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早起きは人生のトク! ~爺さんを助けたら、資産4兆円の男の養子になって嫁候補まで出来ました~  作者: 猫又ノ猫助


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第16話 オリエンテーション

 寮の部屋移動や荷解き等を行い、学園初日があっという間に過ぎ去っていった翌日のこと、俺達新入生は4人1組となって校舎前に集められていた。


 と言うのも、今日から普通の授業が始まるのかと思っていたら、本日は丸1日学園全体を使ったオリエンテーションを実施するのだと言う。


 まぁ、俺達みたいな編入組は、まだクラスメイト全員の名前どころか隣近所の名前さえ覚えてない奴も多いだろうから、これは学園側からの配慮なのだろう。


「よーし、全員集まったな。それじゃあルールを説明するぞ」


 そうして担任の伊藤先生から説明されたルールは、いたって簡単だった。


 4人それぞれに渡された地図に書いてある、1文字を組み合わせて次の目的地を目指し、目的地で出された課題をクリアすると、更に次の目的地のヒントとなるハンコを貰える……と言うレクリエーションだ。


「制限時間は16時までだ。地図のハンコが埋まった奴は、今日の授業は終わりで良いぞ……それじゃ、よーい初め」


 その合図と共に、それまで静かだった新入生たちがあちこちで話し合いを始める。


「ハンコの数は10個……って事は10ヶ所を6時間で回るって所か?」


 時計を見てみれば時間は既に10時だったため、詩音に問いかけてみると首を横に振られた。


「いいえ。中学の時と同じだとすると1回食事休憩をはさむので、実質5時間程度しかない筈です」


「そうすると、1ヶ所30分ちょっとだから、意外と時間が無いのかな? えーっと、私の所に書いてあるのは“一”だね」


 由香里がそう言ったので、俺も手に持った地図を確認してみる。


「俺のは“育”だな。真司のは?」


「俺は“第”だ」


「私は”体”、ですね……一、育、第、体。第一体育でしょうか?」


 詩音が即座にそう言ったので、パチパチと拍手を送ると照れくさそうにした。


「第一体育って付いてる場所は……この地図だと、第一体育館か?」


「それじゃ、早く移動しようぜ。俺もう腹減って来たし」


 真司にそう促されて、俺達は足早に校内を歩いていくと、天井がドーム状になっている3階建ての巨大な体育館に到着する。


 階段を登った後に、体育館の中へ入って行くと、入り口には簡易の受付が設けられ、先輩と思われる人たちが座っていた。


「おっ、新入生だね。一応チェックするから、紙を見せてくれるかな?」


 そう女の先輩に言われて4人の紙を渡すと頷き返された後、体育館の中――先程からボールの弾む音が響いている方を指さされる。


「中で説明受けて、簡単な課題をクリアしたらハンコがもらえるから頑張ってねー」


 そう言われて中に入ると、新入生と思しき生徒たちがバスケットボール片手に、フリースローを打っており――その中心、カウントしてる人たちに囲まれた男子生徒がこちらに気づいて声を上げた。


「おー、よくきたな! ここでは君たちにフリースローをやってもらう。制限時間は無しで、男子なら10本、女子なら5本をチーム内の2人が入れた時点で終了だ」


 そう言って先輩が、軽い力でボールをパスして来たので、片手で受け取る。


「フリースローか、取り敢えず俺がやってみても良い?」


 そう尋ねながら軽くドリブルしていると、詩音と由香里が頷き、真司がニヤリと笑った。


「それなら、どっちが少ない本数で入れられるか勝負しようぜ?」


 俺と同じように先輩からボールを受け取った真司がそう言ってきたので、頷き返す。


「取り敢えず、俺から打つわ」


 軽く手首や足首を振りながらフリースローラインの手前に来ると、由香里と詩音が応援してくれる。


「海人君がんばれー」


「海人さん、頑張ってください!」


 由香里はともかく、詩音に手を合わせて祈る様に見られ、少し気恥ずかしく感じながら、頭の中でシュートコースを思い描く。


 ゴールリングに入るイメージが完全につかめた所で、右手首のスナップを効かせて……シュートを打った。


――シュッ


 と言う軽い音と共にボールがネットに吸い込まれ、落ちて来る。


――パチパチパチ


 それを見た由香里や詩音、そしてこっちを見ていた先輩から拍手されたので軽く頭を下げた。


「ナイスシュート」


 ゴール下で待っていた真司からそう言われながら、パスされたボールを受け取ると、場所を入れ替えて真司のシュートを待つ。


「ふー……よっと」


 一回軽く深呼吸した後に、手本の様に綺麗なフォームから放たれた真司のシュートは、放物線を描いてゴールへと吸い込まれていった。


「これは、結構しんどい勝負になりそうだな」


 思わずそう呟きながら、落ちて来たボールを真司へと投げ返した。





 結局俺は、フリースロー対決で真司に負けた。だが、それでも俺は結構頑張った方だと思う。


 中学時代バスケ部でも無いのに、10回フリースローして2回しか外さなかったんだから。


――まぁ、真司は1回しか外さなかったんだけど


 そんなこんなで、軽く真司に凹まされた後も、俺達は様々なレクリエーションに挑戦していった。


 例えば、液体窒素を使って凍らせたバナナでの釘打ち対決やら、戦国大名ジェスチャークイズ、掛け算の暗算対決など……ほとんど遊びの様なものを楽しみつつも、今は食堂へと来ていた。


「この学校って、思ってたよりずっと自由な校風だな」


 そう言いながら、ジッと緑色のクリームが詰まった4つのシュークリームを眺める。


「私は他の学校を知らないので何ともですが……確かに、別の学校に通っている方に話をすると驚かれる事も多いですね」


 笑顔を漏らしながらシュークリームへ手を伸ばそうとした詩音だったが、その手を由香里に止められる。


「まぁ、学校自体は割と良い所なんじゃねぇの? 俺も小学生の時しか他の学校居なかったから、知らんけど」


 真司が目の前に並んだシュークリームのうち一つ……一番右の奴へサッと手を伸ばし、口に含んだ所で……盛大にむせだす。


「それにしたって、抹茶シュークリームの中に1つワサビ入り混ぜるのは自由過ぎると思うけど……」


 思わずと言った様子で由香里が呟いたので、真司以外の全員でしみじみと頷いた。


「……オマエラ、取り敢えず見てないで、水をくれ」


 呻くように、恨めし気に俺の方を真司が見て来たので、しょうがないから水を取る為に席を立ち上がった。

読んでいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] オリエンテーションじゃなく、地図を持っているなら”オリエンテーリング”だと思う。わざとオリエンテーションにしているなら、済まぬ。
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