表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

とある少女の定め

作者: 時計台

死ネタ、あります

ご注意ください

「もう、朝だなぁ……」


鳥の鳴く声を聞きながら、暗い檻のなかで私は自嘲気味に笑います

食料どころか水すら貰えないため喉から出た言葉はかすれてしまっています


「あと半日、か」


閉じた目蓋から涙が溢れます



どうして、こうなったんだろう



答えはきっと……



・・・・・


元々、私はただの女子高生だったのです


それが何処か変わってしまったのは桜が青々と葉を繁らせるようになった五月のこと


私が階段を降りていると、後ろから強めの衝撃がはしりました

体制を崩した私は階段から落ち、気がつけばここ……レクタス王国に居たのです


勿論、最初からそれを信じたわけではありませんでした

夢だと思いましたし、そうでなくともドッキリかなにかだと思っていたのです


けれども、夢でもドッキリでもなく

現実だということは変わらないようで


私に求められたのは、よくあるかもしれないこと



"我が国の国妃となってほしい"



どうやら、王の妃とするために私を呼んだようなのです

けれど……



「まあ、お前など邪魔なだけだがな」



義務で呼んでやったのだ、感謝しろ


冷たい目で述べる、王とらしき金髪碧眼の男性の横には

茶髪で、緑の目をした女性が寄り添っていました


私は必要とされていない


否応なしにそんな現実を見せられました



そこから始まった日々というのはろくなものではありませんでした


中世に似ていたこの世界で、知らないことだらけでした



妃教育で、身体中ボロボロになりましたし


マナーを身に付けるためとはいえ、出来ないと食べられず飢えて過ごすこともよくありました


ダンスは踏まない程度の運動神経はありましたが、求められたものが高くなかなか出来ないことばかりでした



けれど、辛かったのはそういうことではなく……


「おい、」



今日も今日で慣れないレッスンに苦戦していれば、後ろから不意にかけられる声



「まだできないのか、

……本当にお前は出来損ないだな」


このくらいのこと、アネッサならばすぐに出来るぞ



王の最愛と比べられる苦痛からしたら他のことなんて辛いと思わないのです




それでもここに留まるのは、行くあてが無いから


ここであればどうであれ、衣食住が揃っているから



けれど、心は軋みををあげていくばかりで

ある日、私は逃げ出したのです



心が壊れたら、出来損ないに成り果てたら処分されてしまうと分かったから


それならば


確実に死へと向かうよりは、僅かな希望にすがりたかったのです



幸い、私の顔を知っているのは限られた少数の人々だけだったため召使いと誤解されて出ることができました


外は、活気に満ちあふれているようで、陰には薄暗い闇がのぞいていました


歩いていれば、スリでもしているのかウロウロとさまよい歩く少年を見つけました



彼に声をかけ連れていかれてしまったのは町の裏のスラム街

そこで一日一日を必死で暮らす人々に会って、


初めて自分から何かをしたいと思ったのです


私が始めたのは、唄でした

唄だけは他に誇れるものであったから


怪訝な顔をしていた人々が、唄を聞いて表情を緩めるのを嬉しく思っていたのです


時には、浚われそうになるみたいな危ない目にもあいましたが未遂で終わりましたし


私は足りないなかで必死で暮らしてきたのです



けれど……


王は私が自由になることを許しませんでした




ある日、私が表の街で買い物をしていると後ろから肩を捕まれました

それは、王宮の騎士達


皆が皆、険しい顔をして私のことを王宮へと連れていきました


王座のまえに投げ出された私はあの冷たい目をする王にあいました

横には最愛の女性が寄り添っていて


告げられたのは、私が国税を浪費し国を傾けかけたという話でした

私は、不味いことをしたのでしょうか?


……いいえ


それは冤罪でした

要らなくなった人形を捨てるだけのこと

それに民の不安を押し付けてしまおうというのです


私は、牢へと入れられました





そう、こうなったのはきっと……


私が王の善意を少しでも信じたいと思ってしまったからでしょう




ポタリ、ポタリとどんなに辛くても出なかった涙がコボレテいきます



あと、半日で私は殺される



・・・・・



「最後に言い残すことはあるか?」


青空のした、眩しい日が暗闇に慣らされていた私の目をやきます


「唄を歌わせてください」


そうして、始まった処刑場での歌唱

最後の、歌唱


選んだのは、郷里の唄

望郷の想いを込めて歌いました


牢の中で幾度も考えたんです

"みんな不幸になってしまえばいい"

……そう思ったんです


でも止めました

この世界で幸せを感じさせてくれた人々もみんなの中に含まれているのだから


だから、私はこの命をもって王

貴方へあらがいましょう



・・・・・


"この世界が今なんかより良い世界になりますように"


・・・・・


後の歴史者は語る


歴史に名を残さぬまま、消えるように命を散らせた一人の少女を


彼女が処刑されてから三年後

悪政に耐えかねた民は蜂起する

そうして、王は民の手によって、処刑へと追い込まれた

王の傍らにいた女性とともに


女性の私室からは数え切れないほどの服や、宝飾品、靴などか見つかった

浪費によって国を傾けたのは彼女だったのだ



少女は誤った選択によって死へと追い込まれた

人々は、少女の無念を忘れぬように石碑を立てた


その石碑に刻まれた言葉からしか少女が居たという証拠が見つからないのだか、そこには民に混じり人々の心を癒したという歌姫の姿が見てとれるという


書きなぐりたかっただけです(´・ω・`)


ハッピーエンドバージョンもありますが

それだって、遠くに逃げるだけ=王に捕まらないですし


読んでいただきありがとうございました(  ̄▽ ̄)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ