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「ハァハァハァ…くっ……。」


ムカつくムカつくムカつく!!


なにが『ふふふ…今日はこのくらいにしておいてあげるわ。』だ!!


ヨウキはなんともたおやかに微笑みながら、そう言った。


マリア自身、そのような言葉を何度か聞いたことがあったが、それは明らかな負け惜しみであり、彼女の気分としては『やれやれ。』というくらいのむしろ可愛らしいなくらいのそれだったのだが、今回の彼女のそれは明らかにそれとは違い、まさか負け惜しみではないこの言葉がこんなにも腹立たしいものだとは思わなかった。


くっ…悔しいっ…。


マリアは忸怩たる思いで下唇を噛む。(マインには見えないように口元を手で隠して。)


だいたい60点とはなんなのだ!!


私のどこが……とは言えないこともない…かもしれない…だが…いや…でもいくらなんでももう少し…………。


マリアは自身に付けられた点数に苛立ちを覚えながらも、そんな言葉を放ったヨウキの容姿を思い出し、少しずつ自信を失い、トーンダウンしていく。


事実ヨウキの容姿は並外れていた。可愛いの極致とでも言えばいいのか…。小さく、可憐で…。守ってあげたいと誰も彼もが思うに相違なかった。


それはむしろ守ってほしい……いや、そこまでは流石に…コホン、女性から好かれやすいマリアとは明らかに正反対の方向性であり、確かにそんな彼女からすれば、自分はなんとも60点という点数に相応しいのではないかと思えてきて、なんとも悲しい気分にすらなる。


うっ…ううう……。


「マリアさん?」


……でも…そう!でも!!だ!!いやいやいやっ!!それでもいくらなんでも60点はないだろう!!


空元気的にマリアは気分を持ち直すと、無理やりそう結論づけた。


そうだ!!そういうことにしておこう!!


だいたいあれが守ってあげたい?どう見ても守る必要などないだろう!!


あらゆる魔術を息をするように駆使し、(街を壊しかねないのでしなかったレベルの()使わなかった)本気のマリアを相手に息一つ乱さず…どころか服に汚れすらなく、彼女を玩具のように弄んでみせたのだ。


それはまるでどこかで聞いた覚えのある妖怪。物の怪。妖のもの。


だから、きっと!!マインも()()私のほうが…などとさらにヒートアップしていたところ。


…マリアは自分の肩が揺すられていることに、ようやく気がついた。


「マリアさんっ!」


「えっ!?えっと…ま、マイン…いや、ご主人様なに…か?」


「いや、ですから…着きましたよ。」


「?……???どこに?」


「…もう…聞いてなかったのですか?」


「っ!?」


今の瞬間、マリアの頭から妖怪のことなどすっかりと抜け落ちた。


その理由はなんとも簡単。


…マインの初めて見せる『…もう…。』と少し拗ねるような顔が可愛いかったから。


それに今は少しぷんぷんとしており、それもなんとも素晴らしい。


本当に怒っているのか?と思うほどに負の感情は感じられず、彼女の妖怪の妖気に当てられ、荒んだ心を癒してくれた。


内心はそんな割とラッキーやハッピーなどという感情しかない状態ではあったのだが、なんとなくマインに悪い気がして…いや、確かに自分が悪いことをしたに違いないので反省はしているのだが…表向き反省していますよという雰囲気を滲ませることにした。


「…は…はい…。」


「い、いえ、そ、そんなに落ち込まなくていいんですよ。僕も少し言い過ぎましたから。」


と、本気にしたのか、少しおどおどとした様子で返すマイン。


そんな彼にマリアはまたキュンとしていた。


しかしながら、あまりこのようにマインの行動の邪魔ばかりをしていてはウザがられたり、呆れられたりしかねないと思ったマリアは、思わず手が伸びそうになるのを抑えつつ、申し訳なさ2割、平静3割、そして親愛5割というくらいの表情や雰囲気で彼に尋ねる。


「そんなことはないぞ、ご主人様。私がぼ〜っとしていたのが、悪いのだ。ところでご主人様?なにか用か?」


「あっ…はい。目的地に着きましたので、一応声を掛けておこうかと…。」


「目的地?……っ!!!?」


マリアは驚きに目を見開き、喜びを露わにした。


「だって、マリアさんにも武器がいるでしょう?」


優しく微笑むマイン。


そんな彼に理性を失うほどにハッピーになったマリアは…。


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