1-3 ダンジョンについて
side:ディーン・ファミネ
ダンジョンとはこの世界と繋がる異世界のことだ。
タイプは様々で、洞窟型や森林型といった自然的なものもあれば、神殿型や塔型といった人工的なものもある。俺たちが今いる『栄火の
孤島』はその名の通り島型なのだろう。
そんなダンジョンの一番の難点が、一度入ったら攻略するまで出てこれないという点だ。
さらには近くにいる者を強制的に取り込むという厄介な性質も持ち合わせており、ダンジョン近くでは人は繁栄しない。
「つまり、ここを攻略できても街までは遠いってことだ」
「詳しいのね」
「まあ、テストででるからな」
あんまりダンジョンのことを知らないらしいジュリアに教える。見た目は高位貴族っぽいのに意外だ。
成績が悪かったロゼも真面目に話を聞いていた。
「で、ダンジョン攻略の条件は一つ。ボスの縄張りを探して、そいつを倒すことだ」
ボスさえ倒せればそれでいい。
そんなシンプルなクリア条件だが、これが難しい。
最強の英雄のパーティーがダンジョンに入り、すぐにボスを見つけて戦ったが四人中三人が死んだのは有名な話だ。そのくせ、普通は探すのに時間がかかるので、ボスと遭遇できるのは身も心も疲れ切った時がほとんどらしい。
それほどまでにボスは強く厄介な存在なのだ。
「そんなダンジョンに挑む人がいるの? 聞いてる限りじゃ、死にたいとしか思えないんだけど」
「メリットがあるからな」
ボスの話を聞いたロゼが心底不思議そうに言う。
まあ、ここまでの話だけなら、ダンジョンに挑むのなんて自殺志願者くらいだろう。
当然、メリットがあるから挑む者が現れるのだ。
「メリットは二つ。
一つ目はダンジョンを攻略したら消えるということ。これによって新しい土地を開発できる。それに伴って国から莫大な報酬が出る。
そして、二つ目は特別な武器やアイテムが手に入れれること。武器はそれを持ってるだけで国防の要になるし、アイテムもまた特別だ。一般的にはアーティファクトと呼ばれている。それに素材も豊潤だ。例えば、鉱山型のダンジョンにはオリハルコンやミスリルといった価値の高い魔金属の鉱石どころか、ヒヒイロカネという未知の鉱石もあったらしい。ここだったら、特別な薬草とか木材とかが採れるだろうな」
ダンジョンの説明はこんなものかな?
「何か質問あるか? こう見えても、学園で一番勉強できたから、大抵のことは答えられるぜ」
「大丈夫よ」
「そうか。ところでジュリアはいつここに来たんだ?」
どうやら、ジュリアも俺たちと同じく一七歳で、冒険者でもないらしい。恰好から考えても、こんなところに来る人物じゃない。
「……私もついさっき。婚約破棄されて……国をお、追い出されて……それから旅を続けてたらここにたどり着いたのよ」
ジュリアが気丈にふるまいながらも、俺たちから目を背けながら話す。
すると、彼女の視線の先にあった木が破裂した。ビビった。
……魔眼の暴発だな。彼女にとって追放はショックなこと……なのは当たり前か。俺もショックだったし。
「奇遇だな! 実は俺も国を追放されたんだ!! しかも婚約破棄まで一緒じゃないか!!」
ま、共通点が見つかってよかった! 追放トークと婚約破棄トークで仲良くなろう!
「そんなに元気に言うことじゃないと思うんだけど……!?」
「しかも俺は冤罪だぜ!」
「あ、私も」
よし。さっきよりも打ち解けてきたぞ。
それにしても婚約破棄とは……一人称がわたくしだし、貴族の令嬢だったんだろうか?
「よし追放トークしながら入り口に行こうじゃないか! 案内頼む!」
「そ、それは遠慮するわ……」
ジュリアが目を逸らし、また一本の木が破裂した。南無。
「まあまあ、どんな悲劇も取り返しがつくことなら、笑って語ってりゃ喜劇になるさ。取り返しのつくことならな」
「追放って、わりと取り返しつかないと思うんだけど……!?」
「アッハッハッハ」
「アッハッハッハじゃない!!」
「無駄だよジュリア。ディーンはこういう人だから」
諦めたように言うロゼの言葉にジュリアもツッコミを諦めた。
ちょっとは受け入れてもらえたことだろうし、予定通り入り口に行ってみよう。
ダンジョンの入り口は真ん中か端っこにあるらしいし、拠点を作るならその近くだ。新しくやってきた人とのコンタクトも取りやすくなるし。
「そういや、ジュリアは戦えるのか?」
歩いている最中、ジュリアに質問をする。
「……ううん。ごめんね」
「そうか。ダンジョンにはボス以外の魔物もでるからな。戦いになったら、俺から離れないようにしてくれ。ロゼもだ」
ロゼも宮廷魔導師並み、いや、今はそれ以上の魔力を持っているが、保有属性が戦闘に向かないものだ。ジュリアもあの木を破裂させた魔法は強力だと思うが、暴発していることから考えても使いこなせていないんだろう。
二人を護る程度どうってことない。気分は騎士だ。
「はーい」
「わかったわ」
二人が俺の制服の裾をつまむ。
それからは、俺は周囲の警戒をし、二人は楽しそうに話していた。
ロゼはその容姿で嫉妬を受けて女友達なんていなかったので、ジュリアの存在は嬉しいのかもしれない。彼女の容姿なら嫉妬されることもないだろうし。
ロゼはどこどこのお菓子が美味しいだとか、このデザイナーの服が可愛くてオシャレだとか話しているのに対し、ジュリアの内容は現状を理解するのに役立った。
まず、ここはオルロス王国であること。オルロス王国はアマノカ王国と同じ大陸にある国で、大きくも小さくもない普通の国だ。同じ大陸といっても結構離れているため交流は少ない。確か、ウルリア王国という大国の隣にあったはずだ。
あと、マニアの間ではホドティーという紅茶が有名だ。
「もうすぐ着くわよ」
ジュリアが言う。
今いる場所は他と比べて木がほとんどない……というか破裂していた。十中八九ジュリアの魔法によるものだろう。
「あそこが入り口で――」
半透明の壁が見え……俺はジュリアの言葉を最後まで待たずに走った。風呂敷を落としてしまったけど今回ばかりは許してほしい。
「大丈夫か!!」
ダンジョンの入り口。そこには一人の少女が倒れていた。
その少女の状態はひどいの一言。くすんだ茶髪は半分刈られているし、四肢は全て切断されてる。そして、何よりもひどいのは顔と胸だ。
全裸に剥かれた少女の胸は両方とも切り取られ、断面をさらしている。顔はすべてのパーツがぐちゃぐちゃにされていて、原型をとどめているところはどこにもない。
どんな恨みがあったらこんなことできるんだ……いや、今はそれよりも治癒だ。まだ、かろうじて息してくれていてよかった。死んでさえいなければ俺の治癒魔法で治せる。
「あらゆる歪みよ、あるべき形に回帰せよ。ハイエストヒール」
呪文を詠唱した後、治癒属性上級の魔法を発動する。
下級・中級なら魔法名だけでいいが、上級と最上級の魔法には面倒な呪文が必要だ。火属性以外ではこれが俺の才能の限界。
「彼女をここに運んだ連中が来るかもしれない。さっきの開けた場所に戻ろう」
傷が治っていき、取られた箇所が再生していく少女を背負って、二人に言う。
二人とも神妙な顔で頷いて、さっきのところまで戻る俺についてくる。
さっきの場所に着いた俺は土属性の下級魔法で周りを囲おうとする。
すると、土壁が伸びる直前、隙間から矢が飛んできた。
「ッ! ヒール!」
矢は俺の肩に刺さる。そして、土壁が完全に視界を遮ったため、射手の姿を確認できなかった。
肩の傷を治癒属性の下級魔法で治し、すっかり回復した少女が起き上がってくるのを待つ。
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