母と娘とエンシェントドラゴン
時は遡る
リムロスはハーフワーウルフの少女を見下ろしている。
息も絶え絶えで倒れている少女の脳内記憶を覗いた。
少女の生い立ち、身の上に降りかかった出来事。
その少女の記憶はリムロスのクオリアに憐憫の情を齎した。
塒に戻ると先ず少女の体を自分の体温で温め
深い眠りに落ちている事を確認すると
炎のブレスで保温性の岩石を温め少女の周りに配置し布を被せ
ゴウッ!!
と飛び立ち頭上の結界を抜け、羽ばたいた。
目指すは王都。そこへ行かねばならなかった。
深夜、警邏以外の殆どの火は落ち、都は静まり返っていた。
上空に達したリムロスは
スゥ……と大きく息を吸い込み、王都全体を包み込むよう
大きく吐き出した。
それは霧状であり、街や王城満遍なく降り注いだ。
城壁と王城には物見の兵がいたが生会館的に
基本的に空襲を行う手段が無いため、空の警戒は疎かであった。
警邏の兵士が上空から降ってくる霧に気が付いた時には遅かった。
次々と警戒の兵士は倒れ込んだ。
胸は上下している。息はある。眠っているようだ。
リムロスが吐き出したのは、スリープブレスであった。
魔法的なものとは違い物理的な所謂、物理的な薬効作用のような形で
瞬時に、まだ起きていた人々は深い眠りへと誘われた。
バサリ。
リムロスは王城中庭に降り立った。
「仮初の形を纏い形なす律を解き放ち
束の間の器として別なる相を顕せ。ポリモーフ。」
人語で魔法を唱えるとドラゴンの姿はみるみる人型へと変化する。
冒険者が使役する魔法で姿を一時的に変える魔法だ。
床に倒れ込んで寝ている兵士達を気にも留めず人間へと変化したリムロスは
牢を探した。エンシェントドラゴンにとって人の創りし構造など
手に取るようにわかる。
真っすぐ牢屋へと向かった。衛兵から鍵を拝借し牢への通路を進んで行く。
すると牢の中で眠りに落ちている女性を見付けた。
間違いない幽閉されている女性に見覚えがあったノエリアの母親だ。
すぐさま牢から連れ出し、中庭でポリモーフを解除すると
その女性を咥え、塒へと戻っていった。
リムロスは睡眠の元となっている
体内残留物質を解毒すると女性はすぐに目覚めた。
エンシェントドラゴンを前にして母親は戦慄し身が硬直する。
しかし塒で穏やかに眠っている娘とリムロスの瞳の中を覗き込んだ時
彼女は理解した。この生き物は娘を保護してくれたのだと
母親の直感が感じ取っていた。
その晩リムロスとミルナは語り合った。
ドラゴンが娘の生い立ちを知っていた事に驚いたが
エンシェントドラゴンであるという事を知り全て合点がいった
母親のミルナは人間である。しかも娘の面倒を見る為に家に常駐し
生きる術は全て夫のワーウルフ任せであった。
ノエリアがこの先生きのこる上で
どちらが育てるかの解答は明白であった。
最愛の娘を手放したくない気持ちは
数年常に傍にいて愛情を注いできた。誰にも引けを取るものではない。
ただ自分の我儘の為万が一
娘が一人で生きて行けないような存在になってしまったら
何よりも後悔するだろう。
何より命を張って逃がしてくれた夫に合わせる顔がない。
そして決定的なのが何かあった時に守り切れる自信がない。
断腸の思いでミルナはノエリアの事をリムロスに託した。
初めリムロスは回答を渋ったが、ミルナの熱意に押され。
承諾する事となった。
リムロスは、その日のうちに辺境の村までミルナを送り届け
塒へと戻りまだ温かみの残る保存石を除き
ノエリアを囲む様にして眠りについた。
そしてEP2の目覚めのシーンへと話は繋がる。




