表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

16話 梟の黄昏

夕暮れ時。


空は赤と紫が混じった不穏な色をしている。 第9大隊の出撃。 見送る市民はまばらで、そのほとんどが冷ややかな視線を送っている。


「おい見ろよ、あの獣人部隊だ」 「今の大隊長になってから多少マシみたいだが、また負けて帰ってくるんだろ? 税金の無駄だ」


石ころが一つ、列に向かって投げられた。


カラン、とミラの足元に転がる。 ミラは足を止めず、前だけを見据えて歩く。


その横顔は、王都に来たときのような怯えはなく、戦士の硬質さを帯びていた。


(見ないふり、見ないふり。……顔を覚えておこうかな、あいつ)


レノは馬上で揺られながら、石を投げた男の特徴を記憶の片隅にファイリングする。


その様子を見た新聞記者は、後に「英雄の出陣」と題して石を投げた男の絵を一面に掲載したという。


ーー城壁の上から、第1部隊の勇者ヤマトとスメラギがその様子を見下ろしていた。


「彼らは行くんだね。悲しい役割だ」


ヤマトの声には慈愛が滲んでいるが、その表情は能面のようだ。


「……ヤマト、君が決めた役割だろう。だが、果たして大人しく『盾』で終わるかな」


スメラギは、去りゆく隊列の最後尾、レノの背中を目で追う。 死地に赴く部隊にしては、足取りが軽すぎる。


まるで、檻から放たれた獣のような。



ーー王都の門が背後で重々しく閉じた。 都市の光が遮断され、荒野の闇が広がる。 ここから先は、法も秩序も届かない戦場だ。


レノは馬を止め、振り返った。 夕陽に照らされた王都の城壁が、赤黒く燃えているように見える。


「部隊長? 名残惜しいですか?」


「まさか。……清々しているところさ」


レノは王都に向けて、ミラにしか見えない位置で、中指を立てる動作をした。いや、したように見えただけかもしれない。すぐに手を戻し、軍帽を目深に被り直す。


「通信機、感度チェック。これより我々は『戦地』に入る。……いいか、ここから先はどこにいても敵地だ。エルフだろうが、後ろから来る味方だろうが、信用するな」


「「「了解ラジャー!!」」」


以前とは違う、腹の底からの返答が響く。


「第9大隊、全軍前進。」


レノの合図と共に、部隊は夕闇の向こう側、死の平原へと消えていった。


「守護者」の仮面を捨て、「死神」がその本性を現す刻が来たのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ