表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

来たる!コスプレイヤー 前編

他の作者様みたいに速く書きたいものです。

私、遅筆すぎて。。。

※'15/05/28 一部会話文の閉じ括弧前に句読点を書いてましたので、除去致しました。

 出会いなんて突然来る。現在読み終わりかけの『愛されたい系女子の憂鬱』で書かれていた。たしかに突然来た。


「ふむ。私も博識な部類であると自負しておりましたが、やはり何が書かれているのか理解できませんね。お美しい方は分かるのでしょうか?」


 私も博識な部類。自負しておりました。


「これはこれは私としたことが。自己紹介がまだでしたね。私はニューロ・エステバリス帝国が第二皇子、レイト・クルツ・シュワイツァーと申します」


 言動が(いちじる)しくアレだったのでソッチに気を取られていたけれど、服装がコスプレだった。

 中世ヨーロッパの貴族が好き好んで着ていたような、粧飾(しょうしょく)過多の軍服のような、とにかくコスプレっぽい。

 この人は普段から妄想の世界を()で行っているのだろう。俗に『痛い』と言われなくもない人種だ。なんと素敵な人生を送っているのだろうか。(うらや)ましい 。


「私がこちらの世界に来た目的は賢者を探し出し、可能なら連れ帰ることなのです。現在私の国は戦争で惨敗しておりまして、情勢を(くつがえ)すために超位魔法を使用し、賢者を召喚することにしたのです」


 賢者。戦争。召喚。超位魔法。

 魔法と来ましたか。そうですか。素晴らしい。私の妄想を掻き立てるキーワードを熟知している。

 それにしてもなかなか設定が細かそうな妄想なので、少し話を掘り進めてみよう。


「えっと。お探しの本はファンタジー小説で出来れば戦記物がよろしいということですか?」

「おぉ! あ、これは失礼しました。いや、私一人で話していたのでもしかすると言葉が通じていないのではと心配になっておりました。して、そのファンタジーなんたらとはなんなのでしょうか?」


 読めてきた。これはアレね。超位魔法という凄い魔法で世界を飛び越えてきて、不思議な力で双方の言語が翻訳されているのね。いいなぁーいいなぁー。

 少し興奮してきた。

 それにしてもこの人の胆力は素晴らしい。どこまでも設定に忠実に沿って話してくる。


「賢者を探してるんでしたね。でしたらこちらの『魔法が使えない伝説の賢者』なんてどうでしょうか? 魔法が使えない理由が起承転結の起で明かされるのですが、なかなか深い設定で楽しめる作品ですよ」

「賢者の物語を探しているのではなく、賢者を探しているのです。賢者とは多くの書物を読み、世界の(ことわり)を変えてしまえる存在と聞いています」


 このままではどこまでも平行線を辿るのは明白だろう。素敵な妄想力の持ち主だが会話が成り立たない。

 そろそろ相手をするのも疲れてきたので、私は今日買って帰ろうとしていた本たちを精算するために年季の入ったレジを操作する。


「お美しい方。その書物はアナタが一人で読まれるのですか?」

「そうですけど」


――チーン


「全て読むのですか?」

「そうですけど」


――チーン


「ここにある書物、全て理解出来るのですか?」

「そうですね」


――チーン


「ではアナタが賢者なのですね?」

「違いますね」


――チーン


「チッ」


 私の聞き間違いでなければ、このコスプレをしている素敵な人。舌打ちしたよね?


――チーン


「今、舌打ちしました?」


――ガッシャーン


「これで元の世界に帰れると思ったのに、そんなに素早く否定されては舌打ちだってしてしまいますよ!」


――ガッチャン


 なんで私が悪いみたいな空気になってるのだろう。


「私は一刻も早く賢者を探し出し、国へ帰らねばならないのです! そして、魔力(マナ)が一際高いこの場所で、自然と漏れ出る魔力(マナ)を極限まで押さえ込んでいるアナタを見つけたのです! これはもう賢者ですよ! だから私は国へ帰れると喜んだ矢先に素早く否定を受けたのです! 舌打ちしたくなるのが人族(ヒュムノス)というものでしょう! 国へ帰れば私は救国の英雄(フェリウス)となれるのです! あなたも召喚に応じた賢者(レクティノア)として歴史に名を刻むことができるのです!」


 完全にヒートアップしてしまった。これでは鎮火するために相当な労力が必要となるだろう。それに何を言ってるのか既に分からないです。


「分かりました。分かりましたから落ち着いて下さい。もう賢者でいいですから……。それで私はお客さんとニューなんとか帝国へと行って何をすればいいのですか?」

「ニューロ・エステバリス帝国です! はぁー。気持ちを汲んでいただき感謝します。では詳しく説明させてもらいます。帝国は現在滅亡の危機に瀕しております。そこで第三十六代帝王であらせられる私の父君は禁呪『勇者召喚(ノルド・デボア)』を行使することを決意されたのです。ですので是非とも私と共に今すぐ帝国へ来て頂き、帝国を救って頂きたいのです」


 賢者を呼ぶ必要がある帝国という段階で厄介な話だとは思ってたけど、結局どう大変なのかが見えてこない。これは突っ込んで聞いたほうがいいのだろうか……。


「えぇーと……。滅亡の危機なのは分かりましたけど、なんで滅亡の危機にまで事態は進んでしまったんですか? 私には三十六代も続いた国がそう簡単に潰れそうになることなんて思い付かなくて……。仮に国土を拡げようと考えて、他国に侵攻をするのなら猛烈にバッシングを受けるかもだけど……」


 その他にも帝国が強大すぎて他国が連合軍を組んだとか、帝国内で圧政に強いられた国民が暴徒化。貴族が裏工作して現帝王を退かせる。軍を強化することだけを考えたせいで食糧危機に陥ったなどが思いつくかな……。と言っても本で読んだだけの知識だから実際に起こるとどうなるかは分からないなー。


「そうですね。まずは始まりから話すべきでしたね。私がいる帝国は世界一の軍事大国ではあったのですが、現帝王は更に力を強大な物にしようと動きました。新たな兵を取り込むために周辺他国へ侵略を開始し、瞬く間に国土を拡げました。そして軍備を補充するために税を厳しくしたのです。そこで終わればまだ良かったのですが、帝王は各貴族の私兵さえも国軍へと徴兵し、軍資金という名目で財産を献上させました。軍事に資金を費やしたせいで帝国の食料事情は日に日に悪化する一方です。これによって平民の中でも低位のものからは餓死者が出ているのです。このままでは他国が連合を組み、帝国内では貴族らが一斉蜂起し、帝国民は痺れを切らし他国へ流出していくのは必至でしょう。この事態になり、帝王は自らの執り行った(まつりごと)が間違っていることに気付きました。そして、自らの命と引き換えに『勇者召喚(ノルド・デボア)』を行使したのです。我が父、ゲルト・アイン・シュワイツァーは間違いなく歴史上で愚帝と称されるでしょうね。ですが、帝国を誰よりも愛していたのです。愛する帝国の未来のために、自らが執り行った愚かな政を正すために命を賭したのです。私は父の想いを無駄にしたくない。どうか、私と共に来て頂き帝国を救って欲しいのです」


 うん。話長くて途中から脳が拒絶してた。

 この目の前で西洋の騎士が忠誠を誓うかのような膝立ち礼拝ポーズのコスプレイヤーは一々設定が細かすぎる。そして、清々しいまでにロールプレイヤーだ。

 それに私が想像した事態が全て現在進行形で発生しているみたい。

 要するにこんな(さび)れた本屋で一日中読書を(たしな)む女を見つけて『物語』の世界を変化させるためのカンフル剤にしたかったのかな?

 そんな気がするなー。でもこんなに酷い設定にしなくても良かったんじゃないかな? 内政物の中でも中々難易度の高い設定だよね? でもありがちと言えばありがちかな? どうやってこの窮地を脱するのかをハラハラドキドキと見守る。内政物。

 今日はもう仕事上がりだし、家に帰っても買い取った本を読むだけだから『物語』に付き合ってもいいかな。


「んー、少しだけですよ? ほんとに少しだけならその『物語』を完結させるために手伝います」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ