16 ちょっと楽しくなってきた
少し短めです
自分がどういう考え方をする人間かを聞かれたとき、結構考え方が変わってきたのでずっと同じ答えを出すとは言いづらい。とはいえ、そこまで動揺させるようなことを言ったつもりはなかった。
「な、何を言ってるんだ!?」
コソウが一番に大声をあげた。
「「お、落ち着いて~~!?」」
シロミミとクロミミはこんな時でも声がぴったり重なるのがすごいな。
「元気になれるように歌おうか~♪??」
目がグルグルしてるのでピヨも混乱してるみたいだ。
「そこまでの衝撃であったか…。成敗してくれよう」
ポチが鋭い視線で転がっている男たちに歩き出すからチューフが引きずられてでも止めている。コソウも止めに入って何とか止まった。
そこまで俺の発言って混乱させるものだろうか…?何かおかしかったかな。
「主は平穏に生きたかったのだろう?そういう要請で俺らも来てるんだぞ?」
「そうなの?」
それは聞いてなかった。詳しく聞いとかないとな。彼らの意思を無視するのはイヤだな。ただ今はゆっくり聞く時間は無いから後から変更も有りで俺の考えだけ伝えておくか。
「あ~、平穏に暮らすのが希望だったらこの村で過ごしてくれてもいいよ。俺が平穏とは縁が無いんだなって思っただけだよ」
まだ怪訝な顔をされたので説明する。一回目の人生では天涯孤独な人生を送っていたこと、二回目の人生は異世界転移の翌日から奴隷として約80年生きたこと。その中で俺は俺の人生を諦めていたこと。今世を得た中で父母弟との暮らしの中で幸せであったことを話す。超常生命体から穏やかに暮らせるようにと願われているにも関わらずこんな事態になるということは俺は平穏を諦めるべきなんだと思うことを素直に伝えた。
「こうなるともう俺が平穏でない方が周りは幸せに暮らせるんだなって考えちゃうんだよな。イヤだとは思ってるんだよ?そんなことはないと思いたいけどそんな感じで100年近く生きると簡単に考えを改める気もなくなるっていう感じだよ。納得してもらえない?」
「いやいやいや。待て待て。どういう形だろうと俺らは主に紐づいてるから離れるってことは無いんだが。だとしてもそこまであっさりと言われるとこう戸惑うしかないっていうな、なぁ?」
コソウは信じられないんだよって顔で残りの皆の同意を得ようと見回す。周囲も似た表情で同じように首を縦に振る。チューフだけは無言無表情で何を考えているか伝わってこないな。
ん~。そうか~。どう言えば良いかな。自分の考えの整理は苦手なんだよな。
「何て言って良いのかな。こう長いこと生きてると自分のことよりも周囲のことの方が気になったんだよな。自分の置かれている状況に関して麻痺するというか、自分が笑えないのが普通になるんだよね。ここ数年が俺に関しては異常だったんだと思わなくもない。父さん母さんにはとても申し訳ないけどさ。俺も笑えてたのは奇跡だったんだよ。周りが笑っていれば自分に苦痛なことがやってくることも少なかったから、それで十分だったし」
どちらのときもそういうことが多かった。多かっただけで俺自身に注意を向けたり手を差し伸べてくれた人もいるんだけど。でも結局、俺の不幸を土台にして周囲の幸せが成立していると思うことが多かったんだ。それで精神を保ってたと思えばその通りなんだけどさ。そこからここ数年でずいぶんと人間らしくなったと思うよ?
そういったことまで話すと押し黙ってしまった。誰も話さなくなったので最後まで言っておく。
「だからさ。家族には平穏に暮らしてほしいから、その辺りの地盤を固めようとは思うんだ。そうなると手駒が足りないよね。あと報復もきっちりとしないとね」
「「「「ん?」」」♪」
いや、これは絶対変なこと言ってないよ。
「だって領主が俺だけでは無くてナークや母さん、村の人たちにまで手を出したでしょ?何をどう考えてたとか知らないけどさ。それに対して手を打たないと今後も危険でしょ?俺はこの村からは離れないといけないけど、ちゃんと対処しておかないとまた襲われるよね」
ここまでは分かる?と問うと全員が理屈は分かると首をコクコク振る。
「それと俺の生活を平穏から最も遠いものにしてくれたんだから、そいつの人生が平穏なままだと不公平じゃん?」
今回は自由に生きる時間が久々で愛情も感じさせてもらった。だから俺も少しはわがまま言ってもいいんだと思わせてもらう程度にはなった。あまりいきすぎると傲慢になるから気を付けようとは思うけど。だから俺の生活が変わるのと同じように相手にも生活を変えてもらうのだ。すぐは無理でも必ずやってみせる。
ちょっと楽しくなって笑顔を見せた。
「それならいいだろうか」
「チューフがしゃべった!?」
「それだけ重要だってことだ。主もよく聞くんだ!」
大事なところでしか話さないらしい。声を初めて聴いたけど結構渋い系の声なんだな。
「森の外で眷属がこの侵入者たちと似た格好の男が接近しているとの報告がきた。接触すればなんらかの手がかりになると思われる」
「あ、はいは~い!私も同じことを掴んでま~す♪チューフの言ってることは本当だよ♪」
周囲の索敵をしてくれていたらしいチューフとピヨの2人が同じことを言うなら間違いないんだろう。こんな大量の捕虜がいても扱えないので引き取り先が来てくれたのは助かる。こちらに来ているなら出迎えることにしよう。
「どっちに行けば良いの?」
「ピヨにおまかせあれっ♪」
先導されるまま歩いてついて行くことになった。
お読みいただきありがとうございました。




