29話 梟と勇者
太陽王国のかつて絢爛を誇る王城は、現在は無骨な軍事要塞の雰囲気を強めて再建が進んでいた。
王都ヘリオスは、古い都市から順に番号をあてていくエルフ族の流儀に基づき、「第7都市」と名づけられた。
進駐してきたエルフ族の文官のもと法体系や税制の整備が急速に進むなか、訓練場で勇者ヤマト=ライオスは佇んでいた。
「珍しいね、君から話があるなんて。愛の告白かい?」
「別にそっちの気はないから安心してほしいけどな。
あの雪山のドーンと来たやつは、どういうつもりだったん?」
どこかおぼろげな足取りで「薔薇」のレンジ=ロートフィルトはヤマトと向かいあった。
「僕からレノくんへの餞別さ」
「あの頭でっかちのスメラギはそう解釈したようだがなぁ。
俺が咄嗟に守らんかったら、第9のあいつら、死んでただろ。
お前が殺す気だったことも、俺が守ったことも、ここにいる2人しか気付いてないだろうけど。
何がしたい?」
「…説明したところで君には理解できないさ。というか、やっぱりこの部隊で僕の次に強いのレンジくんでしょ。」
その言葉を嚙み締めたように目を瞑ったレンジは、深く息を吸い込む。
「もうひとつ。
レイカが俺の妹って嘘だろ。」
「あ、ばれた?」
無垢な笑顔を張り付けたままのヤマトに、周囲の全てを焼き尽くすほどの花びら状の炎が舞い上がる。
「知ってたよ、とっくに死んでるんだろ。あいつは…あれは、なんだ。」
「勝てたら教えてあげるよ。」
「いいさ、どっちにしろ『王国の希望』とやらと一回やってみたかったんだ。
お前のその胡散臭い笑顔、殴ってやる。」
ヤマトが大笑いする。
「ははは、だからいつも僕に会うときは殺意だだ洩れだったんだね」
舞い散る花びらは悉くを焼き払い、訓練場を中心に仮設されていた軍施設はあっという間に炎上したが、ヤマトが剣を抜くと全ての炎は空へと舞いあげられ、消えた。
その中に立つ影と、倒れる影。
「うーん、一発KOか。……手加減したつもりなんだけどな」
ヤマトは心底不思議そうに首を傾げた。
「遺言くらい聞いておこうか?可愛い妹さんに…って偽物だったか」
レンジは地面を握りしめると、絶え絶えの息で上を見上げた。
「なんだ、ちゃんと意思あったのな。あれとか言ってごめん。」
「ん?」
その瞬間、大空から何かがレンジをかすめ取っていった。
大空から舞い降りたのは、鋼で構成された巨大な「怪鳥」。
その嘴はしっかりと、レンジの腕を掴み、大空へ逃げ去っていった。
「鳥…にしては大きすぎる…レイカの錬金術か。全くスメラギとタケルを見習ってほしいね。まあ、いいか。」
そういって何事もなかったようにヤマトは服の埃を払うと、先ほどまでの一切など意中にないかのように街中へと歩き出した。




