第五話 セカンド最速配信!
「どうも~みんな。ヒイロです~。今私がいるのはセカンド!ってなわけでセカンド最速配信、いっくよ~!あ、エリアボス攻略動画は後日投稿するから見てね~。」
私がセカンドについて始めたこと、それは配信だ!戦闘中はキキョウとだと本名がバレかねないからね。慣れるまでは戦闘配信をキキョウとするのは先になるかなぁ~。
「この子はキキョウ!私と一緒にボスを倒したβテスターだよ!ほら、挨拶!」
「えっと、私はキキョウです。武器は槍で職業は魔法使いです。よろしくお願いします!」
キキョウがペコっと頭を下げる。
『え!?もうセカンド行ったの?早くない?!』
『キキョウちゃんもかわいいね。』
『魔法使いで槍!?やばwww』
『戦えんの?』
「強いよ~キキョウは。まだ私は慣れてないから今のままだと負けちゃうかな~。」
「βの時私の攻撃全部避けて無傷で勝ったやつがなにを言うか。」
「そうだっけ?あんまり覚えてないな~。」
『あの動きしてて勝てないの?』
『だいぶ強いんやな』
『いやいやいや、マジかよwww』
『異次元なことしてんな』
コメント欄はーっと、盛り上がってんね~。というかそんなことがあったようななかったような……けど強いのはほんとだしなぁ。そうだ!狩りに行こう!それなら分かってもらえるでしょ!
「よーし、今回はセカンドで狩りするよ!早速、移動開始だ~!」
♢♢♢♢♢♢
へいへいへい、ここは魔法の森だよ!出てくるモンスターはキノコ型のマッシュ、狼系のグレーウルフ、蜂系のフォレストビー!打撃耐性の高いマッシュにAGI高めのグレーウルフ、毒持ちのフォレストビーと度の敵も厄介だね!私的にはフォレストビーが一番狩りやすいかなー。理由は後でだね!
「なつかしいねー、ここ。一番通ってたのがここじゃないかな。」
「そうね。たくさんの魔法を試し打ちした記憶があるよ。何度森を燃やしかけたか……」
「え、燃えるの?ここって。」
「燃えないよ?そのくらい練習したってことよ。」
二人は思い出話に花を咲かせながら、森の奥へ、奥へと進んでいく。そんな二人だったが、異変を感じていた。これまで一匹もモンスターと遭遇していないのだ。今まで通ってきたこの場所だからこそ、そのことがおかしいのだと気づいた。
ヒイロは【察知】を全力で発動する。【察知】は一応常時技能と呼ばれる物の一種だったが、察知の範囲はある程度調節することが出来た。考えても見てほしい。常時何キロもの情報が入ってくることを。まあ、というわけで、現時点では半径一キロくらいが限界なのでそのくらいを察知
する。すると、とある反応が入り込んだ。
「まずいね……これ。イレギュラーモンスターだ。」
イレギュラーモンスター。それは、本来、その場にいるべきではないモンスターが、過度な魔力により出現したことを指す。レベル換算で約30レベル。今のヒイロの二倍のレベルがあった。さらに、問題なのはイレギュラーモンスターはデスポーン、つまり、一定以上離れることでモンスターが消えるというのが起こらないということだ。原理としては、過度な魔力により、存在が保たれる、とのことらしいが実際今のところどうでもいい。消えないという事実のみが重要なのだ。
「種類はわかる?」
「いや、分からない。けど、かなり大きいよ。しかも移動も速い。こっちに気づいてる様子はないけど気づかれたらすぐにでも来るだろうね。」
二人は、混乱するコメント欄を忘れて作戦を練っていた。今ある手札でどうやって勝つか……ヒイロとキキョウの頭の中にあったのはそれだけだった。
「ッ!まずい!気づかれた!」
二人が作戦を練っているとき、不注意にも落ちていた木の枝を踏んでしまったのだ。ヒイロはこのゲームの細かさに感激するとともに今のタイミングじゃないだろと、そう思っていた。
「来るよっ!」
ヒイロの声と同時に、二人は構える。そして姿を現したのは、金色の狼、ゴールデンウルフだった。
このゴールデンウルフは、βでも戦ったことのない、もっと先で待ち構えている相手だ。いくらウルフと言っても能力の差は覆せない。そんな絶望がこの間には広がっていた。しかし、逃げるわけにはいかなかった。配信者として、β組として、なにより、一人のプレイヤーとして。そして、戦いの幕は上がった。
「『魔力纏』!『身体強化』!『加速』!」
先日のレベルアップの後覚えた技能、魔力纏。キキョウは槍に魔力を纏わせたが、ヒイロの使い方は違う。自身に纏わせるのだ。それにより、実質的な身体強化が可能になる。さらに、本家の身体強化。ステータスを30秒間1,1倍にする。そこに加速だ。これにより、AGIだけならレベル30相当に、STRもレベル23相当になる。
「『掌底』!からの『踵落とし』!」
新たに覚えた技だ。みんなもよく知るであろう踵落としだ。ここからさらに追撃をする。
「『インパクト』!」
インパクト、【無魔法】の一種で、相手にヒットバック効果を付与する。普通は格上相手だと成功する確率はかなり低いこの技だが、物理攻撃の瞬間に発動すると格上相手でも同格の相手に使うのと同じくらいの確率になる。まあそんなことが出来るのはヒイロ位なものだが。
「『魔力纏』!『ファイアランス』!『刺突』!『薙ぎ払い』!」
それに続いてキキョウも全力の攻撃を繰り出す。魔法を使いながらのアーツは魔法の制御力が落ちるがそれすら感じさせないほどの制御力。これこそキキョウの強み。VR空間の認識と制御が人並外れていること。β時代のPVPではヒイロ以外には負けなしだったという。
と、そんなわけでVR空間だと二人とも化け物レベルなわけだが、それでもゴールデンウルフには掠った程度しか与えられない。それがレベルの差であり、モンスターとプレイヤーの差なのだから。
「グルルルルルル……バウバウ!ワオーン!」
いきなり叫びだしたゴールデンウルフ。すると近くの木々からスタスタと出てきたのはこの森にいるグレーウルフだった。いや、スタスタというのは少々不適切だ。ぞろぞろと出てきた。グレーウルフ自体はそこまで強くないしこの二人なら余裕だろう。しかしマズイのは数とこの状況である。百匹ほどはいるであろうグレーウルフに現時点での最強格であろうゴールデンウルフがいる。二人の顔は絶望へと染まっていくのであった。
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