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第15話 ~俺はどうすれば?~

タイムリミットはあと5分か……。

もう、無理なんじゃないかと思う自分がいるが絶対に他に方法があるとめいいっぱい考えた。

今の俺には力がない。皆の様に力があればアークは助かるのに! 何で……俺だけ弱いんだよ! いや……待てよ? 俺はこの世界に転生して誰に助けられてきた……? ミケランだ。

前、森でザイザルは言っていた。俺とミケランは主従関係だと。だとしたら、ミケランを呼ぶ事が出来るのではないか?

上昇下降(じょうしょうかこう)(ぐも)の様に呼びかければ来るのではないか?

これに賭けるしかないか。


「ミケラン! お願いだ! 幸先生を連れてここに来てくれーー!!」


俺は空に向かって大きく叫んだ。心で呼ぶのか、声で呼ぶのかそれが分からなかったので声で全力で叫び、叫びながら心の声で全力で呼びかけた。


「ミケランジェロ! 来てくれ! お願いだ!」


ーー残り3分ーー


「ミケラン! 頼む! 来てくれ!」


何度も呼びかけてもミケランは来ない。普通に走って、幸先生を呼びに行った方が良かったのか?

いいや、もう遅い。今は全力で呼ぶしかない


「もう、時間が無いんだ! 幸先生を連れてきてくれ!」


ーー残り2分ーー


「ミケランミケランミケラン! お願いだ! 俺は楓にあんな酷いことをしたこいつは許せねぇけど! こいつが死んだら、俺は悲しんだ! お願いだ……来てくれ!」


喉が痛い。声が出なくなってきた。それでも、こいつを……アークを助けたい!


「頼む……来て……くれ! 俺は……アークを助けたい! 助けないと、アークに楓のことをもっと知って欲しいんだ!もっともっともっと俺達の事を知ってもらって、楓と俺達と!仲が良くなって一緒に旅をしたい! 」


俺はいつの間にか泣きながら叫んでいた。俺がいつの間にか心で思っていたことを口に出していた。俺はこんな事を思っていたのか? 今もなお衰弱していくアークを助けたい。呼吸が小さくなっているアークを助けたい。


ーー残り1分ーー


「弱い俺でも! こいつと仲良くなりたいんだ! トイレでこいつと話した時、絶対に仲良くなれると思ったんだよ!だから、だから……頼む……ミケラン助けてくれ!」


もうダメだ。もう、アークは助からないかもしれない。俺が髪の毛を空に投げなければ……! 俺が決闘なんてしなければ……!


「ふふふっ。やはりお前は強欲だな。だが、それがお前の美徳でもある」


後から女の人声が聞こえた。聞き覚えがある声だ。俺は思わず後ろを振り返った。


「幸先生! 早く! アークを助けてやってくれ!」


そこには幼女姿ではない幸先生がいた。どうやって来たかは分からないが、幸先生が来たのだ。なら、早くアークを助けてもらわないと……!


「いいだろう。だが、条件がある」


俺はそんな馬鹿な事を言っている幸先生に憤怒した。今ここでそんなこと言う必要はないだろと!


「条件? こんな時に何を言ってるんですか!? まずは、アークを助けるのが先でしょ!?」


ーー残り40秒ーー


「いや、こっちの方が重要だ。これを約束してくれなかったら私はこいつを助けない」


何を馬鹿な事を言っている! だが、悩んでいる暇はない。俺はすぐさま返答をする。


「分かった! 条件はなんなんだ?! 早く言ってくれ!」


幸先生は涙を流しながら喋る。


「もう、私から離れないでくれ。私とずっと一緒に居てくれ」


ーー残り25秒ーー


幸先生は悲痛な顔でそう言った。俺には幸先生が何を考えているか分からない。

だが、こんな状況だが、幸先生を綺麗だと思ってしまった。胸のドキドキが止まらない。

満月の光が幸先生を照らして、顔を赤くしながら泣いている幸先生……。

その姿に見とれていたら、幸先生惚れていたかもしれない。だが、今はそんなことを考えている暇はない。ずっと一緒に居てくれなんてそんな簡単な約束を守ってやる。


「分かった。ずっと、幸先生といることは出来ないけど、俺は皆とこれからも一緒に居たい。だから、そんな事言われても俺は離れない」


「本当だな? その言葉を信じるぞ?」


「ああ。信じてくれ」


ーー残り20秒ーー


俺は幸先生に頷きながら言った。

そして、幸先生は涙を拭き、腕を自分の前に伸ばし、手のひらを広げた。そしたら、手のひらから杖が出てきた。それを、瞬時に掴んだ。


その杖は特徴的な形をしていた。杖の先端が5つに枝分かれしてその先端に6個の玉が付いていた。

赤、青、緑、黄、白、黒、の色の玉が輝いている。そして、その1つの黄色い玉が急にデカくなり周りにあった玉を全て飲み込み、先端に黄色いデカい玉が形成された。

そして、その杖を両手で持ち空に杖を上げた。


ーー残り15秒ーー


「光の神よ、其方の力を貸してほしい。今は光と真逆の夜。しかし、其方の光は今も輝いている。その光でこの者を救ってくれ」


幸先生の周りに月の明かりが集まってきた。

その姿は神々しく、そして美しかった。


ーー残り10秒ーー


「さぁ……舞い踊れ光の粒よ。そしてその温もりで、この者を包み込め!」


集まった月明かりは光の粒になり、アークの周りを囲んだ。


「古代魔法!『月下の救い』」


アークの周りにあった光の粒は一気に砕け散り、アークの周りを雪のように小さな粒が降っている。

そして、アークの傷はどんどん回復していった。


「うっ……」


アークから微かな声が出た。


「大丈夫か、アーク!? 心配したんだぞ!?」


俺は横になって寝ている、アークに近づいた。


「大丈……夫だ。お前の声……ちゃんと届いてたぞ?」


弱々しい声で喋ったアーク。だが、アークにあんなことを聞かれていたなんて恥ずかしい。


「いや……それは忘れてくれ。その事に関しては……俺の黒歴史になった」


俺が顔を手で隠した。


「話の途中で悪いが、何があったのだ?」


流石幸先生だ。もう、涙の跡も全てなくなっている。

俺は幸先生に戦った経緯と、戦った内容を話した。それを聞いた幸先生は少し考える様子を見せ、アークの元に行きアークと喋りやすいようにしゃがみ込んだ。


「アーク。今日の、お前の運の値は何だ?」


「563です……」


運の値……多分ステータスの事だろう。こいつの2つ名も《運命の勇者》って言っていたから、何か関係があるのだろう。


「563か……。やはり……渡辺の運と関係しているのか?」


幸先生がボソッと独り言を言っている。何を考えいているかと思っていた矢先、隣に居たザイザルの方を向き、パチン! と指を鳴らした。


「うっ……ここは……アークさんは、無事ですか!?」


すると、ザイザルは目を開いた。


「ああ、無事だ。だが、お前は無事ではいられないな」


それを聞いたザイザルはビクッ! ど体を震わせた。幸先生が言ったザイザルが無事でいられないという事は、どういう事だ?


「ザイザル……お前、『死霊魔術師(ネクロマンサー)』じゃないか?」


その言葉にザイザルは地面に正座になって座った。


「バレてしまいましたか。いいえ、こんなに早くバレた事は幸運だったのかもしれません。煮るなり、焼くなり好きにして下さい」


話についていけてない自分がいる。

この世界の知識に関しては何も無い俺は、皆から説明されないと全く分からない。

未だにミケランの事もよく分からないしな。

ここは、黙って聞いておくべきだろう。


「煮るなり……焼くなりか……。じゃあ、そうしようか」


「えっ?」


パチン! と幸先生が鳴らした瞬間ザイザルが水が入っている壺の中に入った。そして、またパチン! と指を鳴らした瞬間、壺のしたが勢いよく燃えだした。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「ザイザルぅぅぅぅぅぅぅ!」


ーー5分後ーー


「はぁ……はぁ……。本当に煮て焼くとは、思わなかったですよ……」


そのあと俺は止めに入ったが、ザイザルは火だるまにされ今、回復魔法を幸先生が掛けザイザルの一命は取り留めた。


「これでお前の処分は終わりだ。お前の職業は運び屋だと言っていたな? 運び屋はあくまで中立の立場だ。運び屋は貴族達も使う。運び屋の仕事を確実に行うために、その職業になった。そういう事なら、お前を罰する事は無くなる。お前は仕事の為にその職業を選んだ……違うか?」


「もう、それでいいです」


幸先生が頷いた。俺にはなんのこっちゃか全く分からないが、何かが解決したのなら大丈夫か。


「何だっ!?」


俺が安心していると、山頂付近でドーーンと爆発音が聞こえ、山頂を見てみると真っ赤な光が見え、煙が轟々と空に舞っている。


「魔法騎士長様ーーー!! 大変です!」


そんな中、1人こちらに大きな声で幸先生を呼びこちっに来ているものがいた。

メルリンだ。メルリンが慌てながらこっちに来ている。


「何があったんだっ!?」


声を荒らげて言う幸先生。


「王都が……襲撃されました」


それを聞いた幸先生と、気絶していたアークも目を覚ます。


「魔物の数は何体だ?」


幸先生が気持ちを落ち着かせ、メルリンに聞いた。


「Lv400の魔物が1000体、Lv500の魔物が1000体、Lv600の魔物が10体。

そして、魔王軍幹部が4人。そして、その1人がこのダイン前線に、Lv500の魔物、500体を連れて来ています。残りの3人の幹部は、2人が王都を襲撃し、もうひとりは王城の中です」


「王城の中だと!? しかも、魔王軍幹部がそんなに来ているとは……聖騎士長と、武道騎士長はどうした!?」


「現在、《千戦》と《人形姫》が魔物と応戦し、聖騎士長様と武道騎士長様は王様の護衛と、王城に入った者の排除をしてるそうです!それから 聖騎士長様から、早くダイン前線にいる冒険者をテレポートせよとの事です」


「分かった。勇者、ザイザル、お前らも連れていくが……いいな?」


「ああ、連れていけ! ここで戦わなかったら何が勇者だ!」


アークはの外傷はもう治っているように見えるが、剣を杖替わりにして立ったアーク。

半分死んでる状態で回復したんだ、体力の消耗が激しかったのだろう。


「ええ。私も少しながら助力します」


「よし! じゃあ、食堂までテレポートする!」


そして、幸先生はパチンと指を鳴らた途端食堂に着いた。どうしよう……俺も行く事になってそうだけど、俺……戦力にならなくないか?


「お前ら聞けーー!」


俺がそんなことを考えていると、幸先生はまた、指をパチンと鳴らしたら幸先生の声が大きくなり食堂中に響く音量になった。


「もう、王都に魔物が攻めてきてるとお前らは知っていると思う! お前らは王都の魔物達を相手しろ! そして、私が選んだ者達は魔王軍幹部と戦ってもらう! 私はダイン前線に攻めてきてるいる魔王軍幹部を相手にする! だから、王都には行けない! お前らが魔物達を倒すんだ!」


幸先生から唐突に言われた言葉。冒険者のほとんどは動揺している。幸先生の言葉通りなら強い者達は魔王軍幹部の相手になってしまう。だから冒険者達は魔物に殺される可能性が上がり不安に煽られているのだろう。


「それから、魔王軍幹部討伐選抜メンバーを発表する! アーク・ミックル、ハル・フォンド、シャロン・ムール、

カエデ・ヤマヅキ、ザイザル・マーフォン、

アズキ・ナギサ、モモ・クリバヤシ、アイチ・ワタナベ、ハインケル・マルス。以上だ。私の期待に応えるように!」


いや、俺が魔王軍幹部討伐メンバーにはいってるんだけど?


そして、幸先生は杖を地面に叩いた。


「何だ……これ!?」


だが、俺のその考えは一瞬で消え去った。何故ならば、テレボートした先は地獄絵図だったからだ。

建物は燃え、魔物が人間を喰らってい。

俺達の周りには、勇者パーティと楓達がいる。だが、ミケランとザイザルがいない。なにかの手違いでバラバラになったのだろう。食堂にいた冒険者達も居なかった。


「誰か! 誰か助けてくれぇぇ?!」


どこからか、男の悲鳴が聞こえた。とても必死な呼びかけだ。魔物に襲われているのだろう、早く助けないと!


「おい! あっちで助けを呼んでるぞ! 早く助けに行こうぜ!?」


「待つんだ愛地君。私達は魔王軍幹部を討伐を目的としている。あれは他の冒険者に任せないといけないよ」


死にそうな奴を助けようとして何が悪い!?

俺はそう言おうとしたが、俺には力がない。

結果的にこいつらに任せないと何も出来ない。


「アイチ、まずは魔王軍幹部を探すんだ。博士何とかできないか?」


俺は何も言えなかった。ただただ、従うしかない。楓達も何も言わずに、アークの話を聞いている。楓達も我慢しているのか……それとも本当に助けたいと思っていないのか?


「勇者たちよ、魔王軍幹部はこっちの方にいるぞぉ~」


そんな中、背後から聞こえた老人の声。その声に気がついたアーク達は背後を振り向いた。


「カンヒさん……の分身か。情報ありがとうごさいます!」


カンヒという人が情報をくれた。一瞬でその情報が正しいと信じたアーク。カンヒは偉い人物なのだろう。

カンヒの言葉を信じ、カンヒの指差したところに走ろうとした瞬間、楓だけはカンヒの方へ一瞬で移動し、カンヒの顔にパンチをした。


「ハラさんダメだよー? 人を騙しちゃ」


下を向いて悶えている……いや違う。楓そ のパンチは簡単に受け止められてしまっていた。


「はははは! やっぱり、カエデちゃんにはバレるよな〜。勇者を、ここで無力化出来たら良かったのにな」


カンヒが喋ったと思ったら体が溶けだし、別人になった。別人というより、泥で出来た人型の物だ。目と口のところは穴が空いており、そうつが喋ると穴が空いた口が動いている。

そして、声が妙に渋く30代ぐらいの声だ。


「嬢ちゃんかわせよ!」


楓の次にこの場の状況を把握した、ハインケルがジャンプをし、泥の魔物へと大剣を振った。

その攻撃を察した楓は、ハラという魔物に掴まれていた手首を手刀で自分で切り落とし、後ろにジャンプした。


「そんな攻撃、魔王軍幹部にしたら一瞬で殺されるよ? 兄ちゃん」


ハインケルの全力の一撃。Lv300の魔物でも受け止められない一撃……だが、それはハラの右手によって悠々に止められてしまった。それを一瞬で把握したハインケルは頑張って大剣とともにハラから距離を離れようとしたが、大剣は微動だにせず、しかもハインケルの足はハラのスネから出てきた手に捕まえられ、身動きを完全に封じられていた。


「カエデちゃんには悪いけど、この男には死んでもらうか」


ハラの左手がドリルの形になり、それでハインケルをの頭をぶっ刺そうとしたが……


「ほぇ~、俺でも見えないほど速いんだな」


その行動を桃さんが許さず、ハラの懐に潜りドリル型の腕と、ハインケルを掴んでいる腕を切り落とした。その泥はベチャッと音を立て地面に落ちた。

その隙にハインケルはモモと一緒に離脱をした。


「助かったぜ嬢ちゃん! やっぱり借りを作っといて正解だぜ!」


ガハハと笑いながら言うハインケル。


「流石にこの人数相手に俺一人はキツいな~。メラとラメはどこに行ったのやら」


メラ、ラメとはハラの仲間なのか? もしも、こんなに強い奴が2人も来たら、俺たちは負けるんじゃないか?


「「う~ん。お兄さん、すんごい弱いけど、何でここにいるの?」」


俺の後から聞こえた二重の女の声。俺は咄嗟に後ろを振り向いたらもう、楓と小豆先輩と桃さんが2人の女の子の目の前に居た。

楓はさっき手首を切り落としていたが、もう治っていた。


「おー、丁度よく来たなー。ハラとメラはそいつらを相手してくれ、俺は勇者さんを相手にしようかな?」


そして、無言で始まった戦闘。打撃音と、風を切る音が聞こえ始めた。

俺は真っ先に思った、もう逃げようと。

俺はここに居ても何の戦力にならない。

俺は迷わず走った。


「「あのお兄さん逃げてるー! じゃあ、今がチャンスだね」」


何故か逃げた先には楓たちが戦っているはずの魔王軍幹部と思われる女の子がいた。

目の前にいる奴は誰なんだ? こいつらは複数いるのか? メラとラメという奴の見た目は瓜二つ。どちらもピンクの顔に、ロールヘアーのツインテール。どちらもS級美女、戦力もS級だろう。

しかも、こいつらと同一人物と今、楓達は戦っているし、アーク達もハラと戦っているだろう。俺は死を確信した。


「「じゃあね、お兄さん」」


メラとラメは2人の手で作ったハート形からピンクの光線が撃たれた。その、攻撃は愛地には防ぎようがない。

死を覚悟した愛地だが、それを受け止めたやつがいた。


「グハァッ!」


ザイザルだった。ザイザルは攻撃を直に受け止め、お腹に穴が空いってしまった。


「ザイザル! おい! ザイザル!」


ザイザルだった。ザイザルは攻撃を直に受け止め、お腹に穴が空いた。俺は倒れ込んだザイザルの腹から出る血を抑える。


「おいおいおいおいおい! どうやったらこの血が止まるんだよ!」


ザイザルの腹からドバドバと出る血。俺はそれを救って穴に入れるという無駄な行為をする。


「「あらあら、お兄さんのお友達死んじゃうね? お兄さんが逃げようとするからだよ~?」 」


メラとラメから言われた言葉に頭が真っ白になった。ザイザルがこうなったのも俺のせいなのか?


「俺……のせい……?」


「「そうだよ~? お兄さんが変な事するからだよ! 」」


メラとラメの正論に俺は必死に抵抗する。


「いや違う。俺のせいじゃない。ザイザルが出てきたからいけないんだ……いや、俺のせいなのか? いや違う違う違う違う違う!」


そして、そんな絶望の中、俺の背後からハラの声がする。


「メラ、ラメ~こっちは終わったぞー」


終わったとはなんの事だ? まさか……!?


「嘘……だろ?」


俺はアーク達とハラが戦っていた場所を見ると、アーク達が血を流しながら倒れていた。


「兄ちゃんのお陰で注意が逸れて倒せたわ。あんがとさん」


「また……俺のせい?」


また、俺が……! また、俺のせいなのか? 俺が弱いから! 俺がもっと強ければ! だが、まだ楓達がいる! 俺は希望を込めて楓達の方向を向く……


「腕が……!」


俺が楓達の方を振り向いた瞬間、小豆先輩の声が聞こえた。小豆先輩の体はボロボロで片腕が無くなっており、左脇腹の肉が裂けている。それでも、メラとラメと戦っている小豆先輩。


「桃ちゃんを早く治療をして!」


よく見たら後ろで桃さんが血を流して倒れている。それを守る形で楓たちが戦っている。

俺は……桃さんを守るって誓ったのに!

俺が弱いせいで!


「兄ちゃん、もう壊れ始めてるぞ? ダメだこりゃ、やり過ぎたな」


壊れている? 俺は壊れていない。ザイザルが死んで、アーク達が死んで、桃さんも死んで……いや、まだ死んでいない。だから、俺が助けるんだ!


「ファイア……! ファイア……! ファイア……!」


早く! あの超威力の魔法出てくれよ! 早く! 今まで通りに殺してくれよ!


「「本当だ〜、超絶初級魔法を連射してるなんて……ぷぷぷっ!」」


何を笑っている? 俺はこいつらを殺すんだよ!


「もう、このお兄さん必要ないよね?」


「ああ、必要ない。殺していいぞ」


俺を殺す? ダメだ! 逃げないと! だけど……足に力が入らない……いや、逃げてどうするんだ? もう、さっきまでの幸せは戻ってこない。この世界を甘く見すぎていた。

もう……ここで死ねば楽かな?


『緊急生存手段。スキル『制御(リミッター)』を解除します。3分以内にまた『制御(リミッター)』を発動しなければ、強制的に体の機能を停止します。気をつけてください』


また、頭の中で声がする。周りの時間の流れが遅くなった。何を解除するのか分からないが、どうせ状況は同じだ。


『時間の流れを元に戻します。3……2……1……』


時の流れが戻った。それと同時に心臓がドクン! と大きく跳ね上がった。


「「じゃあね、お兄さん?」」


メラとラメが魔法を撃とうとしている。

だが、俺は妙に冷静だった。さっきまで取り乱していた俺とは全くの別人の様だ。

力が体の底から湧いてくる。


「ファイアァァァァァ!」


鳴り響く轟音。あの時程ではないが圧倒的な威力。だが、これは運で撃ったやつとは違う。俺の実力で撃ったものだ! 何故か今の俺は力に満ち溢れている。そのお陰でメラとラメを殺せた!

今までの俺とは違う! これで皆が……助かるんだ!


「おーー! 兄ちゃんそんな力隠し持ってたのか! こりゃ俺も危ねぇな」


俺はゆっくりと立ち上がり、背後に呑気に喋っている、ハラの方へ向いた。何故か、心が晴れた。全てが、俺より下に見える! 俺は強い! 強いんだ!


「危ないどころの話じゃない。何故ならお前が今ここで死ぬからな!」


俺はそう言いハラに向かって右腕でハラの顔に向かってパンチをした。


「うほーーー! 普通の奴なら死んでたぜ! まぁ、俺は泥だから死なないけどな!」


俺のパンチの威力は絶大な威力だった。思い切り殴ったらパンチの風圧で、ハラの顔面と後ろの瓦礫を全て壊すほどだ。

だが、顔面が壊れたハラは死なない。何故ならば全身が泥だからだ。破壊した顔がみるみるうちに回復した。


「「ハラー大丈夫? 助けてあげようか?」」


楓達と戦っているメラとラメがハラに向かって話しかけた。


「大丈夫だ。俺一人で倒せる」


「1人で倒せる? 今の俺を? 無理だ」


俺はまたハラに、パンチをした。今度は何十発も。


「無理? 俺は無限に再生できる。しかも、お前には技と駆け引きがない。ただただ殴っているだけだ」


「技と駆け引き? そんなのいらない。力があれば勝てるんだ!」


俺はそう言い、再生をしているハラに向かってこう叫んだ。


「ファイアーーー!」


また、あの威力。周りの瓦礫を全て壊し地面をえぐった。


「ははははは! これが俺の力だ! これで皆が幸せになれるんだ!」


「いやいやいや、兄ちゃん落ち着いて考えてみろよ、お前の言葉全部、真反対のこと言ってるぞ?」


また、ハラの泥が周りから集まり人型の形になっていく。

そんな事はどうでもいい。真反対の事をいっている? 俺の言葉は全て正しい。


「弱者は黙れ! ファイア!」


また、炎が全てを飲むこむ。


「だから兄ちゃん。その魔法撃つのやめろって」


「弱者はよく吠えるな! ファイア! ファイア! ファイア!」


「まぁ、俺たちにとっちゃありがたいけど、兄ちゃん周り見てみ、こりゃどれくらい人が死んだんだろうな?」


「人が死んだ? 何のことを言っているんだ?」


「兄ちゃん目の前の事を見すぎだよ、ほら周り見てみ」


「周り? 周りって……」


俺は周辺を見渡した。そこには何も無かった。ザイザルも、楓達も、アーク達も全員、いなくなっていた。


「楓達はどこに行ったんだ!?」


「カエデちゃん達は無事だ。メラと、ハラがどこかに移動させた。でも兄ちゃん、お前は一般人をどれくらい殺したと思っている?」


「一般人をどれくらい、殺した? 何を言ってるんだ!?」


「ここは王都の中心部。まだ、避難できてない者もいたはずだ。その者達は君の魔法で死んだよ。最低でも2万人は死んでるな」


ハラは頭をポリポリかいて、深いため息を吐きながら言った。


「嘘だ! そう言って俺を惑わすつもりだろ! 俺はそんなのに惑わされない!」


俺は必死に抵抗した。現実を見るのが怖かったからだ。


「まぁ、本当の事なんだけど、いい時間稼ぎにはなったかな?」


ハラは腕を俺の方へ向きこう言った。


「泥魔法『泥沼(どろぬま)』」


ハラが魔法を唱えると俺の足元が泥になった。


「泥? これで俺が身動きが出来ないとでも?」


俺は普通に泥沼を歩いた。今の俺は異常だ。こんな魔法ごときに身動きとれなくなる俺じゃない。

俺は泥沼を走りハラに攻撃すべく、また魔法を唱えた。


「ファイア!」


炎は泥沼を蒸発させるかと思ったが、蒸発出来ず、さっきまでの破壊力が無くなってしまった。


「泥魔法『泥の刃』!」


ハラはその体を生かし、泥沼を中を移動し俺の背後に周り泥で斬撃の様な形のものを飛ばしてきた。だが、今俺はあれぐらいの技ならパンチでも打ち消せる。


「グアッ!」


打ち消せなかった。パンチで打ち消す寸前体が云う事をきいてくれない。

今もだ、何故か立っているのも限界なくらい疲労が溜まっている。


「やっぱり、兄ちゃんの急なパワーアップに体がついていけなくなってるじゃねぇか」


「うる……さい! 俺はまだ、動ける!」


嘘だ。もう、体が動かない。さっきまで、動いていたのに! 動け! 動け! 動け! 俺はこいつを殺すんだ! 殺すんだ! そして! 楓達を! 助けるんだ!


「この好機を逃すほど俺は馬鹿じゃないんでね。スキル『好機』、『最強の一撃』、『腕力強化』発動」


そしてハラは、腕を空に向けた。


「泥究極物理魔法『泥巨人の怒槌』!」


周りの泥沼がハラに吸収され、ハラの右腕がどんどんでかくなっていった。そして、全長20m右腕が愛地に振り下ろされた。

しかも、それと同時に愛地が力を発揮できる時間3分が過ぎてしまった。

愛地は全身に力がはいらなくなり、地面に倒れてしまった。それを見たハラは躊躇もせず、腕を振り下ろした。

投稿遅れてすいません。それとこれから投稿頻度が遅れます。他の小説を投稿したいからです。

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