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「…うっ…ううう……。」
どうやら朝日が差し込んできたらしい。
…もう朝か。
まだ寝ていたい。
二度寝は人類史上最高の誘惑だ。
マインは差し込む朝日を避けようとベッドの上で右に左にと寝返りをうち…しかし、その甲斐なく、どうやら頭は半分ほど覚醒してしまったらしく、嫌々ながら身体を起こして伸びをした。
ふわぁ…。
欠伸が漏れ、首をコキコキとするマイン。
そして、まずこんな言葉が出た。
「…どこ…ここ…?」
そこは普段泊まっていた宿ではないのは明白だった。
一応マインは勇者パーティーに所属していたので、基本的に常宿としていたのは、高級感漂う場所だった。
装飾に凝っており、貴族御用達。
しかし、今、マインがいるのはそことは似ても似つかないようなところ。
部屋に置かれたものは、高そうな壺や絵画などもなく、ふかふか過ぎない普通のベッドが置かれ、机に灯りは安っぽい魔力灯。
…まあ、庶民派なマインとしては、これくらいのほうが過ごしやすくていい。
なんか実家の孤児院とは名ばかりの孤児はマインのみの家を思い出すくらい落ち着く。
「…ふう……って…ん?なんで僕こんなところにいるんだろう?………あっ…。」
マインは思い出す。
パーティーを追放されたこと。
そして、やけ酒の結果、ベロンベロンになったマインはオイクに担がれてここに連れてこられ…ベッドに放り込まれた。
パーティー追放の件は肩にも心にも重くのしかかるので、とりあえず置いておくとして…。
「あちゃー…これはオイクに謝らないと…。」
額に手を当てるマイン。
「…あれ?」
マインは額に手を当てたはず……しかし、その感触はいつもと違った。
手から伝わってきたのは、あの無機質で冷たい感触ではなく、どこか微かに弾力のある、ほんのり温かさを感じるそれだった。
「?」
首を傾げるマイン。
思わず顔中を触り、頬のあたりが特に柔らかいことに気がつくと、ようやくそのことに思い至り、やれやれと首を振った。
「まったくオイクのイタズラかな?まさかスライムなんて顔に塗っちゃって。子供っぽいところもあるんだね。あのオイクも。」
そう、マインが思い至ったのは、オイクという友人のイタズラだ。
あの保護者気質なオイクにも茶目っ気があったのだと、友人の新たな一面が知れたと少し嬉しくなるマイン。
オイクにはやけ酒に付き合わせ、愚痴を聞いてもらい、宿まで取らせ……と、あれだけ迷惑を掛けたのだ。
まあ、それくらいは仕方がないかと、酒臭い身体や部屋にクリーンの魔術を掛け、ガラスの貼られていない木製の窓を開けて一応の換気。
それから、ポシェット型のマジックバッグから手鏡を取り出し、とりあえず顔を洗いに外に出る前にその惨状を一応は目にしておこうと思い、自分の顔をそれに映した。
やはり反射して映るのは、あの悪趣味な仮面……っ!?
「……………………は?」
呆然と鏡を見つめるマイン。
マインはすっかり固まっていた。
……要するに映っていたものは予想とあまりにも違ったのだ。
そして、絶叫は響き渡る。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!」