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30話 梟の旅立ち

自由都市の北門関所。


早朝の静寂を破り、異様な集団が現れたことで、警備兵たちは騒然となった。


雪焼けし、煤と血に汚れ、見たこともない軍服を着た獣人の集団。


「と、止まれ!身分証を見せろ!」

警備兵が槍を構え、警告する。


集団の中から、一人の青年が進み出た。 小柄だが、その瞳には歴戦の猛者たちを従えるだけの冷徹な知性が宿っている。レノだ。


「……身分証か。」


レノは自身の襟元に手をかけた。そこには、太陽王国軍の大隊長を示す「金色の鷲」の階級章が縫い付けられている。


彼は躊躇なく、それを指で引きちぎった。

ブチリ、という音が、静かな朝に響く。


「レノ……?」


背後でゾラたちが息を呑む。


それは、彼らが今まで守り、縛られてきた「軍人」の証との決別だった。

レノはちぎった階級章を地面に投げ捨てた。


すぐにミラも破り捨てると、それを見たゾラたちも続いた。


警備兵たちが状況をつかめず目を白黒させるなか、レノが懐から袋を取り出すと、警備兵の足元に放り投げた。


中から転がり出たのは、エルフ軍から奪った高純度の魔石や、精巧な銀細工の短剣だ。


「入国税だ。これで全員分の通行料と、当面の滞在費にはなるだろう?」


「こ、これは……エルフの宝具……!? あんたたち、一体……」


警備兵が狼狽しながら問う。


「太陽王国の敗残兵か?」


レノは力なく笑った。


「俺はレノ…。レノ=モティエ。」


レノは振り返り、生死を共にした仲間たちを見渡した。

愛すべき共犯者たち。


「そして、俺たちは傭兵団『フクロウ』、しがない便利屋さ」


こうして歴史の表舞台から姿を消した第9大隊が世界を揺るがす事件に巻き込まれるのは、もう少し先の話である。




ーーー時は数十年前まで遡り、遥か南方。



冷たい雨が、一人の青年の頬を叩いていた。


泥に塗れた顔を拭うこともせず、銀髪で色白の青年ーーーアークは視界に広がる光景を見つめている。


遥か上空、雲の切れ間に浮かぶ巨大な影――かつて彼の家であり、世界の支配の象徴であった「魔王城エクリプス」が、黒煙を上げていた。


「……三代目。」


背後から響いた重厚な声に、アークは振り返らなかった。


普段は執事服に身を包んでいる巨躯の老騎士は漆黒のフルプレートアーマーに身を包み、王の前に跪いていた。


この老兵がいなければ、アークはあの地獄から抜け出すことすら叶わなかっただろう。


アークは本来、書物を愛し、古今の歴史や芸術に耽溺することを好む穏やかな青年だった。だが、雨に濡れたその瞳には、かつての優しさとは異なる、暗く硬質な光が宿り始めていた。


「落とすぞ、あの空を。」


第1部「梟の罪ペシェシュエット」完

読んでいただき、有難う御座います。

これで第一部は完、となります。


流れのなかで書き損ねたエピソードがいくつかあるので、

それを番外編として不定期更新したのち、2部に突入します。


よろしければ是非ブックマークをお願いします。


第1部は敢えて世界観や設定を細かく説明しませんでしたが、

第2部は、より広がりのある物語になるのではないかと思っています。

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