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41話 魔王と快楽の街4

その夜。アークたちが潜伏する安宿の一室。


再集合した一同が囲むテーブルの上には、ベルが盗み出した機密書類が山と積まれていた。


「予想以上に根が深いわね。……見てこれ」


リリスが書類の一枚を弾く。


「エルフの長官宛の書類では、国体と経済の弱体化を目的として、ドワーフ王国への麻薬輸出と蔓延を行うことがはっきり書かれているわ。」


その上で、リリスが別の書類の束を持ち上げる。


「でも、それはごく一部のエルフしか知らないこと。


他の多くのエルフは・・・」


資料に目をやったヴァルガスは、変装を解きながら目を細める。


「これはこの国で暮らすものたちの精神状態に関する管理データですな。


ドワーフ族は予想通りとして、この国で暮らすエルフ族も薬に手を出しているものが少なくない。」


「そう、エルフ族もおそらくは事実を知らない層がいる、というか、そっちの方が多数派にすら思える。」


リリスは資料をアークの前に置く。


これは決定的な証拠だ。これを公表すれば、総督は失脚し、何らかの余波は生むだろう。 だが、アークの表情は優れない。


「この状況のカラクリは解明できた。


しかし、これでは、そよ風だな。責任者を下ろしても、このドワーフの国は自らを取り戻すことはできない。」


アークは腕を組み、窓の外のネオンを見下ろした。


「今の住民たちは、薬物による多幸感で精神を維持している。仮に何らかの手段でただ薬の供給を絶ったとして、どうなる?


……地獄のような禁断症状と、パニックが街を覆うだろう。それでは『救済』ではなく、ただの『破壊』だ。


私は、ドワーフがドワーフらしさを取り戻す過程として、薬物依存から解放されるべきだと考える。」


秩序なき解放は、新たな悲劇を生む。 アークが目指すのは支配だ。廃墟の王になるつもりはない。

この街を正常に機能させるには、腐った総督に代わる「まともな受け皿」が必要だった。


「代わりの指導者……この状況に違和感を持つドワーフがいれば話は早いのだが」


アークが呟くと、書類の山を漁っていたリリスの手が止まった。


「……いるみたいよ、この街にも『正気の人』」


「ほう?」


「これ、投獄者リスト。 主に薬物の使用を拒否し続けている人達で、地下牢に幽閉されているみたい。


元科学者もいるわ」


リリスが差し出した調書には、一人のドワーフの写真があった。 痩せこけてはいるが、その瞳だけは、薬に濁ることなく理知的な光を宿している。


『氏名:グリムバール。元魔導兵器開発主任。 罪状:幸福義務違反、叛乱準備等』


アークの口元が、吊り上がる。


「幸福義務違反、か。……面白い響きだ。 この男に会いに行くとしよう」


アークが立ち上がる。 魔王の次なる一手は、地下牢獄への襲撃リクルートと決まった。


「全く、詐欺に牢獄襲撃って魔王軍は本当にやること無茶苦茶ね。」


リリスの魔王軍という言葉に、アークが自虐的にクスリと笑う。


(たった4人の魔王軍か。⋯名前もいつか決めないと。)


そんなことを思いながら、アークは安宿の扉を開くのであった。

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