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㉜両想い、そして求婚 By扶久子

 今、義鷹様と私、扶久子は二人きりだった。


 …って、言っても几帳(きちょう)一枚隔てて側仕えの女房である亜里沙は控えているし、御簾越しの外には煌々と松明がたかれ一定の距離は取っているとはいえ、沢山の(つわもの)達が配置されている。


 だが、しかしかかし!

 少なくともお互いが見える範囲では二人きりなのだ。

 見つめ合う瞳と瞳。

 逸らすこともできずお互いの気持ちを見透かすかのように見つめ合った。

 お互いの想いを伝えあった今、私達は両想い…の筈だ。


 その沈黙に耐え切れず先に口を開いたのは義鷹様だった。

「姫…私のような醜い男に想いを寄せられては、姫を怯えさせるのではないかと私は…」


 ああ…。

 義鷹様のこの自分は醜い発言、一体何度目だろう。


 でも、平成の世で残念女子だった私にはわかる。

 (まさ)に私自身が、同じように『私()()()』といつも思っていたのだから。

 儀鷹様はまだ信じきれないのだろう。


 私は、その義鷹様の切ない気持ちが痛いほど分かるからこそ何度でも信じてもらえるまで言葉を尽くし態度で示そう!そう思った。


 心の中で『私は美少女!私は美少女!この想い!喜ばれることはあっても疎まれることは無い筈!』と唱えて義鷹さ様に向き合う。


「そんな事ないです!そんな事ありえない。私の方こそ()()()()()()()()()()は、義鷹様には迷惑かと思っていました」


「え?な!何を…そんな訳な…」

 私は義鷹様のその否定しようとする言葉にかぶせるように告白を続けた。


「義鷹様は素敵です!本当に…は、初めてお会いした時も素敵な方だと思っていましたが、その後、言葉を交わすごとに、義鷹様の優しく温かいお人柄に惹かれました。つ…つつつ…つまり何が言いたいかと言いますと…」


 私は恥ずかしさで、つっかえながらも義鷹様の切ない気持ちを払拭したくて、なけなしの勇気をふりしぼった。

 そして言ったのだ!

 これ以上ない程に誤解しようもない程にはっきりと自分の想いを!


「好きです!兄としてなどではなく一人の殿方として!何ならもう嫁にしてほしいほどに」


「っ!?」

 義鷹様は心から驚いたようでその美しい瞳を大きく見開き戸惑いの表情をみせた。

 その表情に『え?まさかまるっきり伝わって無かった?ひょっとして迷惑だった?』と、とたんに決心と言うか自分にかけた『私は美少女』という暗示が不安でとけそうになる。


「や…やはり、私のような者が…あ…厚かましいですよね?」否定してほしいと思いつつ敢えて自虐的に問いかける。

 …我ながらあざとい。


「そそそ、そんな!厚かましいだなんて!それは、寧ろ私の方の気持ちで」

 義鷹様はそう言ってくれた。

 良かった。勘違いじゃないってことよね?

 義鷹様も私を…。

 そして、あざとい美少女な私は、またまた敢えて聞いてみる。


「迷惑ですか?」


「そんな訳ない!」

 今度はきっぱりと応えてくれた。男らしい義鷹様、素敵すぎです!

 そして、一生忘れられないであろう言葉を義隆様は紡いでくれた。


「姫…貴女のお言葉、(まこと)ならばどうか私の妻に!この義鷹一生、貴女だけを愛する事をお誓い申し上げます」


「!」私は今まさに自分が物語の主人公になったかのように(※いや、実際そうなんですけどね)感激し心が高揚した。

 ああ、私きっと義鷹様に出会うためにこの平安世界に飛ばされたんだわ。

 神様ありがとうございます。

 そんな事を頭の中で走馬灯のようにこの世界に来てからの事を思い浮かべる。


 そして私は一呼吸し、返事を待つ義鷹様にうっすらと喜びの涙を浮かべながら応えた。


「はい、喜んで」と笑顔で。

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