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14 『出入』スキルの戦闘活用

「承知した!」


 コソウが俺を持ち上げて肩に乗せるとタブレットの示す方向に向かって早速走り出す。


「手の空いた者からお館様のところに集まれ。弟君を攫って移動中の下手人を逃がすな」


 俺でもぞっとするような気配がしたと思うと俺の進む先へと遠ざかっている。


「主がもう少し丈夫ならあれくらいのスピードを出すんだが、今はこれが精一杯だな」


「弱くてごめんな」


「そういう意味じゃないし、強くなるのはこれからだ。先に俺たちの内の一体でも進んでいれば問題無いんだ。もう急がなくても良いくらいだが。そんな悠長なことはイヤだろうな」


「もしナークが傷つけられていたとしたらイヤだ」


「了解だ」


 話している間にマップ上での移動が止まっている。足止めをしてくれているようだ。


「ナークを取り戻すのは俺に最初にやらせてもらっていいか?俺のスキルが人相手に通用するのか試したい」



 到着した時、ナークは既に取り返されていて連れて行ったのだろう男は土下座の状態で拘束されていた。逃げる気持ちさえ既にバキバキに折ってしまっているようだ。


 確保してくれていたのは戌のポチと酉のピヨみたいだ。村から一緒に動くときには子のチューフもいたはずだったけどどこに行ったんだろう。無駄なことはしていないだろうし今はこちらに集中しよう。


「お館様、こいつはどうされますか?」


「とりあえず色々と聞きだしたいんだけど、その前に俺のスキルがきちんと戦闘に通用するのか試したいんだ。みんながいたら俺に危険なんて起きないでしょ?」


「それはもちろん」


「危険なことなんて起こさせねぇよ」


「では、ルールを決めましょうか。ピヨ、そいつを起こしてくれるか」


「了解♪」


 ピヨがパパーンと往復ビンタで気絶から復帰を試みる。


「ぐっ!な、何が…?」


 驚いたことに成功した。気が付いた男は何が起こったかを把握しようと周囲を探っている。


 ポチが威圧をかけたら俺でも分かるくらいに押し黙った。


「ルールだ。今からあのお方と戦え。止めるまでなら戦闘行動をとることを許そう」


 逆らっても無駄だということが分かり、誘拐しようとしていたナークは既にコソウがその背中に背負っている。俺はコソウの前に立って男の顔をしっかりと観察している。俺と目が合った瞬間に一瞬で無表情になった。何となくだが戦闘経験を積んだだけでは無い何かがあることは分かった。今の俺にはそれ以上のことは表情からは分からない。


「ひとつ確認する」

「構わぬ」

「もしあの子どもを殺しても俺の命は助けてもらえるのか」

「問題無い」

「そうか」


 勝手に決められたけどたぶん俺も大丈夫だと思うし良いだろう。ポチに頷いてい見せると露骨にホッとしてたから先走り過ぎたとでも思ってたのかもしれない。戦闘だと思って歩こうとすると後ろに控えていたコソウが話しかけてきた。


「主、落ち着いたら動きが見えるくらいだろう。見えるだけで反応できるかは微妙なところだが」


「分かった。衝撃を受けてもひるまないようにだけ気を付けるよ」


 一定の距離を空けて立つとポチが立会人のように真ん中に立った。


「ではこの石が地面についたら合図である」


 手近にあった手のひら大の大きさの石を指で弾いて飛ばす。既に俺は準備完了だ。


 地面に着いた瞬間に『出入』を発動する。


 こちらに走って近づこうとしていた男は右腰に差していたマチェットを抜こうとしてそこに何も無いことに少しも表情を変えずに走ってくる。攻撃手段を切り替えて右肩に隠していたナイフを取ろうと左手を動かすがそこにも何も無い。ようやく眉をひそめてくれた。


 俺は正面からぶつかろうとせずに横に移動して男のマチェットを何も無いところから手の中に取り出す。


 「なっ…!?」


 ここまでやってようやく表情を変えて、走るのをやめて俺から距離を取るためにバックステップで下がった。その間にマチェットを消して今度はナイフを1本ずつ両手に持ってみる。ちゃんと鍛えていたからさほど重くは無いが自在に扱うにはやはり慣れが必要のようだ。確認したら再度ナイフは消す。


 目を見開いてくれているのがやって良かったって感じだ。手からバラバラとナイフや針を出していく。それを見た男は自分の体の色んな所を探るが、そこには何もない。そもそも物の重みが無くなった時点で気が付いてほしかったかな。


 これで確認したかったことの1つ目が終了だ。相手を確認した時からタブレットの鑑定モードで相手の隠していた武器を全部チェックした。戦闘開始の合図とともに相手の攻撃手段を全部奪った。地道に鍛えたおかげで戦闘前に立ち会った距離くらいだと既に俺の出し入れ可能な距離だったんだよね。


 そうなると相手が出来ることはスキルや魔法を使うか、素手による攻撃しかない。彼にはスキルが無いので素手しかないため接近しての戦闘を覚悟して近寄ってくる。


 そうなると今度は俺にとっては不利だ。本気で殺しに来る相手との戦闘なんてどれだけ長く生きていても今回が初めてだ。途中何度も殴られるし蹴られもする。体格の差もあって俺の攻撃は届きもしない。何度も殴り飛ばされ一方的にやられるが、周囲に控える皆は見守るだけで誰も助けてはくれない。


 理由は簡単。


「なぜ!お前はこんなにも手ごたえがあるのに傷つかないのだ!?」


 戦い始める前には無表情だった顔が絶望で染まる。絶対逃げられない上に自分の相手をする子どもはいくら攻撃を加えても何の痛みも感じていないかのような反応で何度殴っても立ち上がる。奇妙、いや恐怖を感じても仕方ないね。


「隠れて悪いことするために鍛えられた人たちに殴られてもダメージ無し。皆を召喚石で呼び寄せてから何か変わったなと思ったけどそんなにだったか」


 後から聞いた話だと最初に召喚したメグムが体力強化、マモリが守備力強化をしてくれていたらしい。それぞれ一体につき何かを強化してくれているということ。その上で前世の関係で俺には潜在的に魔力総量が多いらしく、それを垂れ流しにならないように自主的な訓練でそこそこの成果は出ているようだ。ただし、体の成長を期待するのはするとして技術は全然ダメだ。課題で確定。これで確かめたいことの2つ目も完了だ。


 コソウ達相手では一発で気絶するくらいには差があるだろうし。これくらいの相手でないと確認にならない。では3つ目にいきましょうか。目的の物が手に入ったので。右手を銃のようにすると人差し指を男に向けて構える。


「ニードルショット」


 男が隠し持っていた針を指先から射出する。何本か刺さるが、全部が届く前に避けられる。


「改良が必要か。改良って言うよりは魔力操作を根本から鍛えないといけないかな」


 まっすぐ進むイメージだったが射出のスピードが足りなくて少し狙いよりも下に落ちてたしな。そこまでは見えた。客観的に見てもらってたし、後でどうだったか教えてもらおう。


「さて、確認したいことはこれで終わり。もういいよ」


「承知。では時間切れでお館様の勝ちだ」


 ポチがほぼ無言で俺の勝ちを宣言すると、男の後ろに片足を高く上げたピヨが出現する。足が消えたと思ったらかかと落としで地面に埋めていた。死んでない?


「それ、大丈夫?」


「大丈夫ですよ。情報を絞りたいから殺すなって言われてるんで」


「情報?どうやって?」


「「ぼくたちがやりますよ~」」


 いつのまにか卯のシロミミとクロミミがやってきていた。

お読みいただきありがとうございました。

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