10 慣れたころに新登場
教会での魔力操作を学んでから数週間が経過した。俺は仕事を2つ任されるようになった。朝起きていつも通りの日課から始める。
横でまだ寝ているナークの頬をぷにぷにする。つつくと眉の間に少し皺が寄る。
不愉快だよな~。寝てる時にやられるとイヤだよな~。でもそんな顔をしている弟が可愛くてたまらんのよ~。起こさない程度にぷにぷにしておく。
こんなことをする時間が取れるのも、寝起き最高のタイミングでアラームを均す機能があることを発見したからだ。『タブレット』は俺の脳波まで勝手に読み取っているみたいだ。高性能の一言である。
満足した俺は以前よりも早く朝食を取れるように起きる。
「おはよう」
「「おはよう」」
いつも通り両親との朝の挨拶から始まる。食べながら父と打ち合わせだ。
「今日はうちから持っていくものだけではなくて、広場に置いてある道具も持っていくことになっている」
「大きいと袋に入らないよ?(できない設定なので)」
「そっちは大人で運ぶ。細々としたものを持っていく人手が欲しかったんだ。アーウィンがいなかったら2往復しなくてはいけなかったからな。時間が節約できる」
「ん。わかった」
返事をしてスープを一気に飲む。父は準備を先にしていたからまだ食べているが、俺はその間に袋に入れていきたい。食器を持って俺の昼ご飯を準備している母のところへ行く。
「ごちそうさまでした」
「は~い。おいしかった?」
「うん。肉が朝から食べられるのがうれしいね」
「アーウィンが時々獲って来てくれるからね。あんまり無理はしないでね」
「大丈夫だよ」
俺が持って帰っているが、俺が全部狩ってきているわけではない。その辺りはまた後で。
荷物を準備していると父が来た。
「すぐ行けるか?」
「行けるよ」
もう分かる通り、俺の仕事の1つは村の荷物運びだ。朝は主に父の手伝いをする。夕方の片づけを手伝うかはその日次第だ。場合によっては村の人にお願いされれば荷物運びもする。優先するのは家のことだが、特に労力がかからず歩くだけなので断る理由がない。
そんなことをするようになったからかとても口の大きい袋を作ってもらった。一度大きな袋に入れた後は今まで使っていた袋に入れることで手軽に持ち運びをしている。多少面倒でもスキルの詳細をバレないようにする工夫だ。場合によっては先程のように断る場合もある。
当然だが今までやっていた水の汲み取りは俺の仕事のままだ。というよりも無尽蔵に汲んで蓄えておけるので俺の仕事のままで当然か。現在の目標は風呂桶の作成だ。お湯で濡らした布で拭くだけでは満たされない何かがある。
もう1つの仕事の兼ね合いもあって父への弁当配達は母と一緒にナークが行うことになった。他の家族の人たちとも一緒に行っているので安全には配慮済みだ。ナークから受け取る父が羨ましい。俺は荷物を届けると自分の仕事に移るので受け取ったことがない。羨ましい。大事なことなので2回言いました。
ナークは自分にも仕事が割り振られるようになって大興奮だ。やる気を持ってできるなら良いことだろう。他にも家の中の掃除を手伝いたがるようになった。まずは自分のところをきれいにすることからやってもらっている。さすがに父の開拓に使う道具なんて勝手に触らせられないからな。
話を戻して。荷物運びの最中は歩きながら魔力を意識的に操作できる訓練している。歩こうが走ろうが途切れさせない訓練だ。何せまずは無意識で扱るようになることがまず第一との検索結果だったからだ。
「かなり上手くなってきたか?」
「常に意識して練習してるからね」
「そういえば聞きたかったんだけどさ。魔力操作が上手くなることでメリットって何があるの?」
「今さらだな。マジメに練習するからもう知っているのかと思ってたぞ」
知ってます。でも自分の知識と世間とのずれを知っておきたいんです。
「まあスキルを使用するときにスムーズに使うことで効果が高くなることが一番だな。後は身体能力が上がる人もいるな。アーウィンはどうだ?」
「効果が高くなってるかは分からないかなぁ。どれだけ量が入るかとか限界が来たことないし。速く走れるようになったとは思うよ」
「じゃあ才能がある方だな!良かったな!」
そう言って父は俺の頭をワシワシと撫でてくる。髪のセットをしているわけではないが、ぐしゃぐしゃになった。だが、イヤな気はしない。
「ナークにやる時は力加減してね」
「当然だ」
そんな会話をしている間に目的地に着いたので荷物を出していく。出した後は父たちは農作業と森の手入れ・伐採のグループに分かれる。父は開拓者のスキル持ちなのでどちらかと言うと伐採をすることが多い。木を切るのが段違いに速いらしい。開拓とは何か聞きたいところだがその人の行動によってスキルは成長するそうなのでそういうこともあるらしい。
荷物を出したら今の時点で俺の仕事は終了だ。
「じゃあもう行くね」
「気を付けてな。魔物にあったら無理せずに逃げるんだぞ」
「大丈夫だよ」
「親はいつでも心配するんだよ」
「は~い」
自分のことだとピンとこないが、ナークが一人で行動するとなると自分のことを置いてついて行くと考えると俺には無理だ。心配してくれる人がいることに感謝しつつ、俺に出来ることは怪我をせずに帰ってくることだと確認する。まあ毎日の日課なので変に慣れないようにだけ気を付けよう。
気合を入れ直して森の中へと踏み入っていく。
荷物を運んだ後に2つ目の仕事を始める。薬草集めだ。神父さんからの依頼で届けた薬草の品質が良かったので可能な限り集めるようにお願いされた。タブレットで撮影しながら探すと見落とさないし育ち切った良いものを採集できるからだ。
「アーウィンは探し物が上手ですね。色々と頼んでも良いですかね」
「え」
そんな感じで頼まれることになった。割と薬草は外に出るとタブレットのおかげで俺は見つけられる。他の人だと俺の倍の時間かけても半分の量も集められない。となると俺がやる方がいいねとなってしまった。
俺も自分用に薬草をストックしておきたいから荷物運びよりもメリットが多い。スキルを有効活用できてしまっているので否定要素が無い。薬草のストックが出来ることで神父さん以外にも村の人たちにも喜ばれる。一番はナークが尊敬の目で見てくれることだ。やらない手は無い。
「兄ちゃんすごいね!みんなにたよりにされるってすごいんだね!」
「ま、まあな。これが兄の実力だ!」
ウソだ。完全にスキルのおかげだ。いや、スキルも俺の実力だから間違ってないのか?それでも多少の罪悪感を感じる。
が、一人の時間が出来たことで色々とスキルの特訓を積むことが出来ている。これで良いのだと思うようにしている。
森の中では使えるスキルを全部解放する。まずは魔力による身体能力強化を解禁する。さっきまではどれくらいの出力が普通かを探るために薄く展開していたが、ここからは遠慮なく現在使える全力だ。
タブレットは見えるようにする上に少し大きくして目に見える範囲を大きくカバーするし、出入をフルに使って価値のあるものをどんどん集めていく。
集めるものは果実に薬草、危険な毒草だ。他にもキノコを回収してもいる。父たちの作業の様子を見て木を切り倒しもする。どれを切り倒せばよいかはタブレットで見せて確認する。
いくつか自分で決めたことがある。平穏に過ごすために自分の能力は家族や村のために限定することにした。多少知られてしまうが自分のことだけで留めるにはスキルが便利過ぎた。
それと『神気』については今のところ誰にも言わないままだ。メッセージを送った後に対処するとの返事が来たが対応はまだだ。そろそろ評価を一段階落とすくらいには対応が遅いと思うのだが。
走っているうちに自分の特訓場所として切り開いた場所に到着する。決めた理由は最初は元から開けていたからだ。後から1つ追加された。ここには魔物がよく集まってくる。村から少し離れていて良かった。今日はいつもの赤スライムとそれより弱い青スライムだ。
「貴重なポーションの材料だ。悪く思うなよ」
今やプチプチ簡単に潰せる。潰し終わったときに見慣れないものを発見する。
「透明なスライム?」
よく分からない魔物(?)を発見した。
お読みいただきありがとうございました。




