四話 悪魔の力
「なぁ、一部の魔術師とはどういうことだ?」
「マフィアとか、ヤクザとかみたいな連中だろう。兄さんを捕まえて手柄にしようとしているんだろう。」
凪は、考え込んだ。(いったいどこでばれたんだ…?)と。
「よく分からないけど、兄さんに昔渡した小型レーダーには、魔力の反応が出ている。しかもそこそこのやつらだ。」
凪は携帯を閉じ、記憶をたどりはじめたが、翼によってその思考は阻まれた。
「凪さん?いったいどうしたんですか?」
「俺達の動きが嗅ぎ付けられた。昨日のことがあるからな、一躍有名人になった訳だからしかたない…しかたないが…」
「どうせ、どうしてばれたんだ?とか考えているんでしょう?簡単な話ですよ。今何時です?」
凪は、余計にわからなくなってしまっていて、戸惑っていた。すると九佐瑠が、
「12時10分だが??」
「と言うことですよ、凪さん。」
ようやく物事を理解した凪は、
「しくじったな…あまりにも速すぎたな。」
やっぱり何も分かっていない慎吾が訪ねてきた。
「?何でここがばれたんだ?」
「簡単なことだ。俺の予定では、那日の家に12時に着く予定だったか、ちょっと先を急ぎすぎてしまって、俺の力が漏れでてきたんだろう。それを察知された、と言うことだ。」
今回は理解出来たのか、慎吾は成る程!という顔をした。
「九佐瑠さん。ここに結界をはって貰えませんか?力が外に広がらないように。これは俺のミスなんで俺が処理します。」
九佐瑠はすぐに周りにいた忍者達に首で合図をした。
「武を極める者でもちゃんとした結界くらいは張れるから安心しろ!」
「ありがとうございます。慎吾?翼?お前達は、九佐瑠さんと一緒に行動しろ。九佐瑠さん?そいつらを屋敷で見てやってください。どうも俺にはそういうことは向いてなくて。」
慎吾は不満げな顔で凪に言い返した。
「俺もやる。お前一人にはやらせない。その為に来たんだ。」
「駄目だ。これは俺のミスだ。俺が処理して当然だ。あと今のお前達では俺の足を引っ張る場面が出てくるかもしれない。だから九佐瑠に少しだが鍛えてもらえ。」
「で、でも!…」
「那日のデーターでは、装置にたどり着く為には、最低二人の幹部と戦う必要があるらしい。」
慎吾は自信のこもった顔をして、
「一人は俺に任せろ!!」
凪は退屈していた。1時間たっても敵が来ないからだ。がしかし、その退屈さは一瞬で終わった。
「来たか、」
凪は立ち上がってその時をまった、敵の奇襲を。敵は、凪を囲みながらライフルを構えてやって来た。そしてそのライフルを凪に向けて引き金を引いた。凪は、10人ほどの人間に、蜂の巣にされた。射撃が止まり、煙幕が張れたそこには、全ての弾を体で受け止めた凪がいた。
「ば、化物め、うてぇうてぇ!!」
全ての弾を撃ち終わった者達には、死が待ち構えていた。最初に撃ち終わった者が、撤退しようとした瞬間、
「呀朧」
そいつの頭は地面の中で破砕された。 そして凪は、次から次へと殺って言った。最後のリーダー格の一人以外の全員を殺った。
「化物がぁ!俺達はまだ偵察舞台だからなぁ!ボスが、」
「隠滅流奥義、真剣」
凪は、剣のごとき腕で、相手の胴体を断ち切った。そのときの凪の腕には、斬撃属性が備わっていた。凪の服は返り血で少し黒ずんでいた。そして、休む間もなく次の部隊がやってきた。しかし、そこに来た連中は、あまりにも残酷過ぎる戦いの後を見て凪を襲ってこなかった。すると、
「こ、これはこれは、酷いですねぇ。我々は手出ししません。我らで一番強いのをお連れするので待ってください。」
「問答無用。」
「撤退しろぉ!ボスに報告しろぉ!ここは私が止めます。」
凪は、相手の部隊のリーダーを標的にした。そして、一瞬で懐に潜り込んで、
「呀朧ぅ!」
いつもなら足が捕らえるのは頭だったが、今回は手を捕らえた。いや、手に阻まれた。
「女みたいな顔をしていても、なかなかの力だ。」
「よ、よく話す余裕が、あ、ありま、すねぇ。」
凪は撃ち抜くのをやめて足を引いた。
「お前は武術の人間か?」
「いえ、魔術ですよ。私の魔術は、物を固くすることです。先程は、腕の骨と間接、筋肉を固めて固定しただけです。」
「そうですかぁ!」
凪は、再び腕を剣と化した。
「真剣」
凪の腕は、首から体を切り刻むはずだった。しかし、腕は首で止まっていた。
「固いな。」
「わ、私は、全神経込めて、固く、し、しているんですもんね。」
凪は、再び攻撃をやめた。
「はぁこれを撃ち抜くのをは少々厄介だな。あれを使うかぁ…今のうちに調整しとかないとな。これで5回目か…」
「何を言ってるんです?我々のボスが来ればあなたに勝ち目はありません。」
凪は軽く笑いながら言った。
「お前は大きな間違いないをしている。俺は全くの力を出していない。純粋に力を出すとお前らみたいなやつらが集まってくるからな。だが、そうは言っていられないみたいだ。あえて一番強い力の調整をかねてお前に使ってみることにした。強すぎて誰も集まってこないほどのなぁ。」
そう言って凪は、足を肩幅程に開いて、右手を心臓の高さに当てて力を込めた。すると、一瞬時間が止まったと思わせた刹那、凪の体が変化しはじめた。心臓と、右手から、悪魔のようなオーラを発っした異物が侵食をはじめた。右手は肩まで、心臓はあまり広がらず、中心に目が出来ていた。誰もが何事かと思わせるほどの力だった。凪の右まがまがしい右腕は、目の前にいる相手の心臓を狙った。
「無駄です!!」
がしかし、固くなったはずの体を凪の腕は、いとも簡単に貫いた。
「はっ、あ、あり、えな」
もう死んだはずの体を凪は、喰らった。そして、相手の本隊に殴り込みに行き、ついに残り一人になった。
「御主は、残酷と言う言葉を知らんのか?我輩は、血だらけの戦場を見てきたつもりだったが、まだまだだったようだ。ふぅー、我輩も殺る気か?」
「っう。やっ、やっと正気になれた。悪いな。隠滅流は、出会った敵を全て殺す主義でな。っう」
「その力…使いこなせてないようだな。我輩は攻撃型の魔術師だ。なめるなよ?」
「なめてない。俺は隠滅流現当主、藍澤凪だ。」
「我輩は、ブラックビーツ魔術組幹部、ネルフ。いくぞぉぉ!」
ネルフは、手を振りかぶった。すると、凪に向かって火の弾が飛んでいった。何発も。凪は、それを右腕だけで、その弾を打ち消した。そして、一瞬の隙を付いてネルフの懐に入った。
「真空波」
真空波は、ネルフの体を傷付けることなく、ネルフの息を奪った。凪は、体の侵食をといて、九佐瑠の屋敷に向かった。
「凪。すまないが、力が普通に漏れてしまっていた。一瞬外から敵が来たかと思った。」
「すいません。それは、俺もわかっていました。あと謝罪です。この山を血の海にしてしまった。」
「それも隠滅流の特徴じゃないか。常に自身の何十倍の力でかかれと。」
「そうですね。そう言えば二人は?」
「忍者の100人抜き中だ!あたしは教えるだけ教えたから心配するな!!」
しばらく二人の雑談は続いた。二時間ほどたつと、慎吾と翼が戻ってきた。そして凪は、
「お前達は、ここで休んでろ。いや、修業してろ。俺はもう一人宛のある人物に声をかけにいく。それじゃあ俺は行くからな。九佐瑠さん。明日二人をソウルタワー正面入り口に連れてきてください。時間は正午12時です。」
「はっはっはーぁ!やっぱ面白いやつだ!正面入り口から侵入プラス昼間かよ!了解した。忍者一群は、その辺に隠れさせてもらう。」
凪は頷いて、屋敷をあとにした。そして、次なる味方を確保すべく、凪は錬金術と、武術のまちの境に向かった。