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HUE ~だいだらぼっちが転んだ日~  作者: 宇白 もちこ
第七章 六鹿と四蛇
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7-13

 スムヨアが彼女を見つけたら、まず汚れを落とし、食事をさせ、それから、呪術をかけるだろう。

 スムヨアの呪術を防ぐための護符は、水を弾く植物の皮で包んで、彼女の舌の裏に忍ばせてある。それが見つからないことを祈るのみだ。


 護符は、又旅を中心に、みんなで協力して作った。乞除の消息や居場所は結局分からなかったので、瓜呪族の呪師たちの知恵を借りた。

 又旅とマツらが選んだいくつかの植物を探し集め、乾かしたり熱したり濾したりして成分を抽出し、絶妙な塩梅で混ぜ合わせ、その汁で特別な文様を書いた。文様を書く場所や時間も計算し、呪術の力が極力大きくなるように準備をした。肝心の文様も、マツらと又旅が頭を突き合わせて悩みに悩み、書き上げた。又旅と四蛇は必死だったが、マツとマイはどこか楽しそうに見えた。いずれにせよ、快く協力してくれたのには頭が上がらない思いだった。

 浮文紙などをナツメに持たせることは、もちろんできなかったので、潜入成功の連絡は、六鹿から来る手筈だった。


 数日後、六鹿から、無事にナツメが潜入したとの知らせがあり、二人は胸を撫でおろした。特に四蛇は、安堵のあまり泣きだしそうなほどだった。強い責任を感じていたのだろう。ナミクアの呪術についても、上手くかいくぐれたそうで、六鹿とナツメの間でこっそり浮文紙を交換し、連絡を取り合うつもりとのことだった。


 ただし、六鹿とナツメの関わりは、絶対に悟られてはいけないことの一つだった。ただでさえナツメの出自には、怪しげなところがある。万が一の場合には、共倒れどころか、又旅や四蛇の居場所までばれる可能性があるのだ。

 六鹿とナツメは、人前では決して会話しないように決めた。


 朗報は、ナツメの潜入が成功した件だけではなかった。

 ナツメが本部の地下でスムヨアに保護された際、スムヨアが蒼羽隊の名簿のようなものを持っていたというのだ。

 彼女は複数の紙を紐でまとめたものを持ち、何かを探し出すように目を走らせてから「ナツメ」と読み上げたのだそうだ。本部に届いていなかった蒼羽隊の名前を、確認したのではないかと推測できた。


 さらにスムヨアは、その名簿のようなものを見ながら、ナツメに新しい別の名前を付けた。おそらく、庵或留が蒼羽隊を作る時に、蒼羽隊用の名前も付けるのだろう。何枚もの名簿が紐で綴られている様子から、蒼羽隊が届けられるのと一緒に名簿も届くのではないかと、推測できた。


 六鹿とナツメの名簿探しの目標は、蒼羽隊本部の地下に絞られた。同時に、名曳についての情報も探った。

 しかし、翠羽隊や蒼羽隊の立場をもってしても、名曳に近づくことは叶わないらしく、噂程度のものしか、得ることはできなかった。

 油隠における蒼羽隊と名曳の活躍に変化はなく、名曳は蒼羽隊から全幅の信頼を置かれ、蒼羽隊は煙羅国における英雄のように扱われているらしい。


 六鹿から聞いた、踊り木偶という道具の話は興味深かった。蒼羽隊や一部の翠羽隊は、まるで生き物のように動く、木製の容器を持ち歩いているらしい。六鹿が蒼羽隊の友人に聞いたところによると、それらは名法師の呪術で動いているとされているらしい。

 しかし名曳の術は、対象の数が多いとかからないらしい。もしかしたら、呪術で動かしているのではなく、本当にそういう生き物を使っているのかもしれない。


 四蛇が潮に連絡してから、どうやら潮は彼なりに動いてくれているようだった。

 しかし、又旅はもちろん、四蛇も潮の立場や職業のことをあまり理解しておらず、潮に情報を共有していることで、状況が好転するのかどうかは分からなかった。


 名曳を助けるため、そして五馬を見つけるため、又旅も何か行動したかったが、結局何もできないでいた。煙羅国へ行きたくても、その手段がない。行ったとしても、お尋ね者である以上、向こうで匿ってくれる人がいないとそれは難しい。

 又旅は、無力さを感じながらも、自分にできることに集中することにした。

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