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三題噺もどき5

雨と親子

作者: 狐彪
掲載日:2026/06/24

三題噺もどき―はっぴゃくきゅうじゅうさん。

 



 ぽたぽたと雨が降っている。

 数時間前の勢いが嘘のように、大人しく、降っている。

 とは言え、雨が降っていることに変わりはないので、下校が少々億劫になる。

「……」

 国語の授業中。

 目の前では教師が黒板に何かを書きながら説明している。

 正確に言うと古典の授業なので、言葉の意味とか文章の流れとか、そんなもの。

「……」

 教科書やテキストに書いてあることなので、そんなに言わなくてもいいと思うが……きっとテストにでも出すつもりなんだろう。

 もうそろそろ期末テストの時期だし。

「……」

 しかしなぜ今の時期に春風の話をしているんだろう。

 いまするなら梅雨の話をした方がいいと思うんだけど……まぁ、教科書にそんな流れは関係ないのか。順番に、重要なところを重点的にやるだけだもの。

 テストに受かるためだけに、試験に受かるためだけに、受験に受かるためだけに、勉強しているんだから。

「……」

 滔々と話し出した教師の声に耳を傾けつつ、視線を外に移す。

 学校の前にある公園では、元気なことに、レインブーツを履いたような子供が水たまりで遊んでいる。

 絵にかいたような黄色い合羽に黄色いレインブーツ。

 こうして遠くから見ていると、小さなヒヨコが遊んでいるみたいだ。

「……」

 それを見ている母であろう人は、傘をさしている。

 水色で、少し大人がするには小さく見える。子供用何だろうか。

 生憎顔は見えないが、以前あそこで遊んでいたおしゃれな母親だろう。

 傘をさしたうえで、透明な合羽を着ているようだ。

 まぁ、確かに歩いてとなると手がふさがる傘は邪魔だものな。

「……」

 びしょ濡れのブランコに乗ろうとして、諦めたり、その下にできた水たまりで遊んだり。

 次は鉄棒を握ってみたり、それが冷たかったのかすぐに手放してしまっていた。

 子供ってホントに目が離せないというか……あんな生き物をスマホを見ながら放置できる親の神経が分からない。

「……」

 私の親は、まぁ、ありがたいことにそんなことはなく。

 母の仕事もあるのか、それなりにのびのびと育てた……らしい。確かに記憶に残る幼い頃の私は、それなりに活発で明るい男勝りな感じだった。

 それがどうしてこんな卑屈な人間になっているのか……色々とあったんだけど。

「……」

 妹2人はそれなりにいい子……というかまぁ、私を見て育ってもいるので反面教師になっているんだろう。

 甘え上手の世渡り上手だ。次女はそうでもないかな……末っ子は特に、我がままと言えばそうなんだけど、うまいことお小遣いの交渉をしたりしている。何をそんなにと思うが、私と違って交友関係もしっかりとあるんだろう。

「……」

 というか、共働きだったので、遊ぶとしたら休日が長期休暇だろう。

 そういう時に、色々なところには連れて行ってもらっていたのだ。

 今じゃもう無理なんだけど。

「……、」

 おや。

 今日はもう帰るらしい。

 まぁ、少しずつ雨足も強くなっているし、本格的に降る前に帰った方がいいだろう。

「……」

 仲良く手をつなぎ、歩道を歩いていく。

 やはり子供用の傘だったらしく、母から受け取った傘をさしていた。

 その母は、しっかりと子の手を握り、合羽をびしょ濡れにしながら帰っていく。

「……」

 その道中もきっと楽しいのだろう。

 歩道にだって当然、水たまりは出来ている。

 その上でパシャリと跳ねては楽しそうに笑い、雨に降られ、その度小さな文句を口から溢しながらも、仕方がないと微笑んで。

「……」

 きっとあの子供にとって、今日という雨の日はいい思い出になるだろう。

 たとえ忘れたとしても、大人になってあんなことを母はしてくれたのだと、思うのだろう。

 そして帰ってきた、父にその報告をするんだろう。楽しそうに。

「……」

 その日々が続くようにと願うことはなくても、終わりは突然くるもので。

 その日々が当たり前であることはないのだと、その時に初めて知る。

 ……だから何だという感じだな。











 お題:春風・ブランコ・ブーツ

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