変化の詩、あるいは、思い出。
5篇の詩集。
『芽生え』
人が好きな彼女は笑う
感情を出すことがダサいことって
考える僕を笑い飛ばす
「ねぇ、それはクールじゃなくてフールだよ」
彼女の歯の白さを思い出す度に
胸がそわそわとして仕方ない
今度、理由を訊いてみようと思う
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『イノセント』
深雪晴の朝に
近所に喪服の列が出来ていた
無垢な幼女まで黒を身に纏い
少年はネクタイを締めている
積もった雪にそれが映えて
黒と白、段差のない街、子等の顔
それになんだかすごく
泣けてきて……
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『あの衝動をもう一度』
幼い頃
深緑の森のなかに
秘密基地を作りたかっただけなのに
それだけなのに
時間がスラスラ流れるように
直ぐに過ぎてしまって
一生かけても、無理な気がした
大人になってからでも
作れるだろうけど
多分もう作らないと思う
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『夏蔭が走る』
ある夏日、歩いていたら日差しが路傍の塀や電柱から夏蔭を作り出していた。僕は世界があまりにはっきりしているので、焦ってすぐにその蔭に身を潜めた。涼しく快適であったが、僕の蔭は消えてしまった。光が差す場所を見て「クシュン」と嚔をする。
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『朝のレモン水』
朝に起きて
階段を下りると
母がレモン水を作っていた
振り向いて「おはよう」と言った彼女が
台所横の窓から指す光に照らされ
一瞬だけ他人に見えてしまい
誤魔化すようにレモン水を飲むと
少し噎せた
そんな朝
ありがとうございました。
少しいつもと違うものを書きました。あるなろう作家の方の作品を読んで「すごい!」と感動して、なんだか私も、もっとこう「日常の中から見たもの聞いたものから詩情を引き出す」ということに挑戦してみたくて。最近の私は、よく「ある心理を内へ内へ」という創り方をしますが「ある物から外へ外へ」と引き出す創り方をほとんどやっていませんでした。その点、前回の詩集「最終処理場にようこそ!」の「音し物」は珍しかったです。いろいろと挑戦ですね。まだまだ、精神も技術も未熟なので頑張っていこうと思います。そういえば、『平塚サラ』の詩集が本日で最後ですね。最後だからって特に凄いわけでは無いようですが……。まぁ、気が向いたら見てあげて下さい。
ご感想・ご指摘頂けたら嬉しいです。
m(_ _)m