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38話 魔王と快楽の街1

「ついに!ナラクだっしゅ~~つ!!」


リリスが砂漠の太陽に向かって両腕を広げる。


一連の騒動で目立ちすぎてしまった一行は、逃げるように人知れず、そして足早に都市を後にしていた。


「三代目、あれこれしているうちにすっかり有名になってしまいましたな。」


「本当はもっと滞在して人材探索したかったけど…正体がバレる可能性も考えると、背に腹は代えられない。」


開放的なリリスとは裏腹に、想像以上に早くナラクを立つこととなったアークとヴァルガスのテンションは低い。


「なによ、天下の大商人…の卵、リリスの旅立ち、人生の新たな1ページよ。もっと明るい顔してよ。」


「リリス、私とヴァルガス爺はこの街まで来るのに20年以上かかったんだよ。」


「にじゅ?」 はにゃっと首を傾げるベル。


「に、二十年っ!?」 顎が外れそうな勢いで驚くリリス。


「ちょっと!次の工国まで十年かけるとか言わないわよね!」


「いや、次の目的地は最短で目指す。


君たち短命種が百年前後しか生きられないことは知っている。だから、この旅は、最初の仲間を見つけてからは時間との勝負だと思っている。」


「た、短命種って。魔族に分類されているから、ヒト族や獣人族、ドワーフ族に比べればずっと長生きなのに…。」


「たんめー?」


動揺を隠せないリリスとニコニコと笑うベルに、ヴァルガスがごほん、と咳払いした。


「三代目。短命種という表現は下界では使ってはいけないと…」


「そういうヴァルガスだって下界したのせかいって言ってるけどね」


「むっ・・・」


リリスの指摘に珍しくヴァルガスがたじろぐ。


そうこう話している一行は砂漠を抜け、大陸南西部の荒涼とした山岳地帯に足を踏み入れていた。


「商人仲間から聞いた話だと、この辺に入り口があったはず・・・」




ーーー地底へと続く巨大なエレベーターの鉄柵が、きいきいと悲鳴のような音を上げていた。


地上から数百メートル。

暗い縦穴を降りた先に広がっていたのは、蒸気とネオンが極彩色に混ざり合う、巨大なサイバーパンク街。


ドワーフ族の国『轟鉄公国』。


頭上には岩盤の代わりに、無数のパイプとホログラム広告が絡み合う鉄の空。 通りを行き交うのは、体の一部を真鍮や歯車で機械化したドワーフたちだ。


「……空気が甘ったるいな」


アークが鼻をひくつかせた。

路地の排気口から噴き出すピンク色の蒸気。それが街全体を薄い霧のように覆っている。


「なんだか、きみわるい……」


ベルが身を震わせて、アークのマントの裾を掴んだ。

彼女の「隠密」の本能が、この街の異常さを察知している。


「あら、そう? 私は嫌いじゃないわよ、この発展した感じ。ナラクに比べれば天国じゃない」


リリスは興味津々にキセルをふかしたが、すぐにその表情が曇った。

彼女が目をつけたのは、路肩で重い鋼材を運んでいるドワーフの労働者たちだった。

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