魔王との対面。そして右ストレート
僕は緊張しながら政務室という所に入って行った。
ワンディールさんの後に続いて中に入った瞬間、僕は動けなくなった。こ、これは!? ワンディールさんに威圧された時に似ている。ワンディールさんの時よりかは楽だが、それでも体を動かす事が出来ない……これはいったい?
「おいおい、いきなりな挨拶だな〜、ヘルガー。小僧が固まってるじゃねえか」
そう言いながらも笑っているワンディールさん。じゃあ、この威圧を放っているのは、魔王か。
「ふん。ワンディールが誰を連れきたと思えば、忌々しきハヤテの子孫だとはな。しかも、ハヤテに比べてかなりの貧弱っぷりではないか」
会って早々かなりの駄目出し……ちょっとショックだったけど諦めて開きなおろう。そして声の聞こえた方を見てみるとそこには、銀の短髪で吸い込まれそうなほど綺麗な紅い目をしている男性がいた。この人が魔王なのか? なぜ疑問系なのかって? それはこの男性の顔色が物凄く悪いからだ! 血なんて通ってないんじゃ無いかと言うくらい顔は白く、唇は青紫色をしていた。
「おまえ、また血を飲んで無いだろ? そんな事ばかりしてると死んでしまうぞ?」
今までと違ってとても神妙に呟くワンディールさん。やっぱりこの人が魔王ヘルガーさんなのか。
「ふん。もう500年以上生きて今更長生きしようとは思わん。やりたい事は大方やったし、この国も後を託せる部下も出来た。もともと病に侵された身だ。自分の死期ぐらいわかっておる。唯一の名残りはあいつを託すことができるものがいなかったという事か」
「はぁ、そんな事ばかり言っていると嬢ちゃん悲しむぞ」
「ふん! そんなことより、そんなとこで突っ立てないで入ってきたらどうだ?」
いろいろと訳ありみたいだが、取り敢えずは挨拶をしておこう。
「初めまして。僕の名前はエルと言います。110年前にあなたと戦ったハヤテ・シュバルツの子孫になります。よろしくお願いします」
「ああ、俺の名前はヘルガー。ヘルガー・クラシウスだ。種族はヴァンパイア族でその中でも頂点に立つヴァンパイアロードになる」
ヴァンパイアロード……伝説上の魔族じゃないか。
「ふむ、確かにあいつの面影があるな。だが似ているのは見た目と、魔力の質だけだな。覇気も、魔力量も経験も気持ちも何もかも足りない」
さすがに言われ過ぎてイラってきた。
「ハヤテ・シュバルツはそんなに凄かったのですか?あなたとワンディールさんが2人で挑んでも引き分けるくらい」
そう言った瞬間部屋の空気が変わった。2人を見てみるとワンディールさんは天を仰いでいて、ヘルガーさんは真剣な目でこちらを見ていた。
「ああ、あいつは凄かった。元々は戦争など無い国から召喚されたらしいが、生き残るために色々なことを吸収していった。あいつの目的はただ一つ、元の世界に帰ることだったからだ。その為に生き残る執念が奴にはあった。まあ、元の世界に帰る方法が見つからずにこの世界に骨を埋める事となったがな」
その話を聞いて、僕はハヤテ・シュバルツの遺言を思い出した。わざわざ遺言で王族と子孫に向けてあの言葉を残したのは……
「じゃあ、ハヤテ・シュバルツが最後に残した言葉は」
「たしか『二度と勇者召喚をしないで欲しい』だったか? それはそうだろう。二度と元の世界に戻れない苦痛を一番知っているのはハヤテ自身だからな。他のものには味合わせたくなかったのだろう。まあ、そんなこともわからずに懲りずに勇者召喚を行っているがな」
僕達はハヤテ・シュバルツについて何も分かっていなかった。ただ、魔族を退けた英雄としてでしか見ていなかった。その裏にとてつもない苦悩があった事なんて分かろうとぜずに……ヘルガーさんの方が子孫の僕よりハヤテのことをわかっている。気が付いたら僕は、手から血が溢れるほど握り締めていた。
「まあまあ、今更小僧にそんな話しても仕方ないじゃねえか。誰が一番悪いって言えば、戦争を起こしていたヘルガーが一番悪いんだし。ヘルガーが戦争をしていなければ、勇者召喚が行われる事も無かったんだからな」
そう言いながらワンディールさんは笑っていた。多分僕の心配をしてくれたんだ。ありがとうございます、ワンディールさん。
「うるさいぞお前! あの時は嫁が亡くなってムシャクシャしてたんだ! 暴れたかったんだよ!」
そう言いながらも笑っているヘルガーさん。なんだか、この部屋に入ってやっと気が抜けた。
「まあ、いいだろう。確かに今更子孫のお前にこんな事言っても仕方が無いしな。で、お前は此処に何をしに来た?」
そう聞かれた僕は、此処に来ることになった理由を話した。正直何度もこの話をするのは、恥ずかしくて屈辱的だけど。
それを聞いていたヘルガーさんは、
「はっはっは! 普通気付くだろ! 何年恋人やっているのだ。何年も騙されおって飛んだ間抜けだな!」
そう言いながら腹を抱えて大声で笑い出した。
途轍もなく腹が立つけど事実だから仕方ない……ここは我慢しよう。怒りに任せて攻撃してもやり返されるのがオチだ。
「それでお前はその勇者と元婚約者を見返したくて、強くなる為にこの国へ来たのか。それならいい方法が一つだけあるぞ」
おっ! 勢いでこの国に来てしまったから、まだ何も考えていなかったが、ヘルガーさんには何かいい提案があるらしい。
「そ、それは何ですか!?」
「それはだな」
「はい!」
「魔王になる事だ」
「……はい?」
何言ってるんだこの人は?ちゃんと言葉を喋ってくれないと困るぞ。
「あの、もう一度伺っても?」
「ああ、もう一度言うからちゃんと聞いておけ。お前が奴等を見返す方法はな」
「その方法は?」
「魔王になる事だ」
「……えええっ!」
やっぱり聞き間違えじゃ無かった!
「もちろん、それ相応の覚悟をしてもらう事になる。もしかしたら死ぬかもしれんしな。まあ、今日はもう夜も遅い。今日は休むがいい。明日詳しく話そう」
そう言ったヘルガーさんはローナさんを呼んだ。直ぐにローナさんは入ってきてヘルガーさんと話していたが、後でワンディールさんに聞いた話だかこの時の2人の顔はとても悪い顔をしていたらしい……
「畏まりました。ではエルさん今日泊まっていただくお部屋にご案内致します」
そう言って部屋を出て行くローナさんに僕は付いて行った。
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「まさかお前があいつに魔王を進めるとはな。それほど気に入ったか?」
「ふん。ただハヤテの面影が有るだけだ。まだ俺の印象はパッと出に婚約者を取られた貧弱な男にしか見えん」
「だが、あいつの血を引いているなら試練次第では化けるかもな。嬢ちゃんを託せるほどに」
「……ふん」
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政務室を出てから数分ほどローナさんの後ろを付いて行った。するとローナさんが立ち止まり
「エルさんは今日ここで休んで頂きます。では失礼します」
そう言ってローナさんはとんでもないスピードで去っていった。何なんだ?まあ、休んでいいと言われたんだから休むか。今日は色々な事があり過ぎて疲れたし。
「失礼しま……」
部屋に入って見た光景に僕は固まってしまった。
何故なら部屋に入ったらとても綺麗な女性が下着姿で立っていたのだから。
水色に近い青の長い髪で胸もそこそこ大きく、スレンダーな女性だった。僕は言葉を失いつい見惚れてしまった。
「さ…で」
「えっ?」
「さっさと!」
そう言いながら女性は
「出て行け〜〜!」
右ストレートをかましてきた。僕はそれを避ける暇もなく左頬にくらって、廊下の反対側の壁まで飛んで行った。
壁に思いっきり頭をぶつけた僕はそのまま頭と左頬に痛みを感じながらも気を失ってしまった……
こうして、とんでもない事がいろいろと起きた1日が終わりを告げた。
やっとヒロインが出てきました!
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「転生少年の成長記 〜努力すればするほど強くなれる⁉︎〜」




