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耽美奇譚

身勝手な贖罪

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

可哀想は可愛いなんて気持ちはよく分かります。

登場人物泣かせる人間なんで。

でも改めて醜悪だと思った本日です。

彼女は何時も動く球体関節人形と共にいた。彼女はその人形を痛く可愛がっており、片時も離れることはなかった。何処へ行くにも腕に座らせて、外を歩いて回った。

「あぁ、可愛い。今日は貴方の好きなお菓子を用意したのよ」

「恥ずかしいよ」

そう拒む人形の手ごと抱き締めて、何時も頬擦りをする。人形は困った様に、彼女の行為を受け入れていた。けれども何処か満更でも無さそうだった。

そんな人形を珍しく一人で寝かし付けた後、彼女は僕に声を掛けた。

「前に言っていたわよね? どうしてそんなに甘やかすんだって。今、丁度あの子が一人で寝たから教えてあげる」

そう言って、僕をサロンに案内すると、黙ってハーブティーを差し出す。彼女も同様に自分の分を用意すると、静かに口を開く。

「人間ってね、とても醜悪なのよ。可愛い可愛いと言いながら、あの可愛い子をいじめていたの。彼女を鎖に縛り付けて、届かないところにお菓子を置いた。痛がるのを分かって強く頬を抓った。最初はそれくらいの事だった。でも段々と人が変わり、激化していって、最終的には治らない傷を彼女に与えたのよ。そうして毎日『痛い』と泣かせるまでに至った。序盤彼女を『可愛がっていた』人間は、見兼ねて私に預けたの。そうして馬鹿みたいにこう言ったの。『こうなるとは思わなかった』って」

僅かな沈黙が流れる。彼女は絞り出す様に一言だけ言った。

「あの子はただの見世物だった」

彼女の眉間には深い傷が刻まれている。カップを握る手が酷く震えている。それでもどうにか一口啜ると、深い溜息を着いた。

可愛いから虐めたい。というのは何も不思議なことじゃない。多くの人間が、半泣きの可愛い生き物を見て笑う。もっと虐めたいと叫ぶ。その様を彼女は黙って見続けたのだろう。

「元々は人間だったのよ。あの子。でもね、人間のままだとずっと『痛い』ままだったの。だから彼女に合意を得て、魂だけを取り出して人形に移植したの」

人形とは思えない程の豊かな表情を思い出した。あの子は元々人形師である彼女が生み出した傀儡ではなかった。血の通った人間だった。

「あの話を聞いて、私も彼奴らと同じ醜悪な面を自覚した。幼い頃に可愛がっていた縫いぐるみを、物置に一人にした事を思い出した。あの子が人だったら、一人寂しく私を求めるだろうと。それを見てほくそ笑んだ。あの子にそんな真似をする訳にはいかないのよ。だから可愛がるにしても、砂糖菓子のような甘やかしの暴力で済ますことにした」

「身勝手な贖罪だ」

「その通り」

可哀想は可愛い。なんて言葉があるじゃないですか。

でも再起不能のボロボロになるまで虐めると、

『そこまでしろとは言ってない』って言うんですよ。

そうして今度は溶けるほどに甘やかすんです。

改めて、人間の業だと思います。勿論、私も含めて。


ふと浮かんでいたのは

『君が虐めろって言ったんだから虐めたんだよ? もっと笑いなよ。君が求めていた結末だ』

と悪魔が言う話。

余りにも、この子が報われないので全カットです。


この可愛い子の主人は相変わらず身勝手ですよ。

暗い部屋に一人で残すのは可哀想。

と言いながら、現にその可愛い子にそうさせているので。

自分の精神だけを救う為の贖罪。

だから『身勝手な贖罪』なんです。



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