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女の子の幽霊(自分なりに考えて付け足しました。蛇足かも知れません)

三話で完結しましたが、ふと思いついたので四話目を書き足しました。こっちのほうが、スカッとするかも?

 夜が明け、ベッドで目を覚まして起き上がった美咲は、目の前の光景に絶句した。

 鬼堂がラグの上で奇妙な形にねじ曲がって、倒れていたからだ。


 昨日、遅くまで二人で()()の酒を飲み交わし、それぞれがこれからの素晴らしい未来に酔いしれ、眠りについたはずなのだが。この状況は? 一体何だ? 美咲は頭をフル回転させる。

 したたかに酔っぱらって、美咲の家にそのまま泊まり、ソファで眠りについたはずの鬼堂は今や、舌をだらりと垂らして死んでいる。どう見ても、死んでいる。

 何だこれは。

 美咲はベッドから降りると、鬼堂の死体を調べた。関節という関節があらぬ方向に曲がり、胴体は絞った雑巾みたいにねじれていた。だから下半身がうつ伏せで、上半身が仰向けだ。壊れた操り人形みたいなポーズ。着衣に乱れがないのが不自然なくらい、滅茶苦茶だった。その表情(かお)は苦悶というより快楽に近い、気持ち悪さを感じさせる笑みを浮かべている。

 狂った顔だ、と美咲は思った。


 鬼堂をまたいで玄関に向かい、部屋の鍵を掛けたか調べた。古いアパートだが、鍵はちゃんと掛かっている。鬼堂と乾杯する前に、美咲が掛けた。


 もしかして私が酔って()()()()()()()のだろうか? いや、そんなはずは……。そう思いながら振り向くと、ねじ曲がった鬼堂の隣に女の子が立っていた。

 青い目が、こちらを無表情に見ている。柔らかそうな髪が、室内だというのにふわふわと揺れている。

「だ、誰よ、あんた」

 努めて冷静になろうとしたが、声が上ずった。本当に最初は誰だか分らなかったが、美咲の頭の中にじわじわと、この少女の正体の「答え」が浮かび上がってきた。


 まさか、この子は、り……。


 馬鹿な。昨日鬼堂に動画を見せてもらったじゃないか。あの子は鬼堂の家に十年間監禁され、昨日死んだはずだ。こんな、小学生みたいな見た目なわけない。

 いや、その前になぜここにいるの? なんで? なんでなんでなんで。


 は、とした瞬間、女の子は目の前に移動していた。背の高さがだいぶ違うはずなのに、目線が同じだった。

 美咲の体にぞわぞわしたものが一瞬で走り抜け、直感的に殺される、と思った。


「みーさーきーちゃん、もぉーいぃいかぁーい」


 あどけない声で、美咲の顔の真ん前で、陶器のように白い肌の女の子が問うた。


 いいわけないだろ、私はこんなところで理々亜(あんた)なんかに殺され――


 ドアを開けようと必死に鍵を探る手は、空しく小枝のように折られた。悲鳴を上げる前に舌を抜かれた。

 血を吐き出しながら、美咲は長い長い間、死ぬことも出来ずに、理々亜と()()()()()()()()()()()()



 小学校から連絡が入り、アパートの管理人が美咲の部屋のドアを開けると、そこには誰もいなかった。室内は散らかっていたが、とくに事件性を示すものはなかった。ただ、一匹のウサギだけが元気に跳ね回っていた。

 それ以降、美咲と鬼堂の行方を知る者は、誰もいない。


(了)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 夜の学校のあたりからこの二人なんなんだろうと違和感が出てきたと思ったら、まさかの二人ともとは驚きです。これから二人でどんな恐ろしいことを、と思いきや四話では一転しましたね。美咲は先生と再会…
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