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13 村燃える

「主!あの音はなんだ!?」


 音が聞こえたと共にコソウの雰囲気は先程までの優しい雰囲気から怖いくらいの威圧を放つものへと変化している。絶対的な味方だと分かっていても少し震える。


「あれは、村に危険なことがあったときに知らせる半鐘だ。村へ帰らないと!」


「承知した!」


 返事と共にコソウは片方の肩に俺を担ぎ上げ、足元に転がっていた男を蹴り上げてもう片方の肩に担ぐ。担がれたと思った瞬間には走り出していたが揺れは感じない。頭のある高さは変わらずに景色だけが後ろへと流れていく。


「村への方角はあちらで合っているか?」


「合ってる!」


 最初に音が5回響いてから何も鳴らなくなってしまった。この時間であれば男は村の中を仕事場としている者くらいしかいないだろう。父を始めとして大半の大人の男は村の外で働いているはずだ。あと村にいるのは女性と老人、子どもたちだけだ。村人はみんな知り合いだ。同年代の子どもはあまり思ったことは無いが友達だとくらいは思っている。その人たちがもし傷つけられているなら許せない。


 そして何よりも母と弟を傷つけられていたとしたら誰であろうと許せない。


 ただの大型魔物が侵入しただけかもしれないが、得体の知れない男が自分の近くに来ていたことを考えるとイヤな予感が拭えない。コソウの道着を握る手に力が入る。


「主。俺たち全員を出せるようにしておくのだ。戦いなら俺一人で如何様にもするが、手は多い方が良い。スケさん殿なら既に状況を把握して全員をいつでも出れる状態にしているだろう」


 言われた通りにタブレットを操作すると全員がこちらを見上げていた。スケさんからのメッセージが既に来ていた。


『むら とうちゃく すぐでるよ ぼく のこして れんらくがかり』


 味方をしてくれる人たちがいる。鼻が痛い。目が熱い。でも今はまだだ。家族の、村の皆の安全を確認してからにしよう。




 村が見えてくる距離にくると黒煙が上がっていた。燃えているのだ。願わくば村の中に生えている木であってほしいが、おそらく誰かの家が燃えているに違いない。自分の家ではという考えを頭を振って追いやる。誰の家でも誰かが傷ついていることに違いない。


「主、ここでみんな出せ。走りながらでも俺たちは問題無い」


「わかった!全員『出てこい』」


 特に魔力を消費する感覚も無く光と共に他の11体が出てくる。コソウのように動物の姿で出てくるのではなく、既に人間形態だ。何となくだが誰が誰かは分かる。


「お初にお目にかかる!某はポチ、この12の獣を率いる代表でござる。ご挨拶をさせていただきたいが今はその時間も惜しい。今は行動をとらせていただくがよろしいか」


「固いな、ポチ!悪いが俺は主の護衛以外のことはしないぞ!」


「構わん!好きにせい!辰殿!消火をお頼みします!午殿は辰殿の脚として駆けてくれ!」


「承知じゃ」「ラジャー!!」


 護衛をやると言い張ったコソウから今話していたのが戌のポチ、辰のタツジイ、午のシュートだと教えてもらう。


「続いて巳殿は治療の準備、羊殿はその護衛を頼む!」


「了解よ」「任せときな」


「子殿と酉殿は怪我人の探索と救助を!途中の戦闘は各々の判断に任せる!丑殿、卯殿、申殿、亥殿は襲撃者の無力化を!お館様、相手の殺害は如何する?」


「え…?」


 いきなり命の話になって動揺する。


「ポチさんよ。今の主に判断は酷ってもんだ。行動不能にして拘束ってことでいいんじゃないか。やるならいつでも出来る」


「そうだったな。聞いた通りだ。何かあればスケさん殿を介して繋げ!では行動開始!!」


 ポチの声がした瞬間にほとんどの姿が消えた。どう動いたかすら見えなかった。ついて来ているのは巳のレピと羊のマモリだけだ。


「寅殿。その男は預かる。捕虜の集約は某だと思ってくれ」


「任せた」


 俺とは逆の肩に担いでいた男を投げるとポチが何も言わずにキャッチしてどこかへと消えた。呆然としてしまったが、家族のことを思いだしてハッとする。肩を叩きながら叫ぶ。


「コソウ!お願い!俺の家のところまで行ってくれ!」


「承知!!」


 案内も無いのにコソウは俺の家の方向へと駆けてくれた。疑問は浮かぶが聞くのは全部後回しだ。コソウの脚力は一度跳ぶだけで家の一件くらいは余裕で越えてしまう。少し駆ければ俺の家だ。



 家の前には母が倒れていた。頭から血を流して倒れている。他に怪我は見当たらないが見えないだけでパッと見ただけでは分からない。コソウの手を振りほどいて肩から飛び降りて駆け寄る。


「母さん!!」


「アーウィン様揺らさないで!マモリ、ポーションを飲ませるから手伝って」


「了解だよ」


 少しだけ母に触れたがすぐにコソウに引き剥がされる。その間に2人が母の様子を確認して確認した上でポーションを飲ませていく。


「落ち着け。レピの薬の確かさはさっき体験しただろう?」


「うん」


 俺の家は燃えてなかった。落ち着いて見回してみると燃えているのは村でも目立つ大きさの村長の家ともう一つは方向から考えて教会だ。だが少し待つだけで火が煙へと変わる。もう消火が終わったようだ。


 タブレットが視界にはいるとメッセージが大量に届いている。確認してみるとそれぞれからの状況報告が為されている。


「スケさん殿は俺たちの中継役が出来るようでな。不思議なことに全員の会話が頭の中に響く。主のそれには文字で書かれているようだが」


 コソウからの解説が入って納得する。それならば、村の人たちの無事を確認していけるだろうか。ナークは?ナークは家の中か?


「家の中を見て来るよ。ナークが隠れてるかもしれない」


「俺も行こう。御母堂は任せていいか」


「当たり前よ。けが人はここに運んでもらうようにしたからね」


「俺にも聞こえてるっつーの」


 レピがまだ慣れてないだけと言っているのをマモリがまあまあとなだめていた。その間に俺はコソウと一緒に家の中に入る。家の中は特に変化はないみたいだ。どこかにいるのだろうか。


「人がいる気配はない。弟君は家の中にはいないのではないか?」


「隠れて見つからないとかは?」


「余程の達人でも見つけられる俺に主より年下の子どもがうまく隠れられるとは思えんが…。一応探すか?」


 確かにさっき捕まえた男もいつの間にか把握して捕らえていた。どこかに隠れているならすぐに見つけられるだろう。


「分かった。外に出るよ」


 このまま闇雲に探すのは効率が悪い。俺の周りにはみんながいるから良いけど、ナークがもしあの男みたいに隠れて捕まえられていたらどうしよう。


 タブレットを見ているとメッセージに、男確保、消火完了、怪我人応急手当て後に搬送する、とか色々流れて来ていた。見ていても彼らはまだナークの顔を知らないから分からないのだと思う。それに今のタブレットだと鑑定モードにして映る範囲にならないと隠されていても見つけることが出来ない。マップから探すなんてことが出来れば…。


 マップあるじゃんか!すぐにナークを検索してみると村から遠ざかるのを発見する。


「ここに連れて行ってくれ!」

お読みいただきありがとうございました。

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