近接軍団長
武器や防具を選ぶのも無事に終わり、町での準備も滞りなく終えることができたけど、マリンティアさんは魔族から、ミルさんは獣人族に大人気だったね。僕も他種族の男の人たちから大人気だったよ。みんなに囲まれて大変だった。マリンティアさんが止めてくれなければ大惨事になっていたよ。
今はみんなで城に帰ってきた。街を見て回ったけどとても凄かった。グランディーク王国では魔族以外の他種族を認めてはいるけど、積極的には関わってはいない。領地によっては人族以外立ち入り禁止だったりもするから。シュバルツ家の領地はそんな事ないんだけど。
この国のように、魔族と獣人族が一緒に買い物をしたり、他種族同士で恋愛をしたり、色々な種族の子供たちが楽しそうに遊びまわったりと、どの国もこの国のように代わっていけば戦争も無くなるんじゃないかと思ったりするけど、そんなに甘くはないかな……
そんな事を考えていると、マリンティアさんがこんな事を言い出した。
「そういえば、この後は時間もあるし武器の確認でもする? 明日からの出発でいきなり新しい武器を使用するのも嫌でしょ? 性能は知っているとしても」
確かにそうだ。何も知らずに使うよりかは、確認してからの方がいいね。
「うん、そうだね。僕は賛成だよ。ミルさんは?」
「私も大丈夫」
「じゃあ練習場に行きましょ。ここの地下にあるんだけど、あそこなら少し派手にしても大丈夫だし」
そう言いながら歩き出すマリンティアさんに僕とミルさんはついて行く。
歩く事10分ほど。地下の練習場にやってきた。練習場ではここの兵士の人たちが訓練をしている。やっぱり兵士たちも色々な種族が混ざっている。
「これはマリアの嬢ちゃん。どうしたんだ?」
そこにかなり大柄な男性が話しかけてきた。身長は2メートル程でかなりな筋肉質な獣人族だ。
「あ、レーバンさん。少しここで練習したいんだけど良いかな?」
「ああ、別に構わねえが、使うのはマリアの嬢ちゃんとミルの嬢ちゃんと小僧か?」
「うん、そうだよ。あ、エルにも紹介しておくね。この人はこの魔国ベルヘイムの近接軍団長のレーバンさん。獅子族の獣人でこの国でもお父様が認めるほどの実力の持ち主なの」
そう紹介してくれたマリンティアさん。確かに雰囲気がワンディールさんやヘルガーさんに近いものがある。
「初めまして、エルと申します。よろしくお願いします」
「おう、俺の名前はレーバンだ。小僧が昨日から騒がれている男か。何でもマリアの嬢ちゃんの婚約者とか」
「な! まだ決まったわけじゃないわよ! 勘違いしないで!」
慌て出すマリンティアさん。顔を真っ赤にして可愛い。
「そう、エルは私のもの」
そう言って引っ付いてくるミルさん。いやいや、そんな事をいう雰囲気じゃ無いでしょ!
「はっは! モテモテじゃねえか小僧。確かにミルの嬢ちゃんに匂いつけられてるな」
獣人族にはわかるらしい。
「一つ聞いてもよろしいですか?」
「おう、何だ?」
「この国の軍の隊長って魔族じゃなくてもなれるんですか?」
「ああ、軍だけでなく、どんな役職でも才能があれば誰でも、どの種族でもつく事ができる。俺もこの国に来るまでは、他種族の事を認めていなかったんだが、中々面白いものだ。
人族は能力は平均的だが、他の種族に思いつかないような発想や応用力で他種族に追いついてくる。俺も含む獣人族は、身体能力は他種族よりも高い。亜人族は数は少ないが長命で才能豊かな人たちが多い。魔族は他種族には無い進化という概念があるから成長する時はかなりの高みに上ってくるしな」
この国は、かなりの実力主義なんだね。しかしレーバンさんの話を聞いてみるとまさにその通りだと思う。
「で、何でこの練習場を使うんだ?」
「明日からの旅で武器を新調したのよ。その新しい武器の確認ね」
「なるほどな。なら俺が確認してやろうか?」
なんと、レーバンさん本人が相手をしてくれるとの事。
「いいの? 他の人たちを見なくて。今訓練中なんでしょ?」
「なぁに、あいつらには課題をすでに与えて、自主練に入っているからな。俺ももう直ぐ上がろうとしていたところだし大丈夫だ」
そう言って自分の武器を取りに行くレーバンさん。
「マリンティアさん。レーバンさんの実力ってヘルガーさんが認めるほどって言っていたけど、どれぐらい強いの?」
「私も直接見たわけじゃ無いんだけど、お父様と殴り合いが出来るくらいってワンさんが言っていたわ」
えっ? そんなに強いの? 僕としては有り難いんだけど明日大丈夫かな?
そこにレーバンさんが戻ってきた。手には武器は持っていなかったけど、籠手をつけていた。
「俺は肉弾戦が得意でね。これが武器なんだわ」
そう言って拳を突き出すレーバンさん。籠手をつけただけで、先ほどの親しみやすさが無くなり、かなりの威圧感を放っている。
「よし。3人同時にかかって来い。お前たちの実力を確認してやろう」
ニヤッと笑うレーバンさん。その顔に背筋がゾクッとしたのは気のせいじゃ無いだろう。
こうして僕たち3人はレーバンさんと戦う事になった。
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