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1-16 亡国の王女

『最強のハンター、学園に通う ~村を滅ぼされ復讐を決意した少年は生きる目的を探しに行く~』『【短編版】国を支えていた麒麟児は追放されて野生児になる  ~俺がいなくなって国が落ちぶれたと言われてももう遅い。だって王宮の空気悪いじゃん。ついでに世界を救わないといけないし~』『無名の勇者 ~世界を救うために勇者パーティーにいましたが俺でも魔王を倒せるらしいのでパーティーを追放されても問題ありません~』という三つの短編を投稿しました。ぜひ読んでみてください。

ハンター:https://ncode.syosetu.com/n3339gt/

野生児:https://ncode.syosetu.com/n4938gt/

無名:https://ncode.syosetu.com/n2765gt/

side:ディーン・ファミネ



 結局、この屋敷にある他の部屋は寝室だけだった。生活空間が一階で、各人の私室が二階にあるという感じだ。

 寝室は全部で三つあったので、俺、ロゼとルミとコラリー、オリヴィアとジュリアで分かれることになった。俺だけ得な感じがするかもしれないが、そんなことはない。俺の部屋だけ小さいのだ。


「さーて、飯にするか」

「うん。今日のお昼ご飯はどうしようか?」

「朝は洋食だったので和食がいいです!」


 みんなでリビングに集まって、お昼に何を食べるか相談する。


「ワショクってなに?」

「和食は刺身とか白米とか味噌汁とか……」


 アマノカ王国とかがある大陸には和食らしいものは何もない。なので、転生者ではないジュリアたちは首をかしげていた。


「それだけじゃわからないよ。えーと、和食は……えーと……」

「ロゼもうまく説明できねえじゃん」

「……うー」

「まあ、食べてみたらわかりますよ」


 そんなルミの言葉に、ジュリア・コラリー・オリヴィアの三人は不安げながらも同意してくれた。


「じゃあ早速、異世界ショップで購入を――」

「すみませんですわー。誰かいらっしゃいますー?」


 うっきうっきなルミが購入しようとすると、突然ドアが叩かれた。


「はーい。今いきまーす」


 それに自然に答えて玄関に向かう。


「いや! 少しは警戒――」

「はーい。どちら様ー?」

「って遅いし……」

「あ。私はティアラと申しますわ。できれば、こちらに泊めさせていただきたいんですけど……」


 外にいたのはピンク髪の美少女だった。

 最高峰レベルの顔もそうだが、何よりも胸に目がいく。ロゼよりも大きい人を初めて見た。


「ご丁寧にどうも。俺はディーン」


 自己紹介されたので俺も自己紹介していると、あきれ顔のジュリアがたいそう驚いた顔をした。


「え? ティアラ?」

「え!? ジュリアですの!?」


 どうやら二人は知り合いらしい。


◇◇◇


「私はアイネル王国の王女、ティアラ・R・アイネルと申しますわ。以後お見知りおきを」

「おう。さっきも自己紹介したが、俺はディーンだ。よろしくな」

「私はロゼ! よろしくね!」

「私はルミです。よろしくお願いします」

「私はコラリーです。よろしくです」

「私はオリヴィア。よろしく」

「で、わかってると思うけど、私はジュリア。よろしくね」


 とりあえず自己紹介はしておく。

 そして、七人分の天丼を買い、全員で席につく。


「にしてもアイネルの王女様か……」


 通りで一人称が“わたくし”だと思った。そんな一人称はお姫様しかいないからな。


「でも、アイネルって確か……」


 ただ、一つだけ気がかりなことがある。

 まあ、ジュリアの顔見知りってことは嘘ではないんだろうけど。


「ええ。我がアイネル王国はクーデターによって滅びましたわ」


 そう。アイネル王国はつい最近滅びて、ティペッシュ王国に名前を変えたはずだ。確か宰相を筆頭した大臣たちの反乱だった。


「ですが父上と母上は秘密裏に私を逃がしてくれたのです」


 そうだったのか。

 確かに王の一人娘であるティアラを処刑したという話は聞いていない。

 “宝石姫”と呼ばれた美貌を欲した権力者に慰み者にされたという意見が一般的だったが、どうやら違ったらしい。


「それは良かったな」

「はい。ですので、私は生きなければなりません」


 ティアラがまっすぐこちらを見る。

 その瞳には強い意志が込められていた。


「ですのでどうか私を助けてくださいませんか? もちろん、私にできることなら何でもしますわ」


 プライドすら捨てたその言葉に、俺は当然うなづいた。


「もちろんだ。そんなことを聞いて放っておけるほど情は捨てていない」


 みんなも俺と同じ意見らしく、全員うなづいた。


 ティアラはそんな俺たちに感動したのか、瞳に涙を浮かべて笑顔になった。


「ありがとうございますわ!!」


 にしても、同じ王族でもクロード(アマノカ王国の第二王子にしてロゼのストーカー)やアーノルド(モンブロー王国の第一王子にしてロゼのストーカー)とは違って、ちゃんとしてるな。

 あいつらは絶対に下の立場の奴に感謝なんてしないからな。やってもらって当たり前だと思ってる。


「それじゃあ、さっそく食べるか」


 天丼と割り箸をみんなに配る。


 そういや、この大陸ではフォークやスプーンで食べる文化なんだが、みんなはこれ使えるのか?


「そういや箸使えんの?」


 俺の問いに、ロゼとルミを除いた四人が首を振った。


「じゃあフォークとスプーンを買うか」

「なんか無駄遣い多いですよね。これもよくよく考えてみたら、割り箸じゃなくて普通のお箸買った方が安上がりですよ」

「ペルディアスから逃げた時のように、ポイントは万が一のために残しておきたいわね」


 そんな会話をしていると、ティアラが手を挙げた。


「あのー……ポイントってなんですの? それに、こんな何もないところで、どうしてこんないいものが手に入ったんですの?」


 あー。そういえば、俺たちの話を全然していなかったな。


「その話は食いながらするか」

「わかりましたわ」


 新たにフォークとスプーンを人数分買って、ルミが配るのをよそにティアラに俺たちの事情について説明する。


◇◇◇


「なるほど。そんなことが……」


 天丼を三分の一くらいを食べたあたりで、俺たちについて大方話し終えた。


「まさか、ジュリアが追放されるなんて……ウルリアの方たちはバカなんですの?」

「それは否定しないわ。まあ、回復系の属性を持つディーンを追放したアマノカ王国も似たようなものだけど」

「まったく。王族はバカが多くていやですわ」

「それ、元王族のティアラ様が言うのですが?」


 コラリーのツッコミにみんなが笑う。


「それにしても、異世界のことはスッと受け入れるんだな」

「まあ、私も異世界から転生してきたという方とは何度かお会いしましたから。全員、いやらしい視線を向けてきたので、ただの下卑たアピールだと思っていましたけど」


 ティアラが気持ち悪そうに身震いする。

 いったいどんな視線を向けたんだ。転生者の奴らは。


「それに、あの双子も同じことを言ってましたしね」

「双子!?」

「え、ええ。ここの住民だという双子が、この集落の場所と、どんな転生者がいるって教えてくれたんですの」


 ……俺はバカか!

 ティアラがここに来れたということは、モータルとイモータの双子が関わっている可能性が高いに決まってるじゃねえか!!


「どこにいたんだ!?」

「ふえ!? え、えっと……ここを出て左に進んだ先に……」

「左だな! ありがとう!」


 こうしちゃいれない! さっさと動かないと!!


「わるい! 俺はあの双子を探しに行ってくる。エビと大葉とカボチャだけは絶対に食うなよ!」

「わかった。オクラはもらうね」


 ……オクラならいいか。


 俺は、みんなを残して、双子がいたというところに走った。


◇◇◇


「あ。来た来た~」

「あんまり遅いから、別の場所に行こうかと思ったよ~」


 双子が笑う。


「わるいな。頭が働かなくて」


 ルミも和食で頭いっぱいいっぱいだっただろうし。


「それで、早速だが情報を聞いてもいいか?」


 さあ、ペルディアス攻略の第一歩だ。

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