蝶
あのね、私はきっと……
気持ちの伝え方が、わからないのよ。
ふわふわする温かな気持ちも、泣きたくなるような悲しい気持ちも、伝えようとしてわからなくなるの。
『あ、あのね。』
『どうした?ゆっくりでいーぞー。』
貴方はそう言っていつも、待ってくれる。
言えなくて、困ってしまう私の伝えたい“気持ち”を考えてくれるの。
でも、今日は、ちゃんと伝えたいの。
『どうしたんだ?
言葉じゃなくて、行動で伝えてもいいぞ~。なんて、なっ……』
私は、貴方に抱きついた。
やっぱり、言葉にはできなかった。
『ちょっ……。な、なにしてっ……!?』
顔が、熱い。
見られたく、ない。
はずかし……い。
でも、伝えなきゃっ。
『わ……たし…す……き。』
恥ずかしくて、貴方の胸に顔を埋めた。
『っ!あぁーもうっ!やめてくれよっ……!』
やっぱり……
フラれちゃうの、かな。
貴方の顔を見上げたの。
『秋?か……ぜ……?』
『だぁぁぁ!!ちがう!』
そう言って、貴方は私を強く抱き締めてくれたの。
『そんな、かわいいことしないでくれよ……』
『か……わいく……ない、もん』
思わず、両手で顔を隠した。
『なぁ、若。
俺、ずっと前から、若のこと大っ好きだっんたんだけど。
全然、気づいてなかったの?
俺、すげー悲しい。』
『え……?』
『若、手どけて?』
顔から手をどけると、頬にキスされた。
秋にキスされたところを手で押さえて、固まってしまったの。
は、はずかし。
『これからは、ちゃんと伝えるね』
そう言って、秋はまた、強く抱き締めてくれた。