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「「「「「……(うっ…と、尊い…。)」」」」」


そうマインの純粋さにその場にいた者たちが当てられていると、案外早くに立ち直ったサラはふとこんなことを口にする。


「……ん?そういえば、君がマインくんだっていうことは…。」


「?」


マインがそう頭に疑問符を浮かべていると、サラは思案顔から血相を変えて、マインの肩を掴んだ。


「って!なにやってるの!マインくんっ!!勇者パーティー、今朝早くにこの街出てっちゃったよ!!急いで追いかけなくちゃ!!」


サラがそう必死になり、ギルドで馬を貸そうなんて話を出し始めたというのに、置いていかれたであろう本人の反応がまったく慌てた様子がなく、サラはようやくそのことに気がついた。


「……マインくん、もしかして……。」


「……はい…実はパーティー追い出されちゃいまして…あは…あはは…。」


マインが仕方がないとでも口にしかねないように軽くおどけようとしていると、サラは俯き、拳を震わせた。


「……なんで…。」


「……。」


「なんで…マインくんが追い出されるの?だって、マインくん、いつも頑張ってたじゃない!!」


「…パーティー内の不和を招くからだと…。」


「……なにそれ。意味わかんない。」


勇者が女好きだとサラたちは知っていた。


おそらくそれ故にマインはパーティーを追い出されたのだと、マインの言葉を聞いて、確信を持った。


「マインくんには仲間だからこんなふうに言われると不快かもしれないけど、敢えて言うね。」


「……。」


スゥーっと息を吸うと、マインを鼓舞するかのようにギルド内に響き渡るほど大きな声を上げ始めた。


「あんなヘボ勇者たちみたいな奴らと別れられて大正解!!だってマインくんってすっごく優秀なんだから!!…だから…ね…だから、マインくん…自信を持ちなさい。落ち込む必要なんてないのよ。早いうちに厄介なやつと縁が切れたくらいに思ってないと…。」


「…っ…ありがとう…ございます、サラさん。」


「…そ、それにね…マインくんの方が…その…。」


どこか感動した様子のマインに、サラが中々付け加えるようにカッコいいと言えずにもじもじしていると、特に女性パーティーは色めき立ち始めた。


「勇者パーティーのヒーラーだったってことはCランクの私たちなら…。」


「あんた馬鹿なの?そんなこと考える必要なんてないでしょ!だってイケメンだよ!!それにあの子フリーだって!」


「ちょっ!?マジ?アタックしちゃう?」


「当たり前でしょ!!サラとの話が片付いたら、ダッシュよ!ダッシュ!!」


「……。」


まあ、明らかにパーティーメンバーとしての意味だけでなく、その先のことを皮算用しているのがわかったが、概ねサラの思惑通り、マインの次のパーティーが決まりそうでよかったと喜んでいると、マインが慌てた様子でこんなことを言い始めた。


「…あの…サラさん…できれば、しばらくソロで活動したいんですけど…。」


「……え?」


「「「「「え?」」」」」


女性陣が驚きポカーンとしていると、後輩受付嬢のミラがサラの耳を引っ張った。


「…先輩、優しいけど、少しバカ。マインくん、幼馴染パーティーに追い出されて傷ついている。人と距離をおきたい。」


「えっ…でも…ヒーラー…。」


「先輩の思っている通り、確かに普通のヒーラーだとそんなことも言ってられない。でもマインくん、ヒーラーだけど、前衛で戦ってる。だから、ソロでも問題ない。」


「…ミラちゃん…。」


「ほら。この依頼よさそうだったから、手続きしといた。さっさと渡して逃がしてあげるといい。」


見ると、マインは気を変えろと女性たちに詰め寄られており、困った顔でそれをなんとかしようとしていた。


しかし、サラにはもっと気になることがあったのだ。


「…ミラちゃんってこんなに喋ることできたんだね…。」


ミラは一瞬なにを言っているのか、わからないと首を傾げたのだったが、言葉の意味を理解すると、軽くキレた。


「……ブチッ。……いい、私が渡してくる。これからは私がマインくんの担当になるから、先輩は指を咥えて見ているといい。」


「ちょ…っ!ごめんごめん!!ありがとう、ミラちゃん。それじゃあ渡してくるから。」


ミラから奪うようにして、それを受け取ると、サラはさっさとマインの方へと行ってしまった。


そんなサラたちを見ながら、ミラは仕方がない人だなと、子供…いや、妹たちを見るような目を向けるのだった。


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