18 町で見つけた子どもたち
部下とか配下とかの扱いはしたくないけど、しっくりくる呼び名が思い浮かばないのでそれに関しては保留。みんなと濁しておくことに決める。どんな存在か詳しく聞いてからだ。
新しく会った人は(お兄さん、いや顔の感じはおじさん?でも体つきもしっかりしてる人だから)お兄さんにしておこう。快く案内を引き受けてくれた。不憫な人だけど村の外で権力に近い人だから有効活用させてもらおう。話を聞いていて人体実験その4として思いついたことがあるから成功したらプレゼントになるし。
とりあえず移動だ。片を付けるまでは村には戻れない。我慢だ。一度は説明のために帰ろう。
俺がいない間にまた何かあったら困るので村に残っているみんなにはそのまま待機。冒険者って存在がいるらしいのでそう名乗ってもらうことにした。人になってる時の年齢の幅が激しいから怪しく見えるのは仕方ない。それには目を瞑る。
で、襲撃者たちは全員紐で縛って連結した。だがまだ気絶しているし、一部は正気に戻るかも不明だ。歩かせるのも面倒なので気絶した状態のまま運ぶのが一番いいはずだ。どうしようかなと思って改めて今いる人材を見てみる。
コソウの肌に黒色の縞が入っているように、他の皆にもそれらしい特徴がある。シロミミとクロミミにはそれぞれの色の耳が頭から生えているし、目は二人とも紅い。ピヨには背中から大きな翼が生えている。羽ばたかせもせずに飛ぶからあの翼は何のためのものだろうか。町で浮かないことを祈る。
ポチにも柴犬のような色の耳が生えているが、おじさんに近い見た目の犬耳は少し目を逸らしたくなる。チューフはパッと見てネズミの特徴は見えない。挙げるとしたら背が小さいところだろうか。背格好としては俺より少し成長した少年くらいのイメージだ。前髪で目元が隠れているので顔は見えていない。
俺が一人で余計なことを考えている間にみんなの中で会話が進む。
「俺が持っても良いぞ?」
「コソウが持ちあげて運んだら下になった人が潰れそう♪」
「「たぶんそうなる」」
「では寅殿の出番はないな。酉殿が運ぶのがよろしかろう。卯殿支援を頼む」
「「任せとけ」」
クロミミは何もしてないのに、その返事はするんだな~と聞き流しておく。
結論としてはポチの案が採用された。シロミミが強化バフをピヨにかけて全員を吊るして飛んで運ぶことになった。
俺も少しだけ貢献している。少しでも軽くするために荷物を減らした。縛る前に身ぐるみを全て引っぺがして荷物を極力減らしてある。だから襲撃者たちは全員下着姿だ。取り上げた物品に関しては俺の物にして良いとお兄さんに許可をもらったので俺の物だ。暗器やナイフ、薬や毒、非常食などこの世界の裏稼業の人たちの研究をさせてもらおう。
そんな状態で領主の元に直談判をするために領主の館がある町に向かって走り出した。移動のスピードはお兄さんに合わせている。俺は少しがんばったが、足の長さと回転数が足りずに置いていかれそうになったのでコソウの肩に担がれている。
「こればっかりは成長しないと仕方ねえよ」
「むしろついて来られたら我らの矜持が折れる」
「「一番折れるのはこのお兄さんだと思う」」
「いや、確かに。あっはっは~」とみんなが笑っているが、俺は少し息切れで話せない。お兄さんは会話に入り込めない。ピヨは荷物をぶら下げている関係上話に入れないということで自然と4人で話しているのを聞くことになった。チューフはいるけど話さない。本当に無口なんだな。
どのくらい走れば着くんだろうか。肩に乗ったままマップで検索する。今の移動スピードも込みで2時間くらいで着く予想らしい。タブレットマジ有能。距離はフルマラソンの倍はあるんだけどな。
この速度で復路を走っているお兄さんがすごいのか、雑談しながら走れるみんながすごいのか。まだ余裕があるってことだが俺には判断がつかない。ほとんど超常存在だと考えると何でもできそうと思ってしまう。多少の得意不得意はあるだろうけど。
肩に担がれたままだと何もすることが出来ないので大人しく魔力操作の練習と鑑定モードで目に留まった役立ちそうなものを届くなら回収しながら過ごした。
快適な移動手段を手に入れるか、自分で走れるようにしないと身が持たない。
到着しての感想がこれだ。ずっと同じ姿勢は体が固まりそうだったので色々と姿勢を変えたが結局は担がれているのだからしんどいことにはかわりない。帰りのことを考えるとげんなりする。
現在お兄さん待ちだ。町に入る門では怪しい人物が入らないように検問がある。町の権力を持っているお兄さんが俺たちが問題無く入ることが出来るように話を通してくれているのだ。もうすぐ今日は閉門だったらしく、人が出て来ているが俺たちの近くまでは寄って来ない。
「で、どうするんだ?」
すっかりと面倒見の良い兄貴分になったコソウがストレッチをしている俺に聞いてくる。
「え?まだ夕方だし今から訪ねても大丈夫でしょ」
「え?」
いつの間にか近づいて来ていたお兄さんから声が漏れた。コソウは気づいていたけどあえて俺に話すように仕向けたのだろう。何か目線だけ逸らして口笛吹いているし。
「なにか?」
思わず俺も分かってないふりをして聞き返した。少しだけお兄さんと見つめ合う。何かが始まる予感も来ないのでにこりと微笑む。
「もう入れます?」
「え、ええ。どうぞこちらへ。彼らはどうしますか?」
「もちろん連れていきます。彼らこそが証拠ですし」
「分かりました」
お兄さんの案内で門をくぐって町へと入る。見事に中世の感じである。土がむき出しの道には水が撒いてあって風が吹いても土埃が起こらないように工夫はしてある。家は大体が木造の2階建てだ。ところどころ石がむき出しになっているところもある。
町に入ってすぐは店が多く並ぶ通りになっている。知識としてあった冒険者向けの酒場が何軒もあるようで、にぎやかな声が聞こえてくる。店じまいしている店は彼ら向けの武器防具や道具などの店なんだろう。鑑定モードで通して見て確認する。
さすがに今回では生まれて初めて村以外の人が集まるにぎやかな場所だ。少し気分が上がってきてもおかしくないだろうと少し観光気分も出てくる。
「この町は何か栄えている産業はあるんですか?」
お兄さんに向けて聞くが、話しかけてられるとは思っていなかったようで明らかに過剰な反応を見せられてしまった。
「あ、いや。この町だけの産業というものはあまり無い。精々が人数が多いことによる治安の良さといったところ…です」
「あんまり敬語使わなくてもいいですよ?」
「本来なら問題無いんだ。今は異常事態だからな…」
なるほど。その異常事態の根本が親し気に話しかけて来ても困るということだろうか。ならば静かに案内されるまま向かうことで良いか。
門のところで荷車を貸してもらったので襲撃者たちはその上に載せた。何を運んでいるのか見えないように布をかけている。これなら何かを運んでいるようにしか見えないので止められることはないだろう。門からも誰かがついてくるということも無いのでお兄さんはやはり結構な権力を持っているのだろう。
良い気分で歩いている最中に左の細い路地の奥、建物の陰になっているところで寝ころんでいる2人の子どもが目に入る。ござは敷かれているが着ている服や風呂などしばらく入っていないことが分かる。思わずそちらへと歩いていく。
「ねえ、その子起きてる?」
意識があるのは間違いないが、片方の小さい子どもの意識は朦朧としている感じだ。
「キミ達は何してるの?」
「……べつになにもしてない」
隣にいるのは子どもを刺激しないようにという配慮かチューフだけが付いてきた。彼だけなら俺と並んでも兄弟に見えなくもない。チューフの着ている服と俺の服ではつり合いは取れていないが。可能な限り警戒感を持たれないように笑顔を意識してっと。
「少し話を聞きたいんだ。お礼は果物と水と薬でどうかな?」
「くすりをもってるのか?」
「うん。そっちの子は少しだけ具合が悪いんだよね?たぶん元気になると思うよ」
「たの…、おねがいします!ほんとうのおとうとじゃないけどだいじなんだ!」
我慢できずにボロボロと涙がこぼれていく。兄弟関係ではないとか見ても分からないんだけど、大事で失うことにここまで心が痛くなるくらい大事なんだな。しかも弟。助けようじゃないか。
お読みいただきありがとうございました。




