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優しい君とこの夜と

作者: P4rn0s
掲載日:2026/01/24

もう会えなくなった友達のことを思い出すと、胸の奥が静かに乱れる。

悲しいとか寂しいとか、そういう単純な感情じゃない。

もっと曖昧で、もっと厄介なものだ。


そんなとき、自分は元カノに連絡する。

悩みを聞いてもらう、なんて言い訳をつけて。

実際は、精神安定剤みたいに使っているだけだと分かっている。


仕事がうまくいかないこと。

夜になると理由もなく不安になること。

そして、もう会えなくなった友達の話。

自分の言葉はまとまりがなくて、同じところを何度も回る。


彼女は黙って聞く。

相槌を打って、たまに短い言葉を返す。

それだけで、呼吸が少し楽になる。

心拍が落ち着いて、世界の輪郭が戻ってくる。


効いているな、と思う。

同時に、最低だな、とも思う。


彼女はもう恋人じゃない。

それなのに、自分が限界に近づくたび、ここに戻ってきてしまう。

優しさを知っている場所に、勝手に避難している。


通話を切ったあとの部屋は、やけに広い。

さっきまでの安心感は、すぐに薄れていく。

飲み直しのできない薬みたいだ。

効き目は確かにあるのに、持続しない。


友達はもういない。

彼女も、もう隣にはいない。

それでも、過去にいた人たちの存在だけが、今の自分を支えている。


「過去に縛られすぎてるな」

そう呟く。

反省でも決意でもなく、ただの事実確認として。


前に進んだ方がいいのは分かっている。

でも、前に進むって言葉は、今の自分にはまだ重たい。

だから今日も、過去に手を伸ばす。

壊れない程度に、誰かの優しさを借りながら。

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