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3

昼時を過ぎたので、一旦臨時治療院を閉め、マリアたちはマインの先導で街のメインストリートへと来ていた。


お昼時のため、ほとんどのご飯処は人で溢れており、中には列をなして並んでいる客がいるところさえある。


その周りの道具屋なんかにも人がいて、食前なのか食後なのかはわからないが、ついでにと足を運ぶ者たちでそちらも盛況だった。



見るものそれぞれに目を奪われるであろうその中、マリアは一人考えるように腕を組みながら、マインに付いて行っていた。


…う〜ん。


マリアは悩んでいたのだ。


先程までマリアはマインの治療のお手伝いをしていたのだが、どうにも女性客ばかりが多く…いや、というか、男が治療を受けに来たのはほんの1人か2人で残りは全て女性だった。


それも小さな切り傷がほとんどで、極端な話、唾でもつけておけと思わず口からそんな言葉が出かけてしまったというのが事実だ。


…それにしても…とマリアは呆れていた。


中には自分で傷を作ってきた者も多くいたのだ。


その中で最も印象深いのは、手首のあたりにたくさんの切り傷を作ってきた者。


彼女は治癒術師なのだが、料理中、()()()()それをしてしまったらしい。


一言で言って、血みどろだった。


それを見た瞬間、マインだけでなくマリアも本気で心配した。


…まあ、マリアの場合それは瞬間のみで、実際、それ以降はその技術に驚いたのだが…。


なにせ的確に重要な血管を避けた傷の数々だったのだから。


もしこんな傷を戦闘で拵えてきたのならば、弟子入りさえ過っただろうほどのそれ。


…もう正直、ここまでされてしまえば、もう苦笑いくらいしかできない。


はあ…ご主人様…正直ここまで人気だと怖いぞ…。


マインたちがたどり着いたのは、道具屋だった。


道具屋【美蘭堂】。


ここはマインの行きつけの道具屋で、ギルドに商品を卸していることからも高い品質の商品を扱っている名店だ。


そんな店ならばと、メインストリートから一本入った程度のこの店も、メインストリートの店同様に客の出入りが激しいのだろうと思われるだろうが、そんなことはない。


それはというと…なんというか、店主が個性的な人物なのだ。それは外見だけでわかる。


店の佇まいは地味でもなく派手でもない、なんともシンプルなそれで、うっかり入ってしまいそうになる。


…いや、嘘だ。文字が読める人物ならまず入らない。


店先に目立つように立て看板がある。


そこにはとんでもない文言が書かれているのだ。


それは…。


「……【ブス入店禁止】。」


マリアは唖然とした様子でそう口にした。


その言葉がなんとご丁寧にも多言語で書かれている。


これでは余程自分の顔に自信のある人物でもない限りは入ることはないだろう。


そして、チリンチリンとドアベルを鳴らし、中なんかに入ってしまえば、普通ならさらに後悔することになるのだが、それはマインには関係のないこと。


「えっ…あっ…ご主人様っ!?」


マインはマリアの驚きをそのままに店の中へ。


「お邪魔します。」と中へ入り、マリアも中に入って少しすると、カウンターのあたりから物音がし始めた。


「ん?誰?」


それは鈴の鳴るような声。


そして、現れたのは…。


「え、エルフっ!?」


奥から出てきたのは、マリアと同じ種族。珍しい種族の登場に目を白黒させていると、それはすぐに真っ赤に染まった。


「…60点。まあ、ギリギリセーフ。なんか用、エルフのお嬢ちゃん?もしかして誰かの紹介?」


「ろ、60点っ!?…それって()()()…。」


60点。


それは言わずもがなマリアの容姿に対する点数。


辛口も辛口な評価。


しかしまあ、完璧な美貌を持つエルフのヨウキの容姿で言われてしまえば文句も言えないのかもしれない。


美しい金糸のような髪、その小さな顔には、はっきりとした目鼻立ちに、濁りない宝石のような大きな瞳、桜の花びらそのもののような唇、肌の色は陶磁器のようで、その女性味を帯び始めた小さな肢体から伸びる手足は細くしなやか。


ゴゴゴッ!!!(マリアの後ろから立ち昇る怒りの炎)


…いや、やっぱり女性なら誰であろうとキレるかな?なんかマリアもヨウキさんに射殺さんばかりの視線向けてるし…。


「……ブッ殺…。」


…はあ…ここはとりあえず話を逸らさないと…かな?


「…先日ぶり、ヨウキさん。薬ありがとうございました。」


「薬?……っ!?も、もしかしてダーリンっ!?もう♪会いに来てくれたの〜♪来てたなら言ってよ〜♪だきっ♪ぎゅっ♪ちゅっ♪ちゅっ♪」


「……ダーリン?ほう…(じと〜)」


…あれ〜?状況改善しようとして、なんか悪化してるような…。


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