第1話 始動
・・・・その男は、ある城の玉座の間に居た
男が腰掛ける椅子には、コレでもかという程の様々な宝石が散りばめられ
その男がいかに高い身分で在るかという事をその場に示している。
また、男がいる玉座の間の壁やガラスにも細やかな細工がなされ
その場にいる者に此処が玉座の間という緊張感を与えていた。
そんな玉座の間の椅子に腰掛ける男もまた
その場に相応しいと言える姿をしていた
まるで闇のように深い漆黒の艶やかな黒髪に
見るもの全てに畏怖を感じさせる血を表す真紅の瞳
その背筋の凍るほどの美貌、恐らく男をこの場で見た者はすべて
この玉座の間は彼の為に作られたのだと断言するだろう
また、玉座に座る男の前には、7人の美しい者達が跪き
他人から見れば、正にソレは一枚の絵画のような
神々しい雰囲気をその場は纏っている・・・
玉座に座る男とその前に跪く者達の間には
何も言葉は無く、このまま静寂は保たれるかのように思えた
・・・・・・・しかし
「っつ!?王っ!如何なされたのですかっ?」
突如、7人の男の内、銀髪の男が声を荒げる
その他の6人も者達も目の前の光景を見て息を呑んだ
玉座に座る男・・・否、王は静かに涙を流していたのだ
何も言葉を発さずに涙を流すその姿は、どこか作り物のように見え
男達は如何する事も出来ず、ただ困惑した表情を見せていた
しかし、そんな王に近寄る男がいた
茶髪の男は王のすぐ傍らに跪き王の目を見る
「リヴァン陛下、如何なされたのですか?
一体何が、彼方のお心を苦しめているのでしょうか?
このラグルスにお教え願えませんか?」
ラグルスと言った男は悲しそうに表情を歪めながらも
王に懇願するように尋ねた・・・しかしリヴァンと呼ばれた王は答えない
首を横に静かに振りながら
ラグルスに“大丈夫だ”とでも言うように緩やかに頷く
ラグルスは王にそう意思表示されれば下るしかなく
7人の下にもと居たとおりに整列する
王・・・リヴァンは無言で7人を眺めながらも
内心は喜びや不安の相容れない二つの感情で胸が一杯だった
彼の涙はこの二つの感情から来ていたのだ
実をいうと彼・・・セルドリア王国の王・・リヴァンは
生粋の日本人、永瀬祐樹である
何故、彼が此処で王をしているのか、ソレはおよそ数分前に遡る・・
・・・・・【数分前】・・・・・
〔永瀬祐樹 視点〕
さて皆さんは仮想現実という物をご存知だろうか
現代においては、特殊な小型機械を使用して脳に接続し
様々なゲームを本当の現実のように体験して遊べるという
便利な娯楽が出来たのである
実をいうと俺、永瀬祐樹はそんな仮想現実を体験できる
ゲームの中のとある一つにとても嵌っているのである。
そのゲームの名は〔クリエイトワールド〕
“ワールド”と名前が付いているものの
そのゲームは簡単に言ってしまえば国作りゲームである
プレイヤーはまず集落とも言えない様な少人数集団を纏める事から始まり
少人数集団を集落・村・町・国といった感じに育ててゆくのだ
しかし国という最終段階にたどり着くまでの苦労は計り知れなかった
育ててゆくと言っても、その道は険しく、まず自分で住む種族を作り
定期的に訪れる災害を策を立てては乗り切り
他のプレイヤーと同盟を組んだり
また他のプレイヤーが戦争を仕掛けてきては返り討ちにし
自分の作った種族達が何らかの反乱を起こせば速やかに静粛する
他にも様々な試練がある物のその全てをクリアして漸く国へと発展するのである
このゲームはそんな国にたどり着くまでの大変さと鬼畜さゆえ全く
子供には受けず、大人にはかなりの人気を博したゲームであった。
この俺もそんな大変だか、それゆえの達成感を得られる事に嵌った一人である
しかし、俺が嵌った理由はソレだけではなく
たった一人の親友を失ったことから来る寂しさを紛らわす物だった
まず最初に、現在大学生の俺は人生で一度もモテたことはない
俺の顔が酷すぎるのか目があった途端、女性からは顔を背けられ
男性にも話しかけようとすると全力で逃げられる・・・・
・・・一体俺が何をしたと言うんだ・・・
そんなモテない男&ボッチ予備軍、筆頭だった俺にも
唯一誇れる友達もとい親友がいた・・・そういたのだ
しかし、その友達は不治の病という物を患い
苦しみながら死んでいってしまった。
そして本格的にボッチとなった俺はその悲しさから
〔クリエイトワールド〕に憑かれた様にプレイしていった
元々、一緒に遊んでくれる友達も居なかったため
基本ボッチもといソロプレイだったのだが
そして俺は、必死の努力の末、国家〔セルドリア王国〕を作る事に成功したのだ
しかし、その後は、不名誉にもこのゲームで変人と呼ばれる事になる俺
何故かと言えばこのセルドリア王国の城には、男性キャラしか存在しないのである。
もっとも、城下には女性平民はいるらしい俺は一度も見たことはないが
他の女性プレイヤーなら男性キャラだけでも逆ハーレムだの言われ
男性プレイヤーなら女性キャラだけでもハーレムといわれて変人とは言われない
しかし俺は男性プレイヤーながら男性キャラのみにしてしまったため
ゲームでは変人と呼ばれてしまったのだ、また変態とも呼ばれたが・・・
しかしながら、この俺は女性キャラを傍に置くことはまずない
悲しい事ながら今までの人生において女性に関わった経験は
母親しかないため女性といるとアレルギーの如く拒絶反応が出るのだ
しかも、ゲームを終えた後、現実でその拒絶反応が出たため
俺はゲームでも女性には近寄らない!
それに男性キャラの方が友達がたくさん出来たようで
一緒にいると落ち着くのである・・・最も話し合う事などは出来ないが
そうして数少ない国の一つとして君臨していた
〔セルドリア王国〕の王として過ごしてした俺であったが
それは突然起こった・・・・・俺がログアウトしようとした時のこと
『よし・・・今日も頑張ったしそろそろ寝るとするかな』
俺は何時も通り、玉座の間で寛ぎながら
本日のゲームでの働きに満足しながらログアウトボタンを押す
・・・・・・・・しかし
『ん?あれ?』
そこにログアウトボタンは存在しなかった
『!?・・どういうことだ!!』
焦った俺は自分のステータスに掴みかかる
だが、その瞬間、自分の視界がふと暗くなってゆく
『っっ!!??』
如何する事も出来ず倒れる俺は意識が完全に暗くなる直前に確かに見たのだ
《デスゲームを開始します》
その言葉の意味を理解する前に俺は気を失った・・
・・・・・その後
誰かが暗闇の中で話しかけてくる
「・・・・・・・・・・・・・・!」
誰?・・
「・・です!・・・・・・・・か!」
煩いな・・
「大丈夫ですか!リヴァン陛下!!」
俺は、突然の見知らぬ声に飛び起きた
しかし、起き上がると同時に眩暈がして体が傾いた
あ、コレは顔面から地面に落ちるパターンだな
俺が冷静にそう判断して、襲うであろう痛みに覚悟を決めるものの
ふわり・・そんな音が似合うよに優しく
まるで大事な物を取り扱うように抱き込まれる
俺は、傍に人が居たことを思い出しとっさに
お礼を言おうと顔を上げた・・・・・・・しかし
「陛下、お怪我はありませんか?」
顔を上げた時に目が合った顔に俺は固まってしまった
何故なら俺の目の前に居たのは銀髪に青目の超が何個も付きそうな美形
普通なら誰だコイツ?となりそうだが俺はコイツを知っていた
この超絶美形は俺のセルドリア国を守る重役
守りまたは攻めの要となる7人の守護者と呼ばれる者の一人
第一守護団 団長のシュヴァルツである
しかし、俺にとって重要なのは彼が居ることでは無かった
どうして彼が話しているかと言う事である。
このゲームでは、基本、キャラは話すことが出来なかった
話すことが出来るキャラというのも期間限定のクエストを達成するための
案内人のような役割を持つキャラクターが設定された台詞を話すだけである。
それゆえ、キャラが自分から話しかけることは絶対にない
俺は、固まりながらシュヴァルツを凝視する
シュヴァルツは俺が何処か怪我をしたのではないかと
かなり心配して俺を覗き込んでいた。
コレが俺がこの世界に来て始めての仲間との接触だったことを俺はまだその時は知らない。
また、俺がいる場所とは別の場所で
あのゲームがデスゲームと化し混乱に陥っている事
また、そのゲームの中にセルドリアという国が存在していなかった事は
俺は、この先も知ることが無かった事実であった。
内容を少々編集しました
(8人→7人)




