19話 ~駄目だな俺は~
「魔王って人間みたいなんだな……」
魔王の容姿は紫の髪にボサボサの髪型。目は白色。仕事明けのサラリーマンの様な疲れた顔をしている。
「まぁ、僕は魔族と人間のハーフだから人間みたいなものだよ」
「魔族と人間のハーフ? そのせいで強いの……強いんですか?」
「いいよ、敬語を使わなくても。僕は皆と対等にいたいからね」
「そうですか……じゃなくて、そうか。分かりましたって敬語が抜けねぇな」
「敬語が抜けないならまぁ、それでもいいけどね」
魔王はゴホンと言いさっきの俺の質問に答えた。
「まぁ、そうだね、自分で言うのもなんだけど魔族と人間のハーフだから異常な強さなんだよ。まぁ、どれくらい強いかって言うと詠唱無しで天候を変えられるぐらいね」
「詠唱無しで天候を変えられる!? どんだけ魔力のコントロールが上手いんだ!? しかも、天候を変える魔法をあっさりとできるのか……村人100人の魔力があっても足りないぐらいのものを簡単に……」
1ヶ月この世界について勉強したから分かる。この魔王の強さが……
じゃあ、魔王の得意魔法はなんだろうか? 得意魔法っていうのは、その属性と相性がいい魔法の事だ。ハラなら泥魔法、メラとラメなら光魔法。皆それぞれ得意な魔法がある。
「魔芸者魔法っと言っていたけどあれは魔法ではないよね? 確か……人それぞれスキルの効果は違くなるんだっけ?」
「そうです。私の効果はこのビー玉から色々のものを出せたり、魔法を閉まったり出来きる。後は色々、変な事が出来るな」
「それを、戦闘に生かすには並大抵の努力じゃあ出来ないからね。よくこの短期間であれほどまでスキルを仕いこなせてるね」
「褒めてくれて、ありがとうございます!」
「まぁ、良いもの見れたし僕はこれで行くよ。あ、そうだ愛地君。君は成長というスキルを持っていると言ったね?」
「はい! それがなにか?」
「そのスキルを後、8ヶ月で扱えるようになりなさい……あと、君のその習得の速さなら剣術も習得した方がいいだろう。シュラインを君の指導に付けよう。それらの力を扱えるようになれば、晴れて魔王軍幹部にしてあげよう。後、他の者達と仲良くしなさい。君はまだ僕達魔物を嫌っている節がある。私達に慣れるように、以上だ。メラとラメ、それにミケラン、愛地君を鍛えてくれたまえ」
「「「はい、分かりました(ニャ)」」」
それから俺はシュライン……いいや師匠に剣術を教わり、ハラやヤマ、そしてミケランやメラとラメにとの戦闘を繰り返し、あっという間に8ヶ月が過ぎた。
ーー魔王軍幹部就任式ーー
ただただ広い場所に俺はいる。床や天井は豪華に装飾されている。俺はその部屋のステージの上にいる。そして、俺の目の前には魔王がいる。ステージの傍には魔物達がいっぱいおり皆が俺に注目している。
「渡辺愛地、君を魔王軍として認め、そして魔王軍幹部としての実力を持っていると認める。よって君を54人目の魔王軍幹部としてこれから働いてもらう。異論はないね?」
「ないです」
「では、君を今日から魔王軍幹部として認める! 期待してるよ」
皆が拍手をしてくれた。俺はこの8ヶ月で皆と関係をもった。皆でご飯を食べたり、皆とお風呂に入ったり。そん事をして皆と仲良くなった
「そりゃあ勿論期待してください。幹部の中で1番弱いけど、これから1番強くなるよ」
「グアッハッハッハッ! 1番強くなるか! そりゃ無理だな何でって俺様がいるからな!」
下半身が馬で上半身が人間の魔物、メンタークが言った。メンタークは幹部の強さ序列5位だ。ちなみに今の幹部は12人いる。
師匠はランキング4位、ハラは8位、メラとラメは2人合わせて1人なので、6位だ。ヤマは10位、ミケランは9位だ。
だが、これは幹部だけの序列。四天王や結みたいな秘書だけど激強の奴等もいっぱいいる。幹部ランキング1位の人は会ったことがないが、どこかでずっと修行をしているらしい。今日、幹部就任式に来るかと思ったが来なかったのがちょっと残念だ。
「さぁ、これから愛地君には任務に行ってもらうよ」
「任務? 何だそれ?」
「最初に幹部になった者は、ダイン前線に攻め込み何らかの成果をだす。愛地君はミケランとパートナーだからミケランと一緒に行きなさい」
その後、俺は魔王様から説明を受けた。この部屋からテレビみたいに俺が戦っているところを見れるものを設置し、俺の活躍を見るらしい。そして、俺はLv200の魔物、1000体を連れダイン前線の近くまでテレポートした。
「この草原の景色……そして、この川の流れの速さ……懐かしいな」
約何日ぶりだろうか? 魔王城にずっと篭もっていたが俺は2度ぐらい外に出た。それもいつだったか忘れてしまった。日光が眩しい。そしてこの景色……1年前でも鮮明に覚えている。皆との思い出を……。
「懐かしいニャ。ここでサイザルさんが瀕死になったニャ~」
「そうだったな」
ザイザルの事を思い出してしまって笑ってしまった。あの時は幸せだった。だけど、今も幸せといえば幸せだ。楓達はどうしてるんだろうか? 皆の事は今も思い出す。
「しっかりしないとな! よしっ! 行くぞ!」
俺はダイン前線まで魔物の大軍の一番後ろからついて行きダイン前線に到着した。
「すげー冒険者の量だな。だが、あの冒険者達は弱いな。だが、俺は1発でも当たったら死ぬけどな」
修行をしていたら、相手の力量が分かるようになった。冒険者の数は200人ぐらいだ。200人もいれば、魔物大群は敗れるだろう。
「そんな事を考えてると、魔物達が攻めていったな」
魔物大群は波のように走っていき冒険者達と戦いあった。
「この2倍の量の魔物達と楓達は戦ったのか……昔の事をどんどん思い出してきたけど……どんどん悲しくなってくるな……」
「マスター元気だすニャ。悲しいのは私もだニャ」
「悲しい事を考えてると駄目になるな。よしっ!」
頬を叩き、俺は気合を入れ直した。
「ミケラン。大きいの出してくれ」
「分かったニャ! 獄炎魔法『獄炎の業火』」
ミケランは空に俺のファイアより小さいの炎を出した。まぁ、無詠唱でこの威力の魔法を出すのは凄い事だ。そして、この魔法を見たらダイン前線の主力が出てくるだろう。俺はそいつを相手にする。そして、勝つ!
ミケランの炎に反応してダイン前線から強力な2人が出てきた。遠くからでも分かる、俺の1000倍強い人だ。
「ハルさん、強いですよあの相手は」
「そうですね。ですが、モモさんが居れば大丈夫ですよ」
あの炎を出せるのは強い者しかいない。私とハルさんは気合を入れ外に出た。
何故か私は今日の朝から妙な胸騒ぎがしている。何故だろう何か大切な人に出会えることが出来る。そんな気がした。
「あの者があの炎を出したのは分かりますが、あの隣のフードを被った人は誰でしょう? 凄い弱々しい気配ですが……うん? どうしたんですか、モモさん?」
あの姿を見た瞬間に気がついた。約1年、私達はあの者を探していた。
「渡辺愛地ぃぃぃぃぃぃ!!!」
ダイン前線に叫び渡る怒号。誰でも分かる、そこに強い憎しみを抱えているのを。
私は全速力で渡辺愛地の元に走った。
「この声は桃さん!?」
ダイン前線に響き渡るこの声はどう考えても桃さんの声だ。
「ッッッーーー!!!」
それは師匠と修行をしていなかったら絶対に避けられない殺意をもった攻撃。それを避けられたのはあまりの殺意に体が動いたからだ。
「そうか……そうだったな。皆は俺の事を憎いと思っているのか……」
「渡辺愛地……! やっと、やっと出会えた! 私はお前をずっと探していた! お前に私の大切な人を殺された! ここで……お前を殺す!」
いつもの大人しい口調の桃さんではない。今、桃さんは俺を本気で殺そうとしている者だ。大切な人にこんなにも恨まれているのは本当に……
「ミケラン……俺は桃さんに攻撃出来ないんだ。だから、ミケランが戦ってくれないか?」
「いいですニャ。今日は特別ニャ」
「ありがとう。俺はハルをあいてにするよ」
俺は桃さんに背を向けハルさんのところへ歩いた。
「私と戦えぇぇぇぇ渡辺愛地ぃぃぃぃぃ!」
桃の突進。その速さは愛地を殺すには十分な速さ。だが、それはミケランの手によって防がれた。
「離せ! あいつを殺させろ!?」
「出来ないニャ。貴方は私と戦うニャ」
「ふえっへっへっへっ! お前は弱そうだな? ここで殺してやるよぉぉぉ 」
いかにもモブキャラ見たいな口調な者が俺に斬りかかってきた。だが、その上段からの一撃はあまりにも遅い。俺は腰から木刀を手に取り、相手の剣を避け、相手の背後に行き木刀で斬りかかった。その一撃でその者は気絶した。
ここには師匠より弱い者しかいない。俺に行動を起こした者達を全てなぎ倒し、ハルの元に向かった。
「何だよあいつ! 攻撃も当たらないし一撃で皆がやられちまう!?」
だが、人が多すぎる。ハルさんの元に俺は行けない。
「しょうがない使うか……魔芸者魔法『爆弾の雨』」
俺はビー玉を空中に1個投げた。その投げたビー玉分裂を繰り返した。1個が2個に、2個が4個に4個が8個にと。合計3000個になった時にビー玉を落とした。
「何だよ……あの魔法!? 見たことないぞ!?」
そのビー玉は激しい爆発音と共に冒険者を全てにダメージを負わせた。道が開けた、ハルの元に俺は歩いた。
「……貴方は何者なんですか? 貴方ぐらいの実力ならこの冒険者達を殺せるはずです。ですが、全員生きている。何故、殺さないんですか?」
「人殺しはしないんだ。楓達が知ったら悲しむだろ?」
「貴方は楓さん達に嫌われているはずです。なのに何で楓さん達を思っているのですか?」
「そりゃあ、楓達が好きだからだよ。俺も忙しいんだ。さっさっと戦おうか?」
ここでハルさんを倒し、俺の晴れ舞台とする。
「俺の二つ名はない!」
「わたしの二つ名は《龍の剣士》」
二つ名の紹介は終わった。俺は本気を出すためスキルを解除した。
「『制御』解除」
溢れ出る力。修行の成果で活動限界が3分から5分に伸びた。勿論、このステータスには慣れている。
「さっきまでとは違う。強いですね」
「ああ、俺は強いよ。だって魔王軍幹部だからな」
その言葉を聞いて驚くと思ったが、ハルは驚かなかった。それが当たり前のように。
「だけど、俺に正々堂々ってのは知らなくてなつまり……卑怯なんだよ。ファイア!」
鳴り響く轟音。1年前とらくらべものにならないぐらいの強さ。それは、ダイン前線基地に表面を抉る程の強さ。そんな炎に巻き込まれたハルは生きているのか? いや、生きている。
「俺の目的はハルさんではない。俺の目的はダイン前線基地だ」
ダイン前線基地にいる人達はどう思うか? 絶対に安全だと思っていた所がこんなにもボロボロになったのだ。じゃあ、感情はどうなるだろうか? それは恐怖の感情に満ちるだろう。
「ユニークスキル『恐怖に抗う者』発動!」
ダイン前線基地から黒い靄が次々と出てくる。それは俺の身体へと吸収された。
「それ以上、ダイン前線に撃つな! 次、魔法を撃とうとしたらお前を殺す 」
俺のファイアに吹き飛ばされたハルは、ボロボロのダイン前線から、ボロボロな体で出てきた。だが、その体では俺の場所まで来るまで時間がかかる。その間に殺せるはず実力をハルは持っているはずだが、それをしないで警告するという事は体に大きいダメージ受けたということだ。
「いいや、止めないよ。だが、これで最後の攻撃だ 」
俺はこのユニークスキル『恐怖に抗う者』は魔法に恐怖を上乗せして凄まじい威力の魔法を出すことが出来る、そんなスキルだ。だが、その威力の半分のダメージを俺は受けないといけない。諸刃の剣のようなスキルだ。
俺はそのスキルと、この魔法を組み合わせて使う。世間は知らないリトルのもう1つの特徴を見つけた。それは……魔法の融合だ。
「職業スキル『幼い者の土遊び』発動! リトル魔法『炎の爆発』」
鳴り響く轟音と爆発音。あまりにも威力でハルは風で飛ばされた。これで、ハルは無事だろう。その安堵と同時に体に耐え難い激痛が走った。
「いってぇぇぇぇぇぇ! 痛すぎるだろ!?」
俺が激痛で地面に倒れ悶えていると、砂埃が晴れダイン前線基地が見えてきた。ダイン前線基地は真ん中にすっぽりと大きい穴が空いていた。
「俺も成長したな……でも、この魔法の反動やべぇぇぇぇ!」
「愛……地……? 愛地……!」
砂埃が晴れたの同時に空中から1人の少女が降りてきた。そして、俺の所へ一直線に来た。その声は冷たい声だった。この世界に来て初めて楓に会った時のように冷たい声。
「楓……?」
やばい、ここで楓に会ったら色々と駄目だ。俺は体の痛みで動けないし……どうする!?
「ワン!」
そんな中、楓と俺の間に犬姿のミケランが現れた。
「ミケランちゃん無事だったんだね!?」
ミケランに対しての記憶は操作していないだろう。普段の楓の声だ。
「ワォォォォォン!」
ミケランは口から炎を地面のだし砂埃を上げた。そして、ミケランは俺の所へ来た。
「渡辺愛地ぃぃぃぃ! 行くなぁぁぁぁぁ!」
俺はミケランのテレポートで魔王城へと移動した。桃さんの叫び声を聞いて俺はダイン前線を後にした。
「愛地……。それより、桃ちゃん大丈夫、その傷!?」
「大丈夫です! ですが……愛地さんを……って何でさん付けしてるんでしょ? 分からない、胸がずっと痛い……呪いをかけられたのかな?」
桃の顔には涙が流れていた。それを見た楓も涙を流していた。
「私も分からなかったんだ。何故か会った時凄い嬉しかった。だけど、今はこんなにも憎い! 何でだろうね……この気持ち」
ーー魔王城医療室ーー
「ありがとう……ミケラン、助かったよ」
俺はその後、俺は魔王様の元にテレポートし気絶してしまった。気づいたらここに眠っていてミケランに何があったかを説明をしてもらった。
「大丈夫ニャ。それより、マスターの方が大丈夫かニャ?」
「大丈夫だよ、痛みはまだあるけど回復魔法してもらったから痛みはひいたよ」
「その傷のことを言ってないニャ。心の方は大丈夫か聞いてるニャ」
「あーそっちの方か? 大丈夫だよ。大丈夫な筈なんだよ、なのに……こんなにも悲しい、涙が出てくる……クソっ! 楓達と会うことがこんなに心が揺れるとは……」
俺は大粒の涙を流していた。ミケランの前では泣かないつもりだったのに……!
「いいだニャ、マスター。泣いていいんだニャ」
「そんな事お前に言われたら甘えちゃうじゃねぇかよ……!」
この日俺は一日中目が赤くなるまで泣いた。
どうも1週間以内に投稿するとほざいてた犬三郎で~す。今回はヒロインと主人公の苦悩を書けたような……? 次回からは帝都編です。多分帝都編になると思う……。
by次回は一ヶ月後に会いましょう犬三郎