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1-4 奴隷の少女

side:ディーン・ファミネ



 水魔法で飲み水を創り、それを飲んだ俺たちは倒れていた少女が起きるのを待つ。


 ……それにしても、すごい美少女だな。


 冷静になった頭はそんなことばかり考える。


 くすんだ色から治癒した茶色い髪の毛はキラキラとし、ぐちゃぐちゃにされていた顔は非常に整っており、ロゼやジュリアにも劣らない。小柄だが胸は不相応に大きく、それが逆に背徳感を煽る。ロリ巨乳というやつだ。

 ロゼの私服もよく似合っている。ぶかぶかだけど。


「……う、う~ん」

「起きたわ!」

「大丈夫!?」


 少女がゆっくりと起き上がった。

 そして、ずっと心配していたロゼとジュリアが駆け寄ると……


「ヒ、キャアアア!!」


 少女が突然悲鳴をあげ、土壁でできた部屋(空気と光のために天井無し)の隅に逃げる。そして、小声で何やら呟き始めた。


「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。生まれてきてごめんなさいです。もう死にますので許して――」

「大丈夫だ! 落ち着け!」


 少女をなんとか宥める。

 俺の治癒魔法が精神も治癒させれたらよかったんだが……。


「……こ、ここは?」

「正気に戻ったか?」

「……あ、あなたは一体?」


 正気を取り戻すも、思いっきり警戒する少女に両手を挙げて自己紹介をする。


「俺はディーン。決して悪い奴じゃないから安心してくれ」

「わ、私はコラリーです。た、助けてくださってありがとうございましたです」


 少女改めコラリーをできるだけ刺激させないように話しかける。


「ここがどこだかわかるか?」

「ここは……ダンジョン。確か、いつものようにご主人様に剣で斬られて、ここに置き去りに……うおえええ」


 余程ショックなことがあったのか、コラリーが盛大に吐いてしまった。

 何も食べていなかったのか、吐いたのは胃液だけだ。


「悪かったな。まずはこれを飲むといい」


 そういって差し出したのは紅茶が入ったティーカップ。当然、地面に置いたわけではなく、きちんとテーブルを作ってそこに置いている。テーブルといっても土には変わりないが、地面よりかはマシな気がする。気持ちの問題だ。

 ティーカップはロゼとジュリア、俺の前にも置かれている。


「ありがとうございますです……あ、美味しい」

「あら。本当ね」

「ディーンは紅茶を淹れることに関しては誰よりも上手だもんね」

「……なんだか優しい味です」


 おお。ここまでストレートに褒められると嬉しいな。淹れた甲斐があるってものだ。


「ケテルティーって言ってな。一番親しまれている種類で癖も少ない」


 そう言って一口飲む。……うん。さすがは俺。元々美味しいケテルティーがさらに美味くなってる。


「落ち着いたか?」

「は、はい。落ち着いたです」

「それは良かった」


 やっぱり紅茶は偉大だ。あらゆる者に癒しを与えてくれる。


「一応聞きたいが、コラリー以外の人はここに来てるのか?」

「わからないです。ここに来た瞬間に目も耳も斬られたので」


 やべ。またやってしまった。


 カタカタ震えるコラリーに紅茶のおかわりを注ぎ、すぐに話題を変える。


「話は変わるが、俺たちは攻略を目指しているんだ。コラリーもよければ協力してくれないか?」

「でも、私は奴隷ですし戦えないです……」

「だったら俺の後ろにいてくれればいい。ダンジョンでやることはたくさんある。食べ物を探したり、必要な物を探したり、アーティファクトが入ってるという宝箱を探したりとかな。仲間は多いに越したことはない。奴隷かどうかはどうでもいい」


 まあ、四人中三人が戦えないパーティーなんて普通はないと思うけど。でも、ジュリアは本人次第で戦えそうだな。


「それでいいのでしたら……よろしくお願いするのです」

「ああ。よろしく」

「よろしくね」

「よろしく……ところで、私、仲間の勧誘受けてないんだけど……」

「ええ!? もうジュリアは完全に仲間だろ? 俺たち追放仲間だぜ!」


 まさか、仲間だと思われてなかったとは驚きだ。

 俺が笑顔でそう言うと、彼女は呆れたようにため息をついた。


「だから、追放は笑い話じゃない!」

「アッハッハッハ」


 そう怒るが、彼女の顔は楽しそうに笑っているし、破裂も起こっていない。

 そうそう。悲しむより楽しむ方がストレスはたまらない。


「心強い仲間が増えたことだし、いったん休憩にしよう。俺はちょっと外を見てくるから、みんなはこの中で待っていてくれ」


 まあ、今はここを抜け出すことが第一だ。

 立てかけていた剣を腰に掛けて、一枚の土壁を解除する。


「そういえば、コラリー。その元ご主人様とやらの仲間に弓使いはいたか?」

「え? あ、はい。あの人は冒険者らしいから仲間はいたです。弓を使ってたとなるとキース様だと思うです」

「そうか。ありがとうな」


 キース……弓使い……もしかして。


「マズいな。思ったよりも面倒なことになっているかもしれない」

「どうしたの?」


 俺が独り言を漏らすと、ロゼが尋ねてきた。


「コラリーの元主人とやらは剣嬢かもしれねえ」

「剣嬢?」

「ああ。“剣嬢”レティシア。ダンジョンを攻略しなけりゃなれないS級を抜けば冒険者としては最高ランクのA級の冒険者。たしか、そいつの仲間にキースという弓使いがいたはずだ」

「あ! ご主人様の名前もレティシアだったです!」

「じゃあ確定だな」

「それって、大丈夫なの?」


 ジュリアが不安そうに聞いてくる。


「まあ、勝てるかどうかはともかく護るくらいなら楽勝だ。Aランクなんざ、ダンジョンを攻略してない一般冒険者だからな」


 何とかなるなる。

 そう言うと、三人は少しホッと安心したように胸をなでおろした。


「じゃ、ちょっと行ってくる」


 三人のいってらっしゃいを聞いて外に出た……瞬間、地面が輝き、魔法陣が現れた。


「目があああ!! 目がああああ!!」


 直接光を浴びてしまい、眼球が焼かれてしまう。


「もうなんなんだよ!? ちょっと落ち着きたいんだけど!!」


 目を押さえながら地面に転がり、思わず絶叫してしまった。


 本当に色々起きすぎなんだよ!!


「……どこでしょう、ここは?」


 失った視力の代わりに強くなった聴力が、三人のものとは違う声を認識する。


 ……なんか聞いたことのある声だな。


「それよりも龍希とアリアを探さないと!」


 この声、そして龍希とアリアという名前は……


 治癒魔法で治した目で、突然現れた少女を見る。

 清楚な美少女という言葉が人の形をなしたかのような美貌に、豊満な胸はロゼに並ぶレベルだ。


 やっぱり!


「……久しぶりだな瑠美嘉」

「瑠美嘉!?」

「へ? 誰?」


 黒髪の美少女は不思議そうに首を傾げた。


「俺だよ。火炙龍希。元軍人の」

「私はアリアだよ!」

「りゅ、龍希!? アリア!?」


 瑠美嘉……前世の仲間、一ノ瀬瑠美嘉が驚いたように叫ぶ。


「言いたいことはたくさんあるが……とりあえず中に入れ」

「は、はい……あの、本当に龍希とアリアなの? 顔はそっくりですけど」

「ああ。この世界ではディーンっていう名前だがな。どうやら俺らは、お前らが言っていた転生っていうのをしたらしい」

「私は今はロゼって言うの!」


 そう笑って言った後、彼女を土壁ハウスの中に誘う。

 さっきの射手について少し調べたかったが、それよりもこの世界に来たばっかりの彼女を落ち着かせるのが先だ。

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