騎士の心得
最近はオタサーの姫というのがはやっているらしいがポジティブな感情表現が苦手な恵さんにはまったく関係の無い話だった。
ファッションもゴシックメードな物が好き。
たまによってくるのは踏んでくれなじってくれ頼むという不思議な趣味の持ち主ばかり、嫌になってしまう。と彼女は言っていた。
罵倒すると喜んで去っていくのだからこれまたたまらないと彼女は言う。確かにぞっとする。
悪の組織の性格の悪い女幹部に仕える部下たちは絶対こういう連中だ、間違いない。
でも最近は性格がいいことも多いんだっけ、特撮だと? そうだ、たぶん。
ともかく、恵さんは女幹部である。部長を務めてるから女ボスかもしれないが、それはなんか語呂が悪いので女幹部である。
そして、うちの姫はどちらかというとこももであろう、天性のサド気質があるのは同じだが、人を魅せつけるフェロモンをもっているし、何よりか弱くて乙女らしい格好をしている。守ってあげたくなるタイプってやつだろうか。
そしてうちの仕事は正義の味方をしばく事である。
世の中自分の自己主張こそが正しいと正義面している人間が多い。
そいつらにケツバットしてまわるのがサークルというか組織の活動だ。
戦闘員たちはバットを持った黒服で、姫たちが戦いを始めると適当にバットのキレを見せ付けに行き、アピールを開始する。それゆえ沈棒騎士とか叩かれた奴は言っていた。
そして僕はその騎士の一員らしい。
ならばそれらしい格好を整えねばなるまい。
全身タイツと目だし棒でよかろうか?
お、さっそく姫からお呼び出しだ。
と思ったら警官から呼び止められたぞ。職質だ。
ショックだ。
最近の戦闘員は衣装も凝っているということでうちの組織らしいカラーで攻めることにした。
SMで攻められる側のおじさんスタイルだ。
荒縄とろうでコーディネート、本格的にラバーとマウスキャップもつけてみた。
これなら安心だろう。
職質だ。
ショックだ。
こうなれば騎士スタイルだ。
チェインメイルにモーニングスターの実践仕様。
コスプレですか、本格的ですね、とスルーされた、よしいける!
だが、騎士として参上してモーニングスターでしばくと彼らは物言わなくなった。
埋めよう。
埋めよう。
明けの明星までに。
んんん、やはり暴言はいけないか、紳士としては穏やかな会話で相手を納得させねばなるまい。
手始めに心を穏やかにする薬を相手に投与した。
次に心を落ち着ける薬を相手に投与した。
次に相手を幸せな気分にする薬を投与した。
祈り囁き詠唱念じろ
灰になった。
なんか応答がないので次の相手を探すことにした。
そうだ、映画で見たぞ、能を活性化させて有意義な議論をする電波を流せば彼らとも話せるに違いない。
電波、届いた?
相手はいきなり狂ったように性行為について述べだしたので、本能の枷は解けたらしいが、ちょっと方向性が違うのでやめておいた。
あなたはそこにいますか?
ミートパイになっていたのでやめた。
私は蝶になった夢を……
今が現実である保証がないのでやめた。
虎だ、私は虎に……
児童施設に寄付するにもタイガーマスクするほどの可愛いものがない。
俺がガンダムだ
俺はガンダムになれない
俺が俺たちがガンダムだ
ガンダム……
俺たちは分かり合うことができた
イッツタイムナーウ
騎士が生まれて、東京が死んだ
うーん、どうすれば立派な騎士になれるのかな?
騎士というのはマナーが作るんだ。
生まれや育ちは関係ない。
そうハリーは言っていたけど、高潔な精神を保ち続ければ僕も騎士、いや王子になれるのかな……
鏡の前でそっとポーズをつけてみる。
プロデューサーさんは笑顔ですって言ってくれたけど、私何にもない、笑顔なんて誰でもできるよぅ……
でも進んでみなくちゃ、先のことは誰にもわからないんだ、少なくともこの道には一人じゃない。
姫たちがいる。
ならば……進んでみようと思う。
何もやることなく突っ伏すなんて嫌だもの、頑張ります!
騎士の心得ひとーつ!
何事も実現が可能であるならば諦めない!
騎士の心得ふたーつ!
常に鍛錬すべし!
ですよね!
島村弥生がんばります!