初めての戦闘①
差し出されたデッキと目の前に現れたキャラクターを見比べ、あまりの驚きに呆然としているとさらに突き出すようにデッキを差し出され、慌てて受け取るとカウンターから、ひらりと飛び降りて自分と相手のキャラ(ナク)との間に両手を組んで立ち塞がり。
「無駄話をする時間は無いわよ!ご主人、さっさと戦闘準備!」
「は、はいぃ!」
ソフィアに催促をされ、まるで怒られた子供のような情けない返事をしながらも、慌てて差し出されたデッキを端末のホルダーに装着し接続できているかの確認をしようと画面を見てみると、表示が切り替わっておりステータスやスキルが表示されていた。
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【[UC]魔法料理人・ソフィア】
所属:スカイキッチン
HP:30 力:3 装甲 【近接:2】 【射撃:3】 【魔法:4】
特殊 【常時】 自分の装備カード1枚ごとに、HP+5 力+1カードの使用コスト-1(累積2枚まで)
【任意:コスト2消費手札を1枚捨てる】 捨て札の【力】をセットカードの力に+する
【ターン1回】装備カード1枚捨て任意の装甲+3 HP-3
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「⋯ええっと⋯ど、どうしたらいいんだ!?」
初めての戦闘、デッキも中身を確認しないままにセットしたため来た札もよくわかってないし…必死に手札の展開を考えながら
「はっきり言ってどうしろっていうんだ…?何を使えば良いのか把握も出来てないし…畜生!」
「ほーら!せっかくキャラクター呼んだのに、弱音を吐くなんてやっぱりコージに相応しくないのよ!さっさとコージの前から消えちゃいなさい。私が炭に変えてあげるから!」
全く状況が掴めないまま、テキストを読んで必死に頭の中で考えを巡らせる、そんな中でも赤髪の少女、ナクの煽りが胸に突っかかり急激に思考が薄れていき、余計に頭を混乱させるだけの状況に陥ってしまった。
「もうだめだ⋯どうしてこんな事に、俺はただゲームを楽しめればよかっただけなのに。」
ついには弱音を吐き始め、後悔と自分の運の悪さにそんな中でもソフィアは自信満々に構えていた、まるで負けなんか想像していないように…自分の勝利は絶対であると背中が物語っていた。
「弱音を吐かずにさっさとカードを使いなさい!口より手を、手よりも頭を動かして!相手の言葉に耳なんて貸さずに自分で正しいと思ったことをやるの!さっさと追い払わなきゃ貴方の大事な全てがあのただの放火馬鹿に焼かれちゃうわよ!?」
ソフィアからの檄にハッとなった、そうだ…今ここで逃げたら家も、自分の大切な家族との物もみんな無くなってしまう、そんなのは絶対に嫌だ!
「ちくしょう!それならもうヤケクソだ!やるだけやってやらぁ!頼むぞ、ソフィア!」
「きぃぃぃ!! 誰が放火馬鹿よ!!あんたの主人なんて、もうずっとヒィヒィ言いながら逃げ回っていたような腰抜けじゃない!どうせ私には勝てないのだから無駄なことはやめてさっさと降参すればいいのよ!そしてもう二度とコージに近づくな!」
頭を掻きながら考えることを放棄して大声でやる気を出して震えを止めるとソフィアの横に並び手札を見返す、相手が何か言っているようだが不思議と気にならない。
横に自分の頼れる相棒がいる、さっきまでの逃げるだけの自分じゃない、戦うための、大切なものを守るための力が自分にある、その事が何よりも今の自分を奮い立たせた。
バトロンの戦闘は1ターンごとにコストの上限が+1ずつ増えていき、互いのターン終了時に最大値まで回復をする、その貯まったコストを消費してキャラの効果やカードを使って勝負していく。
カードにはコマンドカードとサポートカードの二種類があり、コマンドカードには発動するための【コスト】と【射程】(そのカードの攻撃がどこまで届くのか、と何人まで巻き込めるのか)とカードの【力】(相手に与えるダメージ)、そのカードの【攻撃分類】(近接、射撃、魔法の3種類)がある。
サポートカードは発動できるタイミングと発動のためのコスト、発動した時の効果が記載されており戦闘の助けとなるカード。
勝負の判定はコマンドカードの力とキャラの力、あとはサポートカードや、キャラの特殊効果で加算された数値の合計が最終的な攻撃力になる。
そしてその最終結果の数値から、相手の分類ごとの装甲の値+相手のサポートの効果で加算された数値の差分が相手へのダメージとなり。相手のキャラ全てのHPを0にすれば自分の勝利となる。
どうやら自分への攻撃でのダメージもキャラに反映されるのか既にソフィアのHPが【27/30】になってしまっている。そのことに「ごめん、俺のせいで⋯」と一言、謝罪を言うとソフィアはフンッと鼻で笑いながらこちらに振り向くことなく
「こんなの雑魚へのハンデみたいなものよ!それよりさっさとカードを切りなさい、このウスノロご主人!」
と自信たっぷりに罵倒されてしまった、あまりにも予想外すぎて何かを言い返そうとはしたのだが気付いた時には「は、はいっ!!」と情けない返事しか出せていなかった。
⋯訂正、俺は奮い立ったのではなく、立ったまま震えていただけのようでした。
それでも、今から俺はソフィアと二人で絶対にナクを倒すんだ!