逆側に持っていた。右側の真ん中が電源だ。覚えておこう。画面が付くと画面上には複数のアイコンが入っていた。前は画面の確認すら出来ていないのでこれが以前と違っているのかすら分からない。


 どうすべきか悩んでいるとメッセージのアイコンに1通届いたことを表示された。




 タイミングが良すぎる。



 そもそもこのタブレットを使うかどうかから悩んでいるのに読んでしまえば使わざるを得ない状態になりそうですごくイヤだ。


 ただ、農村には無かった久々の刺激だ。少しだけ遊びたいと思う気持ちは仕方ないのではないだろうか。久しぶりの機械に好奇心がうずいてくる。タブレット自体に嫌な思い出があるわけじゃないもんな。


 よし、言い訳完了。とりあえずメッセージは置いておいて他のアイコンから見よう。


「この動物牧場ってのを見てみようかな」


 タップしてみるとのどかな牧場が表示される。画面上には現在住んでいるような家が表示されている。


「完全にゲームのアプリだな。村の開拓に見せてペット育成って側面もあるかも。ただ今の生活とほぼ同じような感じだから積極的にやりたいとも思わないかな」


 しかも最初は動物はいない。持っている召喚石を使うところからだ。


「召喚ってところにも少ししんどい部分があるんだけどな…。ええい、忘れろ」


 召喚石は2個ある。普通はコツコツの1個か大盤振る舞いで10個くらいじゃないかな。タップを要求してくるのでもちろん乗っかってみる。召喚のための魔法陣が現れ、召喚石が溶けるようなエフェクトの後、画面が白くなる。


 1匹目は羊だ。名前はマモリ。ゆくゆくは自らの毛を使って裁縫などで色々と作ってくれるらしい。衣食住って言うもんな。交易品として売れたりもするのかな?


 こんな感じで召喚した動物が開拓をしてくれるらしい。俺は動物を召喚したり、時には指示したりして開拓に必要なものを作らせて開拓村を富ませていくようだ。


「実生活と似てるからな。まあでも地球の懐かしい文化だ。少し操作するだけだし、ちょっとやってみるか」


 もう一つある召喚石も同じように使用する。


 2匹目は牛だ。名前はメグム。こっちは農耕牧畜関係を管理するらしい。百歩譲って農耕はいいとして、牧畜を牛が管理する?自らを差し出すのか…?リアルに想像はしたくない。そういうものだと思っておこう。


 2匹ともデフォルメされた2~3等身だ。海賊マンガのマスコットに似ている感じだ。あれにはかわいさでもかっこよさでも勝てる気はしない。


 指示するか自由に過ごすかの指示を要求されている。両手を振って慌てているような感じだ。う~ん、あざとい。


「他にも確かめることがあるから勝手に動いてくれる方が今はいいんだよな。自由に過ごしててね、と」


 2匹ともに指示を出すと家の中から道具を持ってきた。マモリは牧場の整備を、メグムは畑の開墾から始めるようだ。


 ただ、動き始める前にエネルギーとやらを要求されたので満足するまで与えておく。しかしエネルギーとやらはあげても減らないくらい大量に充填されている。課金するまでも無く課金要素がカンストしていると言えば良いだろうか。

 この様子だと召喚石さえ手に入ればいくらでも育てていけそうだ。あとは時間の経過で待つだけだな。


 出来ることが待つだけになったようなので一旦閉じる。


 ホーム画面に戻るとメッセージアイコンの点滅がチカチカと激しくなった。見ろというアピールがすごい。



 だが放置!カメラを起動してみる。


 使い方は以前使っていたものと変わらないようだ。ただ一人暮らし経験ありの男から言わせてもらうとカメラはほとんど使わない。便利にされても持ち腐れになるかもしれない。一応試しに一枚撮ってみる。何を撮るわけではなく正面に向ける。自然はたっぷりだ。


 パシャ!


「へぇ、解像度高い」


 見える景色と同じものが表示される。ただよく見ると画面上に『NEW!』というポップがいくつも表示される。何のことだと思いながらタップしてみると詳しい解説が表示された。最初にタップしたのは木だが名前と素材としての使い道が表示された。木工や建築に使うことが出来るそうだ。


 戻って他のところもタップしてみるが、果実や草についても同様に説明を見ることが出来た。


「つまりこれはカメラに表示されたものを鑑定が出来るのか。これは便利だ!使おう!」


 前言撤回!お蔵入りどころが一番ほしい便利な機能かもしれない。そのあと確認すると撮ったものは鑑定モードと写真モードで閲覧することが出来るようになっていた。写真モードは俺はあまり使わないだろうから一旦保留だ。


 鑑定モードを確認していくと別のアイコンである図鑑とリンクしていた。撮影したものは入手したと判定され、そこから追加説明で派生した単語が登録されている。知っているけれど未入手とされているため名称だけで詳しい説明は表示されていない。


「完全にやり込み要素です。ありがとうございます」


 レア度を考えたら一生かけても手に入らない物もあるんだろうけどいつでも調べられるのは良い。なんかここだけゲームみたいだ。


 更に俺が袋に入れていたビワも入手したものとして図鑑には登録されていた。図が付いて詳しい説明がついている。世界のどこらへんに分布しているかも載っている。これだけ詳しく書いてあるのは非常に助かる。全く同じかはともかくどこで手に入るかが分かるのは探す手間が省けるというものだ。


 ついでに検索機能も使用するために『今いる国』と検索すると国名や首都の他に大きな街の注釈が付いた地図が表示された。住んでいる村はかなりの辺境のようだ。むしろ国境付近ではないか。いざとなれば隣国に逃げよう。



 鑑定モードについて反則なのは、人のものでも撮影さえすれば調べることは出来るっぽいところだ。村の中の物も撮影してまわろう。不審に見られるか。夜にこっそり?う~ん、保留。


 このタブレットを放置するのはもったいないことだけは理解した。そうすると。


 一旦画面をホームに戻すともはや残像かと言いたくなるほど点滅したメッセージアイコンを確認しなくてはいけないようだ。これは非常に無視したいが仕方ない。見ることにしよう。


 最悪の場合はメッセージだけは二度と使用しなければ良いと覚悟を決めてアイコンをタップした。

お読みいただきありがとうございました。

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