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12話 キュイの謎

 一体何だったのか。そんなにあげるのが嫌だったのかと、目線を下げる。


 すると手の中にあった瓶の中身が無色透明になっているのが見えた。


 一瞬中身がなくなったのではないかと思い、光に掲げて振ってみた。けれど中身はそのまま。



 水に変わった? だがこんな魔法知らない。

 キュイが光る前と後で、何があったの?


 確認したいところだが、フーリアは鑑定魔法を使うことが出来ない。


 バッグの中にある方を取り出し、こちらを渡そうとすればキュイがふるふると首を揺らした。


 どうやら透明に変わった方をあげて欲しいようだ。両方渡そうとすれば、大きく頷いた。

 あげるのが嫌、という訳ではなく、色が変わった方を贈りたいらしい。


 謎の行動にもキュイの考えがあったのか。

 だが考えどころか、もたらされた効果すら分からない。


「えっと、近しい大人に鑑定魔法使える人いる?」

「父ちゃんが使えるよ。鑑定士なんだ!」

「じゃあ鑑定かけてもらって、飲んで大丈夫だって分かったら飲ませてあげて。一応普通のもあげるから」

「お姉ちゃん、もふもふちゃん、ありがとう!」


 少年はポーションと花を大事そうに抱えて去って行く。

 無色透明のポーションの効果は謎だが、通常の色のポーションはちゃんと効くはずだ。

 判別は鑑定士だという、少年の父親に任せよう。



「さて、キュイの分のポーションも作ろうか」

「キュイキュイ」


 冠をアイテムバッグに入れ、キュイのご飯について考える。


 基本の材料はある。キュイ専用ならここの花を入れるのもいいかも。

 いくつか摘んでから、作業できそうな場所を目指す。


 ちょうど川があったので、水はそこから拝借させてもらうことにしよう。


 キュイは謎の行動でかなりお腹が空いていたのか、途中で鍋に入り込んでしまった。

 真っ白の身体は薬草色に変わってしまう。だがすぐに体内に吸収されるように色が薄まり、元の色に戻っていった。


 ふわふわ度は失われていた。だが川でジャブジャブと洗って、新しいポーションを作り終える頃にはいつも通り。


 宿でお風呂に入れば、浮かびながら爆睡していた。


 あの行動は一体何だったのか。謎は解けぬまま。

 謎生物キュイをタオルで拭いてから、フーリアも明日に備えて眠りにつくのだった。




 多めに食材を買い込んでから、船のある町へと向かう。


 町に到着してからザッと市場を覗いてみた。忠告通り、どれも高値のものばかり。

 宿も他の町と同様のレベルの場所を探せば、二倍の値段が付けられていた。想像していたよりも高い。


 他と同じ値段を探すとなると、部屋数を増やした結果、狭くなりすぎた部屋か、大部屋。

 この二択なら狭い部屋かと宿に入ろうとすると、キュイが拒絶した。


 寝心地の悪い部屋はごめんらしい。仕方ないので、二倍以上する宿に入ることにした。

 キュイはご満悦で、ベッドの上でぴょんぴょんと跳びはねている。


 手前の村で買い物をしてきたおかげで食べ物に関する出費は抑えられた。

 特に飲み物はとても高く、文句を言う客もいたほどだ。


 フーリアも同じ目に遭わなくて済んだのはキュイのもふもふボディのおかげだ。少しくらいの出費は目をつむろう。



 翌日、船乗り場に向かうと、眠そうな顔をした人達が並んでいた。

 なんでも大部屋にいびきのうるさい男がいたらしい。狭い方の部屋も窮屈な上、掃除も行き届いていないとかで、散々だったようだ。


 顔色が良いのはフーリアのように高めの宿に泊まった人だけ。

 以前もこの町を訪れたことのある者なら、大部屋か高いお金を出すらしい。キュイの判断が正しかったという訳だ。



 船が動き出すと、いたるところからガサゴソと音がする。宿の近くで朝食を買ってきた人達だ。あくびをしながら、サンドイッチを頬張っている。


 時たま、飲み物を買ってくれば良かった……だの足りない……だのぼやき声も聞こえてくる。


 すると箱を首から提げた添乗員が水や食料を売りにやってくる。町で売っていた値段から少しだけ値上げしている。


 それでも船の上で新たな食料品や飲料を購入出来るのは添乗員からだけ。加えて物には限りがある。


 ここから一日近く空腹でいることは出来ない乗客は、渋々ながらに金を払うことになる。


 聞いていた通り。上手い商売だ。


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