表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第七章 六鹿と四蛇
79/124

7-15

 妙丸の里の敷居に足を踏み入れると、その瞬間から、誰かに見張られているような緊張感が生まれた。辺りには、背の高い木々がまばらに生えており、その隙間から遠くまで見通すことができる。しかし、周りを見渡しても、上の枝の方を見上げても、生き物の姿は見えない。


 妙丸の里では、人間以外の様々な生き物が共存している。彼らからすれば、人間は災いを呼び寄せるだけの、決して関わり合いになりたくない存在らしい。中には、人間を憎んでいる種族もいる。

 又旅と四蛇は、口と態度には気を付けるようにと、ワロに釘を刺された。


 進むにつれて、木の数が増え、森が濃くなっていく。


「こっちを通るんじゃ」


 木で作った坂道の足場が現れた。その足場はずっと先の上の方まで伸びており、そのまま高いところを歩いて、森の奥まで進んでいけるようだ。高いところの足場は、枝から吊り下げられたり、幹に固定されたりしている。


「崩れないだろうな」


 四蛇は衝撃を与えないよう気を使いながら、恐る恐る足を進める。


「高いところを通った方が、まだ安全なんじゃ。この里は、自由であるかのように見えて、あまりにも決まり事が多い」


 木々は奥へ進むほどに密集しており、足場が崩れても、最悪枝が受け止めてくれそうだ。ただし、森に入った時よりも、さらに視線を強く感じるようになり、又旅は気味が悪かった。


「ひゃあ」


 又旅が首をすくめ、辺りをきょろきょろ見回す。


「どうした、女みたいな声を上げて」

 四蛇が軽口をたたく。


「ばか、わしゃ女だ」


 又旅はそう言い返しながらも、片手で顔に触れ、平常心を取り戻そうと息を整える。

 今、何かが頬に触れた。


「ほおなでか」


 ワロが、辺りを見回しながら、呼びかけた。


「ひゃあ」


 今度は四蛇が声を上げた。又旅はにやにやしながらそれを見る。


「何か、冷たいものが首に触ったんだ」と四蛇は言い訳する。


 ぼうっと、行く手を阻むようにほおなでが姿を現した。


 見た目は人間に似ているが、一番初めに目が行くのはやはりその毛量だ。さらさらの細くて白い髪は獣のように多く、足のところまで広がっている。まるで髪から足が生えているようだ。手足は長く、青白い。

 瞳の色が薄く不気味だが、四蛇は、なんて美しい生き物なのだろうと、見惚れた。


「なぜ人間を入れる」


 ほおなでは、人間と同じ言葉でワロに問う。


「この子らはわしの古い友人でな。ここに住む友人を訪ねにきたんじゃ」


「目的は聞いていない。決まりを破り、災いを招く理由を聞いている」

 ほおなでは無機質な口調で言う。


「この子は、憑き物を無力化する情報を持っているんじゃ。ここに住む、乞除という呪師と力を合わせれば、それができるかもしれん」


「それが災いを持ち込む理由と、どう関係がある」


「憑き物やノウマには、あんたさん方も困っとるじゃろう。それをどうにかしてくれるって言うんじゃ。邪魔する理由などないじゃろう」


「我々は、それらに悩まされてはいない。外の災いを持ち込むべきではない」


 ワロは返す言葉が見つからなくなって、口をぱくぱくさせた。


「傲慢な生き物よ。災いが降りかかれば、我々はお前の家族を殺すだろう。お前たちはこの里に生かされていることを忘れるな」


 そう言い残して、ほおなでは、またぼうっと消えていなくなった。


 四蛇は唇を尖らせ何か言いたそうな顔をしたが、「はじめから警告のために現れたんじゃろ」とワロは呟いた。


 ほおなでが去ってからも、見張られているような視線は残っていた。冷たい手で頬に触るいたずらは、もう仕掛けてこなかったが、たまに視界の端に、ほおなでの細い髪が見えるような気がした。

 ワロは余計な口を開かず、乞除のいる場所へ、まっすぐに向かった。居心地の悪さはついて回り、自然と口数は少なく、歩みは早くなった。


 森はさらに深くなり、巨大な木々によって、やがて空が見えなくなった。カンテラに火を灯し、足場を照らしながら、さらに先へ進む。蕪呪族の村があった森とは、随分雰囲気が異なっているようだ。


 暗闇をずっと行くと、突然明るい場所に出た。高いところで、空が丸く空いている。その広場の真ん中には、可愛らしい、小さな木の家がある。足場は別の方向に曲がり、まだ先へと続いていたが、ワロはカンテラの火を消し、元々設置してあった長い縄梯子を使って下に降りた。茶々は縄梯子を下りられないため、いったん四蛇の鞄に収めて、四蛇と一緒に下に降りた。


「どうやら、ここらしい」


 ワロはその可愛らしい家に近づくと、扉をノックした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ