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黒龍神社へようこそ  作者: まさのり
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序章「願い-幼子の願い5」

・・・お、終りませんでした。

主様ぬしさま、場所が分かったにゃん』

頭の中にナギの思念が響く。と、同時にナギが辿った風景がナルタの頭に入ってくる。


『あと、先客がいるにゃ!』


『そうか、分かった。すぐに行くから待っていてくれ。』


『はいにゃ!・・・主様?先程から言葉遣いが、、、』


『・・・やはり変か?』


『い、いえ!とても分かりやすくていいと思いますにゃ!』


『そうか、、良いか、、』


『と、とにかく、お待ちしてますにゃ!』

ナギからの思念が切れる。


「ふむ、、そうか、良いか。」

ナルタは、頬をポリポリ掻きながら何か満足げに呟く。どうやら加也子に言われた「いつの時代の言葉遣いなのよ?」がけっこう堪えたらしい。基本的にナルタは子供に弱い。子供たち頼まれると出来るだけのことはしてやろうとする姿勢は、時に巫女たちを振り回す。然りとて、振り回される巫女たちも満更では無いようだ。


「主様、私たちもそろそろ行きますね!」

イザナが声をかけてくる。手には加也子の荷物が持たれていた。


「うむ、頼んだぞ。、、それから、くれぐれも家の者には気付かれんようにな?」


「心得ております。大丈夫ですよ?私もいますよって」

加也子を抱くウネビが答えると、

「なんでウネビがいるから大丈夫なのよ?」

と、どこか不満げな顔のイザナ。


「はは、二人とも頼りにしているさ。さて、ナギが待っておるでな、わ、、俺も行くとするか。先に帰ったら待たずとも良い。休んでおれ。」

そう言うと、すーっと姿が薄らぎ、消えていった。


残された二人、イザナの目は棒線のように細くなっている。

「・・・主様ぬしさま、言葉遣い、、ブレブレだったね・・・」


柔らかな笑みを崩さずウネビが

「今、試行錯誤してはるんと違います?しばらくそっとしときましょ。、、それよりも、行きましょか?」


「・・・そうだね。」

二人の姿も虚空に消えていった。


****************



ナギの影から、ふっとナルタが歩み出てきた。周りを見渡すと、そこは病院の一室。ベッドの上には瀕死の悟が横たわっている。


「主様。」

先に来ていたナギが目配せして、悟の足元の方へ視線を促す。

そこに何者かが立っていた。


「おー!、これはこれは、始源の、、いや、今は鎮守の黒龍ナルタ殿で宜しいか?久しぶりじゃなー。急にこの者の魂に力が戻ったと思うとったら、お前さんの仕業じゃったか。この者になんぞの役割でもあったのかいの?」

悟の足元に立つ元気そうな老人が、カラカラと笑いながら問いかけてくる。


まこと、久しいですな死神殿。申し訳ないが、その者をそなたに渡すわけには参らん。ここは引き下がって貰えんか?」

老人の風貌の死神に、ナルタは笑顔で、しかし毅然とした態度で答える。


「そうじゃのー、ワシは別に構わんがの。ちょっと婆さんに怒られるだけじゃしな?」

てへへ、と後ろ頭を叩きながら死神は答える。


産土神うぶすな殿も御健勝そうであるな。」


「おお!元気!元気!ちょー元気じゃ。」


「ちょー、、?」


「なんじゃ、可笑しいか?お前さんみたく古くさい言葉遣いしとっては、魂の最後の願いが分からん時があるからの?」


「!、、古くさい、、」


ナルタの表情を見て死神がちょっと驚く。

「、、、なんじゃ、、ワシそんなひどいことゆーたか?それより、ワシはもう次にいかせてもらうゾイ。最近は『よく生きる』事を忘れた者が多いからの、最後の最後に駄々をこねるやからが多くてな、ひとつの魂を送り出すのに時間がかかって堪らんわ。神格しんかくを持つものにとっても無限の時間が有るわけではないとゆーにな?その度に婆さんに小言を言われるこっちの身にもなってほしいもんじゃ。」


「そうであっ、、そうでしたか。時間をとらせ失礼した。」


「・・相変わらず真面目なやつじゃなー。、、まぁ、いいわい。せっかく会ったとゆーに申し訳ないが、ゆっくり話すのはまた今度じゃな。」

そう言いながら、手をヒラヒラさせながら窓に向かって歩き出すと、徐々に死神の姿は消えていった。


「・・・さて、こちらも用事を済まそうか。」

死神を見送ったナルタは振り返り、悟に向き合う。ナギが、よいしょ、と悟の上体を起こす。ペッペッと取り付けられていた医療器具を外していった。


ナルタは懐から竹の水筒を取り出すと、栓を抜き、悟の口に水を注ぐ。全ての水を飲ませた後、悟の額に手を当てる。一言二言、何かを呟くと、


「・・・これでよかろう。、、ナギ?」


「はいにゃ。」

ナギは悟を寝かせる。そしてナルタとナギの姿も消えていった。


***************



深夜、看護婦の詰所にブザーが鳴る。心拍数を測る機械や呼吸器に異常があったときに鳴るブザーだ。どうやら昼前に運ばれた救急患者の部屋からだ。回復の見込みの無いこの患者は、詰所に近い部屋に入れられている。看護婦の一人が足早に様子を見に出ると、直ぐに戻って来て、慌てた様子で電話をかける。


「先生!すいませんこんな時間に!すぐ来てください!昼間運ばれた建設現場で事故にあった人なんですが!、、、違います!、、その、、起き上がってるんです!」


***************



「加也子!起きて!!もう叔父さん来てるよ!」

美奈子は加也子を揺り起こす。


「・・・ふぁ?、、、あれ?」

目を覚ました加也子は、目を擦りながら上体を起こすと、ボーッと周りを見回す。『夢だったんかな?』


「何してるの!ちょっと急いで!お祖母ちゃんも、もう出かける準備できてるのよ!?、、あー、もう!ジャンバー何でこんなに汚してるのよ!?あ~、もういいから、早くこれ着て出てきてね!?」

美奈子はバタバタと部屋を出ていった。


「着替えなきゃ、、」

まだ頭が起きない加也子は立ちあがり、モソモソ着替えはじめる。、、と、パジャマの袖からハラハラと榊の葉っぱが落ちる。


「ん、、、あ!」

加也子の目がバチっと覚めた。





残りちょっと書いたら次の話にいきます。

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