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⑮亜里沙扶久子を応援す

「いやぁ~だけどさ、この平安の世界に来て初めて扶久子の気持ちが分かったよ」と亜里沙が感慨深げに扶久子に言った。


「え?」


「あたしがさぁ扶久子の事、可愛いとか言ったら扶久子、男子に冷やかされるって怒ってたじゃん?」


「え?ああ、修学旅行前に教室で?」


「そうそう!」


「そりゃそうだよ!男子達からしたら亜里沙みたいな美少女と私が親友ってだけも突っ込みどころ満載だったんだから、そこは触れないでほしかったよ!」と唇をとがらせる扶久子に亜里沙は言葉を重ねた。


「それよ!そこ!さっきの若様の前で美少女って扶久に言われた時に扶久の気持ちが分かったっつうのよ!いやぁ!焦ったわ!何せここでは私の美貌は、もはや通用しないんだからね!この世界で超絶美少女の扶久にそんな事言われたら立場ないっていうか…あの若様の同情するような目がイタかったのよねぇ~」


「ええっ?そ、そうなの?ご…ごめん亜里沙」


「いいよ、もう…私もごめんね?悪気はなかったとは言え私も扶久に()()()()()させてたんだって分かったから…反省してる」


「亜里沙…」扶久子は胸の奥が、ジンとなりながら亜里沙の手をとった。


「とにかく、しばらくはこの右大臣家にやっかいになるとして今後の事も考えなきゃね?いざとなったら尼寺にでも駆け込むしかないけどさ?私の見たところここの若様は扶久に想いをよせててどうも芙蓉の方様や女房達もそれを応援しているようなんだけど扶久は若様の事どう思ってるの?」


「え?えええっ?何ソレ?」


「あれっ?気づいてなかったの?」


「なっ何をっ!あんな超絶イケメンで身分もあってしかも優しい素敵な義鷹様が、()()()()()()!あわわっ!」


「ふぅ~ん!()()()()()()…ねぇ?あたしが今言った事、もう忘れたの?今のあんたは『かぐや姫』にも負けないような絶世の美女なのよ!?」


「えっ?あっ!」

 そう言われればそうだったと扶久子は思った。


「しかも、あんたが言ってる超絶イケメンは、この世界じゃそんな風には思われてないってこと!世間じゃ鬼か天狗のような醜い若様だと言われてるみたいよ?」


「えええええっ?あんなに素敵なのに?ひどいっ!」


「”ところ変われば”ってやつよ!美醜なんて時代や国が違えば価値観も全然違うんだから!つまり扶久が思ってるイケメンは不細工なわけよ!」


「ええっ?じゃあこの世界のイケメンって?」


「そうねぇ?この時代の貴族におけるイケメンって言ったら中性的な色白ぽっちゃりさん…かな?幸い、この世界は私の知ってる史実に基づくのとは若干違ってて、眉毛はあるみたいだけど…眉毛もほっそい点々眉毛が恰好よいとされてるみたいよ?」


「うわぁ~何ソレ!義鷹様のきりっとしたほどよい太さの眉の方が絶対、恰好良いじゃんね?」


「ははっ、まぁね~彼が平成時代にいたら芸能界デビューしてもイケそうだけどね」


「だよね?カッコいいよねっ!」


「ふふっ!扶久もまんざらでもないって事ね?だったら話は早いわね?義鷹様のお嫁さんになっちゃいなさいよ」


「えっ?な…ななな、何言ってんの?亜里沙ってば」

 亜里沙の言葉に扶久子は顔から火が出るほど真っ赤になった。(か~わい~い)


「あら!悪い話じゃないわよ!そうなりゃ、大きな顔してこの屋敷の女主人として暮せるし、義鷹様は義鷹様でこ~んな絶世の美女と結婚できてハッピー!芙蓉の方様だって息子があの見た目のせいで結婚も出来ないかもと悩んでいた悩みも解決!扶久も義鷹様のことが好きならお互いハッピー!真に一石二鳥いや三鳥、いやいや四鳥って感じじゃな~い?」


「えええええ~」


「で?どうなのよ?ほんとのとこ?義鷹様のこと!どう思ってるのよ?」


「え?や、そりゃ、カッコいいなぁ~とは…でもまだ知り合ったばっかりで、それに私なんて同情はしてもらえてもまさか絶世の美女とか思ってもらえるなんて()()()()()()()()()()から…その…そういう風に意識してなかったっていうか…」


「はぁあ?あの恋する男の眼差しや周りの生暖かい目や空気に気づかないなんてさすが扶久よね?まぁ、そういうとこも可愛いけどねぇ」


「はうぅぅぅっ!」


「よしよし!まぁ、大丈夫よ!あんたには私がついてるんだからっ!」


「亜里沙、大好き~っ!」


「あははっ!知ってる~!がんばってこの世界でも仲良しで生き抜こうね~?」そんな事を言いながら笑う亜里沙だった。

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