05、不明な個包の行方
ラファは少年の話を聞こうとしたが、どうにも話の核心には触れられないままだった。少年はそんな彼女の様子を察したのか、静かに立ち上がり、改めて丁寧に自己紹介を始めた。
「僕の名前はシオン。ライトボーンという医療企業病院の息子だ。」
彼はそう言いながら、どこか誇り高い表情を見せた。しかしその目には、年相応の疲労がにじんでいるようにも見えた。
「僕は見た目のせいで子ども扱いされることも多いけど、実際には13歳なんだ。うちの病院で医療チームを任されていたけど……それも今は昔の話だ。」
幼い容姿に似合わない落ち着きと、わずかに混じる苦々しさ。その話を聞きながら、ラファは静かに頷いた。
だが次の瞬間、シオンの表情が曇り、声が少し低くなる。
「……うちの問題に君を巻き込む気はない。だからすぐにここを出ていくよ。忘れてくれ。」
彼のその言葉には、どこか覚悟と諦めが入り混じっていて、ラファは思わず胸を締め付けられるような気持ちになった。
「……そう。」
ラファは一瞬だけ俯いたが、すぐに何かを思いついたように顔を上げた。
「あ!そういえば、まだ配達の荷物が荷台に残ってたんだ。届け先が“うち”になってたけど、これって本当は隣の国じゃないかな?」
彼女はニヤニヤとした笑顔を浮かべながら、目を輝かせてシオンを見た。
「ねえ、私が君を叔父さんのいる国まで届けてあげるよ!」
その突拍子もない提案に、シオンは目を丸くして彼女を見つめた。
「……え?」
彼は呆然としたままラファの顔を見ていたが、その中には小さな希望が灯ったようにも見えた。
「どうせ仕事の延長だし、
私、運転だってバッチリだよ!」
ラファの自信満々の態度に、シオンは困ったように苦笑を浮かべた。
「君って、本当に変わった人だね。」
だがその笑顔は、今まで見せてきたどれよりも柔らかく、少しだけ安心したようにも見えた。